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リサイクル率世界トップを誇るドイツの衣料品廃棄処分の現状

リサイクル率世界トップを誇るドイツの衣料品廃棄処分の現状

昨年12月5日、欧州連合(EU)は「エコデザイン規制」の改正案に合意することを発表した。新たな「エコデザイン規制」とは、アパレルメーカーや小売業者に対し、売れ残った在庫や返品された商品などの廃棄処分を禁止し、リサイクル、アップサイクル、リユース、寄付などに促す新規制のこと。2000年代から浸透したファストファッションによる大量の衣料品廃棄に歯止めをかけることを目的としており、来年から施行されるとのこと。

EUでは、年間に廃棄される衣類が1人につき平均で12キログラム、全体では1260万トンに上るという。このうちリユースやリサイクルに回るのはわずか22%にとどまり、それ以外は廃棄処分されてしまっている。アパレル産業が排出する大量の二酸化炭素は環境破壊へと繋がっており、何年も前から深刻な問題となっている。

ファッション大国フランスでは2022年1月の時点ですでに「衣類廃棄禁止法」を施行しており、EU内では一歩先に進んでいると言える。ドイツにおいても経済協力開発機構(OECD)の調査によれば、リサイクル率は驚異の65%と世界トップとなっている。ちなみに日本は19%とあってかなり低い割合だ。リサイクル率トップのドイツでは、実際にはどのようなことが行われているのだろうか。アパレルブランドで多く見られるのが、使用済みプラスチックのリサイクルや余剰生地の使用、古着のアップサイクルなどが目立っているが、売れ残った過剰在庫や顧客から返品された商品はどのように対処しているのかあまり表立って知られていないように感じる。

リサイクル率世界トップを誇るドイツの衣料品廃棄処分の現状
リサイクル可能なアディダスのランニングシューズ「FUTURECRAFT.LOOP」

ドイツに本社を構えるアディダスは、2016年に海洋保護団体「PARLEY FOR THE OCEANS」とともに、リサイクルした海洋廃棄プラスティックでできた新しいスニーカーやウェアを発表するなど、持続可能なものつくりに積極的に取り組んでいる。2019年春には、リサイクル可能なランニングシューズ「FUTURECRAFT.LOOP」を発表し、これまでにない画期的なイノベーションが話題となった。単一素材で接着剤を使わずにシューズを作り、履きつぶしたあとには裁断して溶かすことで、同じシューズの原料に100%再利用できる廃棄物ゼロのランニングシューズが誕生した。使用済みのシューズは、洗浄後に丸ごと機器に投入されて粉砕される。そこから溶解され、TPUペレットとして再形成され、新しいシューズ素材になる仕組みだ。

ベルリンの街中に点在する古着の回収ボックス

日常生活においてもドイツ人はリサイクルへの意識が非常に高いと感じる。まず、ベルリンには街の至るところに古着の回収ボックスが設置されている。最も有名なのは、回収した古着を低価格で販売するセカンドハンドショップをチェーン展開している「HUMANA」だ。筆者も何度か利用したことがあるが、靴やバッグを含む衣類をボックスに入れるだけでいい。簡単なうえに捨てるという罪悪感からも救われる。回収された古着は仕分けされ、洗濯され、値付けされ、ベルリン市内に点在する店頭に商品として並ぶ。また、売上げの一部は発展途上国へ寄付されるシステムだ。

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「HUMANA」の回収ボックス
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ドイツ赤十字社(DRK)も同様に回収ボックスを設置している。難民の受け入れを積極的に行っているドイツでは、恵まれない人々に無償、もしくは少額の寄付によって衣類を提供している。DRKは、各地域の教会やボランティア組織を連携を取っており、どこで何が必要とされているのか、どこで衣類を受け取れるのか、寄付金がどのように使われるのかなど、全ての情報を開示している。

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低品質なファストファッションがアフリカの埋立地に衣類のゴミ山を作る

ドイツ最大のリサイクル 事業者団体BVSEは、ドイツで余剰となった”高品質”の古着は東ヨーロッパ、アジア、アフリカ全域で大きな需要があると述べている。しかし、この寄付は現在新たな問題を引き起こしている。前述した通り、”高品質”の古着であれば長く着ることができ、需要度も高いが、近年はファストファッションなど低品質な古着が占める割合が増えている。ただ同然の値段でも売れ残った古着は最終的に埋立地へと流れ着き、ゴミとなってしまうのだ。

世界最大の廃棄物処理場50カ所のうち、19カ所がアフリカにあることを知っているだろうか。ケニアでは毎年約10万トンもの古着が輸入されるが、ゴミ処分場などの施設が不十分なアフリカの国々では大量に余る低品質の古着の処理に困り、同時に環境汚染問題に繋がっている。ガーナに輸入されている古着の約4割が埋立地で処分されているというから驚きだ。

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衣類を必要としている貧しい国の人々へ手を差し伸べているはずが、質が悪くて誰も着ないゴミ同然の古着を貧困地域に押し付けていることになってしまっている。事実、リサイクル不可能な繊維製品の廃棄コストの増大に悩まされており、そのコストは2015年以降倍増し続けているという。

大量生産されるファストファッションは、需要が高まる一方で様々な問題をもたらせている。バングラディシュのようにファストファッション産業に大きく依存している国々は、もし、ファストファッションが低迷した場合、悲惨な経済状況に陥ってしまう。衣料品製造業はバングラデシュの輸出収入の80%以上を占めており、安価な労働力と環境基準によって支えられている。また、衣類製造業は現地の人々の大事な収入源となっているのも事実だ。持続可能な地球環境を作り出すためには、世界規模で強固なリサイクルインフラを実行しなくてはならない。しかし、その一方でバングラディシュのような国を守る対策を考えなければ国ごと崩壊しかねない危険性を秘めている。

廃棄繊維から新しい服を作り出すドイツのアパレルブランド

廃棄される衣類を救い、新しい服やアクセサリーへと生まれ変わらせるブランドがドイツには存在する。

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EMEKA
EMEKAはナイジェリア出身のシドニー・ヌワカンマによって2019年にベルリンで設立。ヨーロッパからアフリカに送られる廃棄物とみなされた衣類をアップサイクルし、クラフトマンシップにこだわった服つくりをしている。アフリカの職人たちを雇用し、素材から縫製、染色までを現地で行い、黒人経営の企業としてヨーロッパとアフリカの架け橋を担っている。

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Bridge & Tunnel
ハンブルク拠点のBridge & Tunnelは、使用済みのテキスタイルであるポスト・コンシューマー廃棄物と生産工程で発生する染色や織りのサンプルなどの余剰資材のプレ・コンシューマー廃棄物からデニムやアクセサリー、ホームテキスタイルなどを作っている。また、難民を従業員として積極的に雇用し、適切な労働環境のもと技術を教えるなど社会活動も行っている。

Smatch
2022年にスタートアップ企業のSmatchは、過剰在庫向けソリューションとして新しいB2Bプラットフォームを立ち上げた。ブランドや小売業者は売り手として商品の詳細、どんな相手に売りたいか、対応地域、販売チャンネルなどを選ぶことができるシステムとなっている。オークション形式で販売価格を決めることもでき、可能な限り利益を確保しながら過剰在庫を減らすことができるメリットがある。買い手にとっては、有名ブランドの商品を正規の値段より安く購入することができるだけでなく、手数料は売り手が負担してくれるなどメリットが多い。Smatchは現在、立ち上げから2年も経たない間に億の売り上げを記録しているとのこと。

世界的スポーツブランドのアディダスから中小企業に至るまで、過剰在庫や廃棄処分に対して危機感を持ち、様々な形で対策をしていることが分かる。新たに導入される「エコデザイン規制」によって、アパレル産業に劇的な変化が訪れることに期待したい。

宮沢香奈

宮沢香奈

宮沢香奈(みやざわ かな)ライター/PR ブランドディレクター、プレスなどを経て、2012年からフリーランスライターとして本格的に執筆活動をスタート。2014年に東京からベルリンへと活動拠点を移し、ヨーロッパのローカルカルチャーを中心とした記事を多くの媒体にて執筆中。また、国内外のフェスや音楽レーベル、ファッションブランドのPRとしても活動中。