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ドイツ・ベルリンのコミュニティ・ガーデンは地域社会にメリットをもたらす存在?

ドイツ・ベルリンのコミュニティ・ガーデン

「コミュニティ・ガーデン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?日本ではあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、ドイツ・ベルリンには街の中心地や郊外に多数存在します。「コミュニティ・ガーデン」とは、日本語で「共同農園」という意味を持ち、ひとつの農園を地域住民でシェアし、協力しあって野菜や植物を育てるガーデニングのことを指します。

ドイツ・ベルリンは自然が多く、平地にも恵まれていますが、人口の多い都市で自家菜園用の畑を所持することは非常に困難です。そのため、誰でも参加することができ、都会に住みながら自然と触れ合い、自らの手で育てた新鮮な野菜や果物を食すことができ、植物を育てる楽しみを味わえるように作られたのが、「コミュニティ・ガーデン」です。また、都会暮らしで懸念される孤立化を防ぐためでもあると言われています。

しかし、コミュニティ・ガーデンの目的はそれだけに限りません。オーガニック先進国、環境大国として知られるドイツ・ベルリンでは、以下の目的を達成するために運営されており、地域社会に重要な役割を果たしていると言えます。

コミュニティ・ガーデンが目指す6つの項目

1. 環境保護と持続可能性の促進
・都市緑化
:コミュニティ・ガーデンは、都市部に緑地を増やし、都市の生態系を改善します。
・持続可能な農業:無農薬・有機農法を実践することで、環境に優しい農業を推進します。

2. 食料生産と自給自足
・地元の食料供給
:新鮮で安全な野菜や果物を地元で生産し、地域住民に提供します。
・食の教育:食料生産の過程を学び、食に対する意識を高めます。

3. コミュニティの形成と強化
・社会的な交流
:地域住民が集まり、共同で作業をすることで、コミュニティの絆を深めます。
・多様性の尊重:異なるバックグラウンドを持つ人々が共に活動し、多様性を尊重する社会を育みます。

4. 教育と啓発活動
・環境教育
:子供や大人を対象に、環境問題や持続可能な生活について学ぶ機会を提供します。
・実践的なスキルの習得:農業技術や園芸スキルを学び、実際に体験することができます。

5. 健康と福祉の向上
・身体活動
:農作業を通じて、身体を動かす機会を提供し、健康増進に寄与します。
・精神的な癒し:自然と触れ合うことで、ストレスを軽減し、精神的な健康をサポートします。

6. 地域の活性化
・地元経済の支援
:地元で生産された食材を利用することで、地域経済を活性化します。
・観光資源:コミュニティガーデンが観光地としても機能し、地域に訪れる人々を増やします。

空港跡地を利用したコミュニティ・ガーデンのパイオニア

実際には、どんなコミュニティ・ガーデンが存在し、どのような活動を行っているのでしょうか?ドイツ・ベルリンを代表する3つのコミュニティ・ガーデンを紹介したいと思います。

Allmende-Kontor(アルメンデ・コントア)

2008年に閉鎖したテンペルホーフ空港の跡地を利用して2011年4月に作られた「Allmende-Kontor(アルメンデ・コントア)」は、コミュニティ・ガーデンのパイオニア的存在として知られています。5000平方メートルの広大な敷地には、300の畑があり、500人が共同で作業を行なっています。異文化コミュニティ・ガーデンとも呼ばれている同園は、様々な国の人々がみんな平等に協力しあい、言語、作業方法、芸術、生活経験などの多様性を共有することを目的としており、移民が多く、多種多様なベルリンのニーズに合わせたスタイルになっています。

ガーデニング作業以外にも水タンクの補給、コンポストの生産、施設の管理などといった農園を維持するための作業をグループに分かれて分担します。また、植物染色、堆肥作り、ネズミ駆除などのワークショップも開催されています。新規の募集やワークショップなどのイベント情報はオフィシャルサイトで知ることができますが、非常に人気が高く、希望者が多いことからひとつのレイズドベッド(上け床の花壇)を複数名でシェアしてガーデニングを行なっているとのことです。

Allmende-Kontor(アルメンデ・コントア)のガーデン

レイズドベッドの料金は30ユーロ、45ユーロ、60ユーロと分かれており、年会費は12ユーロです。3月中旬から10月までの毎週木曜日に農園内の広場でミーティングが行われており、アイデアを出し合ったり、意見をまとめて決定を下す場所であり、飲食や音楽を楽しむ場にもなっています。

有形文化財指定の墓地の一角にある美しいコミュニティ・ガーデン

ノイケルン区に位置する「Prinzessinnengarten Kollektiv(プリンツェッシンガルテン・コレクティフ・ベルリン)」は、新聖ヤコビ墓地(Neuer St. Jacobi-Friedhof)の中に位置し、子供から大人まで誰でも参加可能な農園です。ドイツの墓地は陰鬱なイメージが全くなく、美しい自然に囲まれた癒しの場となっており、新聖ヤコビ墓地は、庭園記念物として有形文化財に指定されている100年以上の歴史がある墓地です。

Prinzessinnengarten Kollektiv(プリンツェッシンガルテン・コレクティフ・ベルリン)
Prinzessinnengarten Kollektiv(プリンツェッシンガルテン・コレクティフ・ベルリン)のガーデン

7,500平米もの広大な敷地を誇る同園は、歴史的な自然環境に溶け込んだ美しい農園であり、緑地を保全することにも貢献しています。特に、生態系の自己持続性に焦点を当てた共同学習に力を入れており、種の収穫、野菜の加工や保存、都市養蜂、ワームコンポストの設置、有機栽培方法の開発などのプログラムが実施されています。共同で作業し、知識と経験を共有することで古くからの文化的技術を再活性化し、生物多様性、都市生態系、気候適応、リサイクル、持続可能な都市生活について学ぶことを目的としています。

Prinzessinnengarten Kollektiv(プリンツェッシンガルテン・コレクティフ・ベルリン)ワークショップ

蜜蜂の飼育やジャガイモ栽培についてのワークショップも開催されており、子供たちに都会に暮らしながらも農業ができることや楽しみ方を教えています。また、ガーデニングに参加しなくても収穫した農産物を購入したり、隣接されているカフェを利用することも可能です。

存続の危機に晒されながらも運営を続けるコミュニティ・ガーデン

ウェディング区に位置する「Himmelbeet(ヒンメルべート)」は、「Prinzessinnengarten Kollektiv」同様に墓地の一角に位置するコミュニティ・ガーデンとして、2021年12月に開園しました。実は、同園は2013年から同じウェディン区の別の場所で、9年間に渡り運営を行なってきました。敷地内にあるカフェは、廃材や粘土、泥といった再生可能な資材のみで作られ、農園で採れた野菜やハーブを使ったメニューやオーガニックビールを提供しており、当時近くに住んでいた筆者にとってもお気に入りの場所でした。しかし、サッカー場の建設が決まり、長年に渡る交渉も虚しく、立ち退きを余儀なくされてしまいました。

Himmelbeet(ヒンメルべート)
Himmelbeet(ヒンメルべート)看板

「Prinzessinnengarten Kollektiv」も同様に以前はクロイツベルク区にあり、クラフトビールを提供するビアガーデンやレストランが併設されており、地元住民だけでなく、観光客からも人気のスポットになっていました。10年間に及ぶリース契約の終了と都市開発により、契約更新が不可となり、現在の場所へと移転しました。

ベルリンをはじめとするドイツの都市では、棺埋葬から骨壷埋葬へと埋葬文化の変化により、多くの墓地が必要とされなくなっています。そのため、ベルリンの墓地を管理する「福音主義墓地協会ベルリン・シュタットミッテ(EVFBS)」は、持続可能な開発プログラムを行なっている「Berliner Programm für Nachhaltige Entwicklung(BENE)」と「欧州地域開発基金(European Regional Development Fund)」、ベルリン州から資金援助を受け、不要となった墓地を持続可能な形で再利用し、都市部の緑地を保全する目的として、コミュニティ・ガーデンに場所を提供しています。

最後に

コミュニティ・ガーデンのほとんどは、地域団体や非営利団体によって管理されており、会費や寄付、農産物やイベントの売上などで運営費を賄っています。地域住民からの需要が高い反面、都市開発を進めたい投資家や自治体によって契約更新が不可能になったり、移転を余儀なくされて来ました。しかし、墓地の再利用プロジェクトによって、今後ますますコミュニティ・ガーデンの数は増えていくことでしょう。また、地域住民だけでなく、ベルリンを訪れた人が農園で採れた農産物をカフェやレストランで味わうことができ、様々なアクティビティに参加できれば、観光スポットとしての需要も増えます。遠くに行かなくても自然と触れ合うことができ、地域コミュニティと繋がりを持てるコミュニティガーデンは、身近な魅力を見直す新しい「マイクロ・ツーリズム」のひとつと言えるでしょう。

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宮沢香奈

宮沢香奈(みやざわ かな)ライター/PR ブランドディレクター、プレスなどを経て、2012年からフリーランスライターとして本格的に執筆活動をスタート。2014年に東京からベルリンへと活動拠点を移し、ヨーロッパのローカルカルチャーを中心とした記事を多くの媒体にて執筆中。また、国内外のフェスや音楽レーベル、ファッションブランドのPRとしても活動中。

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