観光庁が推進する「持続可能な観光地域づくり」とは?
2020年3月に世界保健機関(WHO)が新型コロナウィルス感染症の流行を「パンデミック」と宣言してから3年以上が経過し、WHOは2023年5月に緊急事態宣言の終了を発表しました。これにより、行動規制に関する制約はなくなり、インバウンドの回復と相まって全国的に観光地で賑わいが戻っています。その一方で、一部の観光地ではサービス業従事者の人手不足、宿泊料金高騰、オーバーツーリズムなどの問題が露呈しており、持続可能なビジネスモデルへの転換が急務です。
2023年3月31日に閣議決定された「観光立国推進基本計画」の大きな柱の一つに「持続可能な観光地域づくり」というキーワードがあります。今後地域活性化の一つの手法として、観光産業を盛り上げようとしている自治体、DMOや企業等は、「持続可能な観光地域づくり」の意味はもちろん、「観光立国推進基本計画」になぜこのキーワードが組み込まれたかを理解する必要があります。
「持続可能な観光地域づくり」とは?
北海道大学大学院観光学高等研究センターの木村宏教授によると、「観光地域づくり」とは、「地域の人たちが自らの手で、地域の自然、景観、伝統、産物といった地域資源を活かし、自治体、住民、地場産業などが連携、協働しながら地域の日常性と結びついた観光資源を創り出し、地域産業の振興、生活環境の整備、住民の生きがいづくりなど地域の総合的な魅力向上をはかるため地域づくりの一環として取り組む、地域づくり型の観光政策や観光地づくり」を意味します。
この地域づくり型の観光政策や観光地づくりを、将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく現在のニーズを満たしながら遂行できれば、「持続可能な観光地域づくり」を行なっていると言えるでしょう。
2023年 観光立国推進基本計画の柱の1つ
観光立国推進基本法の規定に基づき、観光立国の実現に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、 2023年3月31日に令和5年度からの新たな「観光立国推進基本計画」が閣議決定されました。この計画は、訪日外国人旅行消費額5兆円、国内旅行消費額20兆円の早期達成を目指すとともに、令和7年までに、持続可能な観光地域づくりに取り組む地域数100地域、訪日外国人旅行消費額単価20万円/人、訪日外国人旅行者一人当たり地方部宿泊数2泊等の目標を掲げており、これらの達成のために政府全体として講ずべき施策等について定めています。
目標として掲げられた持続可能な観光地域づくりに取り組む地域数は、令和4年の実績値で12地域(うち国際認証・表彰地域6地域)です。これを令和7年までに100地域(うち国際認証・表彰地域 50地域)に増やすことを目指します。
持続可能な観光地域づくりに取り組む地域のうち国際認証や表彰されている地域
2023年12月時点で、持続可能な観光地域づくりに取り組む地域のうち、国際認証取得、もしくは表彰されている地域は、以下の12地域です。
- ニセコ町(北海道)
- 弟子屈町(北海道)
- 釜石市(岩手県)
- 東松島市(宮城県)
- 那須塩原市(栃木県)
- 三浦半島観光連絡協議会(神奈川県・三浦半島)
- 岐阜県
- 京都市(京都府)
- キタ・マネジメント(愛媛県・大州市)
- 丸亀市(香川県)
- 阿蘇市(熊本県)
- あまみ大島観光物産連盟(鹿児島県・奄美大島)
日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)の活用から始めよう
観光庁は、先進的な取り組みを行なっている地域をロールモデルにしながら、国際基準に準拠して策定した「日本版持続可能な観光ガイドライン」(JSTS-D)の活用を促し、持続可能な観光に取り組む地域を増やしていきたいとの考えを示しています。
そのため、まずは地域の観光従事者や地域関係者が、JSTS-Dを認識し理解する必要があります。JSTS-Dとは、グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会(GSTC : Global Sustainable Tourism Council)が開発した国際基準である観光指標に日本の各地で多発する自然災害に対する危機管理や感染症対策、文化的建造物の維持管理、混雑やマナー違反といったオーバーツーリズムに関する課題への対応など日本の風土や現状に適した内容にカスタマイズした「日本版」の観光指標です。
GSTCや JSTS-Dについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧下さい。
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