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ドイツのビオホテル事情

ドイツのビオホテル事情

ドイツ語で「ビオ(BIO)」とはオーガニックという意味を持ち、食品や化粧品、日用品をはじめとする生活に必要なものほとんどに「ビオ」が存在します。ビオの基準はさまざまですが、ドイツのオーガニック認証機関は特に厳しい基準を設けており、その基準をクリアし、認証マークを取得した食品や製品でないと正式には”ビオ”と言えません。

厳格な基準を設けていることによって、消費者の私たちが商品を購入する時に安心材料の一つになりますが、実は商品だけでなく、「BIO HOTEL(ビオ・ホテル)」と呼ばれるビオ100%のホテルも存在するのです。ドイツやオーストリアをはじめ、世界に90軒ほどあるといわれていますが、一体どんなホテルなのでしょうか?

オーガニックとエコロジカルを追求し、デザイン性も高い究極のホテル

「BIO HOTEL」とは、ビオとエコロジカルを徹底したホテルのことで、世界で唯一となるホテル専用のオーガニック基準を設けており、オーストリア拠点の「Verein BIO HOTELS(ホテル協会)」が認証機関となっています。食品などと同様に厳格な基準が定められていますが、オーストリアのホテル経営者や生産者が集まり、環境に配慮した取り組みを徹底するために2001年に発足されました。また、ドイツのオーガニック認証機関「Bioland」のサポートを受けて運営されています。

ビオなホテルと聞くと、オーガニック食材を使った料理、オーガニックのアメニティやタオル、寝具、グリーン電力の使用などといった取り組みはすぐに思い浮かびます。しかし、それだけでは「BIO HOTEL」にはなれません。以下のガイドラインを全てクリアしなければならないのです。

biohotels-logo
  • 認定された有機農法で生産されたものを使用し、可能な限りその地域で生産されたもののみを使用。
  • 生産から消費に至るまでの加工は、国が認定したオーガニック管理団体によって管理。
  • 地域の特産品や特定の飲み物などは、本社の承認を得なければならない。
  • 動物性食品に関する例外はすべて認可の対象となり、申請が必要。
  • 最短の配送ルートを重視する。
  • 電子レンジの使用禁止。
  • 魚、魚介類、狩猟肉が有機農法で生産されたものでない場合、「有機農法によるものではありません」という文章を添えてお客様に表示する。
  • ジビエ:地域原産(猟師から直接仕入れたもので、原産地証明、ジビエの添付文書があるもの)
  • 魚類:地域原産(天然物のみ、飼育なし)
  • 深海魚:認証原産地(ASC、MSC;アイスランド漁業法、アラスカ漁業法、またはそれに準ずるもの)
  • 水産物:原産地証明(MSC、ASC、または同等のもの)
  • COSMOS規格に基づくオーガニック・ナチュラル認証化粧品を使用する。
  • 公共エリアの掃除やケア用化粧品には、オーガニック化粧品のみを使用する。
  • トイレットペーパーなどの紙類はリサイクル紙を使用。
  • すべてのエリアにおいて、エコロジカルで生分解性のある清掃用品を使用する。
  • ベッドリネン、タオル、テーブルリネンにはオーガニックコットンやリネンなどを使用。
  • 天然ラテックスマットレス、または同様のエコロジカルな代替品を使用するか、新規購入の際に必須とする。
  • 装飾品、浴室用品、ゴミ箱、小型家具は、新規購入の場合、持続可能なデザイン(例:プラスチックフリー、リサイクル、ゆりかごからゆりかごまで)のものを選択する。
  • 新築や改築の場合、設備はエコロジカルな素材をベースにする。できれば天然木を使用すること。
  • 床材は石、タイル、木材、エコロジーカーペット(可能であればリサイクル材を使用)を使用する。
  • 塗料、しっくい、その他はエコロジー基準に従って選択する。
  • ホテルの暖房および給湯は、再生可能エネルギー(バイオマス)、熱源、またはそれに類するものを使用。
  • 2年ごとにCO2バランスシートを実施する義務がある。

人間の身体に入る飲食に関して最も注力していることが分かりますが、ここまで細かく徹底した基準を設けることによって、本当の意味での環境と人に優しい暮らしと言えるのかもしれません。また、「BIO HOTEL」の魅力はそれだけではありません。通常のホテル以上に、内装やインテリア、ロケーションにもこだわっています。

HOTEL Land Gut Höhne(ホテル・ラント・グート・ヘーネ)

ドイツのデュッセルドルフから程近い「HOTEL Land Gut Höhne(ホテル・ラント・グート・ヘーネ)」は、生い茂る蔦が見事な煉瓦のアーチに囲まれたお城のような美しいホテルです。館内もレンガやウッドを基調としたモダンな内装で、ダンスフロアを完備した広々したバー、ラウンジ、日本人シェフによる本格的な日本食を提供するレストラン、屋内外プール、サウナ付きスパ、フィットネスセンターなどを併設しています。

数千年前、この地にはネアンデルタール人が住んでいました。彼らは森や草原、水といった自然の恵みを大切にし、それらと調和したシンプルな暮らしをしていました。ネアンデルタール人の伝統的な暮らしからインスピレーションを得たのが同ホテルです。自然を愛する人、都会の喧騒から逃れて静かに過ごしたい人、自然の中でアクティビティなど、さまざまな目的で訪れる人が多く、サステナブル・ツーリズムやウェルネス・ツーリズムに関心のある企業が視察に訪れることも多いようです。

HOTEL Land Gut Höhne(ホテル・ラント・グート・ヘーネ)の庭

ベルリンにも多数存在するエコフレンドリーなホテル

「BIO HOTEL」はかなり厳格な基準を設けているため、環境大国ドイツであってもまだまだ数が少ないと言えます。しかし、ドイツ国内にはエコフレンドリーなホテルが多数存在し、首都ベルリンにおいても主流となっていると言えるでしょう。中でもベルリンのティーアガルテン地区に位置するホテル「Lulu Guldsmeden(ルル・グルスメデン)」は、1999年創業と長い歴史と実績を誇るエコフレンドリーなホテルです。

ホテル「Lulu Guldsmeden(ルル・グルスメデン)」

同ホテルは北欧のホテルグループが経営していますが、北欧とドイツのサステナブルを組み合わせた「BIO HOTEL」に近い取り組みを行っています。ウッドを貴重としたシックで落ち着いた雰囲気が心地よく、ヴィンテージ家具やリサイクル素材で作られた家具などがセンスよく配置されています。GOTS認定のオーガニックコットンで作られたタオルやベッドリネン、ドイツのProlana社が製造する天然ラテックス、ココナッツの繊維、ラクダや羊毛の絹、綿などを使ったマットレス、枕、布団を使用するなど徹底しています。

アメニティは、ホテル専用の製品を展開しているデンマークのオーガニックコスメブランド「iLoveEcoEssentials」で統一されています。フランスのオーガニック認証機関ECOCERTの認証を取得しており、パラベン、シリコン、ナノ粒子、フェノキシエタノール、動物由来成分(ミルク、蜂蜜など、動物が自然に生成したものを除く)、合成香料、合成色素を一切使用していません。レストランでは、デンマーク食品農業省が管轄する認証機関ゴールデンØの認証を得ており、一部を除いた99.5%の割合でオーガニック食材を使用しています。

ホテル「Lulu Guldsmeden(ルル・グルスメデン)」のバスルーム

他にも、ロサンゼルスに本社を置く旅行業界におけるサステナビリティーを提唱するグリーン・グローブ社の認証を取得しており、水の使用量の節約、省エネルギー、廃棄物の削減などを積極的に行っています。グリーン・グローブ社は、世界でも最高レベルと言われるグローバル・サステナブル・ツーリズム協議会GSTC(=Global Sustainable Tourism Council)の基準に基づいており、A)持続可能な経営、(B)社会経済的影響、(C)文化的影響、(D)環境的影響の4つの柱で構成されています。

最後に

普段からサステナブルを意識している人は、旅行に関しても普段の生活と同じように環境に配慮したプランを立てたいと考える人が多いと思います。そのようなサステナブル・ツーリズムを実施したい人にとって「BIO HOTEL」やさまざまな認証を取得しているエコフレンドリーなホテルは、ホームページを見れば各ホテルがどのような取り組みを行っているかすぐに分かり、滞在先の候補として選びやすいこともメリットです。国によって基準が多少異なっていたり、新しい発見ができるかもしれません。安心、安全で快適な旅を堪能するためにも事前に知っておくことが大切ではないでしょうか。

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宮沢香奈

宮沢香奈(みやざわ かな)ライター/PR ブランドディレクター、プレスなどを経て、2012年からフリーランスライターとして本格的に執筆活動をスタート。2014年に東京からベルリンへと活動拠点を移し、ヨーロッパのローカルカルチャーを中心とした記事を多くの媒体にて執筆中。また、国内外のフェスや音楽レーベル、ファッションブランドのPRとしても活動中。

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