日本全国のサステナブル・エシカルなホテル10選(2024年)
ホテル選びの基準といえば、立地などのアクセス、価格、客室のタイプ、食事やサービスの質など様々ですが、「自分の泊まるホテルが社会や地球環境に与える影響」を基準の一つとして考える機会は多くなかったのではないでしょうか。
世の中全体でSDGs推進が浸透する昨今、世界では「環境や社会に配慮しているホテルなのかどうか」ということもホテル選びの重要な基準です。日本のホテル業界でも「サステナブル」「エシカル」という言葉をよく耳にするようになりました。
一方で、言葉としては聞いたことはあるものの、実際に「サステナブルやエシカルなホテルがどんな取り組みを行っているのか」「どのホテルが該当するのか」についてはあまり知られていません。
本記事では、サステナブル・エシカルなホテルの定義や魅力を解説し、宿泊することでサステナブル・エシカルを体験できる日本全国のホテル10選を紹介します。
サステナブル・エシカルなホテルとは
「サステナブル」や「エシカル」とは、自然環境への負荷を最小限にし、地球上に存在するすべての生命が快適に暮らしていけることを目指す考え方です。
サステナブル・エシカルホテルとは、環境負荷の軽減やエネルギーの節制、地域の活性化や社会貢献につながる事業活動を行う持続可能な宿泊施設を指します。
そして、ホテル内でのサービスを通して社会問題を解決できるよう努めており、主に以下のような取り組みを行っています。
- プラスチック製使い捨てアメニティの提供や使用を廃止し、リサイクル素材や紙製のものを使用する
- オーガニックや地産地消食材を食事メニューに使用する
- 太陽光発電で自家発電・自家消費する
- 雨水をろ過・減菌して水を再利用する
- 発光効率の良いLED照明を設置し省エネを実践する
- コンポスト等を利用して生ゴミや廃油を飼料に変え、資源として再利用する
- 緑化活動や貧困地域への寄付活動を行う
上記のような取り組みを行っているホテルは、環境に配慮していることを証明する「グリーンキー」*を取得している場合が多く、ホテル選びの参考になります。
*グリーンキー:デンマークに本部を置く国際環境教育基金(FEE)が定めた厳しい基準により、ホテルからキャンプ場までのあらゆる規模の宿泊施設の環境方針と持続可能な運営を評価、確認する国際エコラベル
サステナブル・エシカルホテルに滞在することで、地球や社会への貢献や、地域の活性化に繋がります。
ここからは「人と地球に優しい」宿泊体験ができる、日本全国のサステナブル・エシカルなホテル10選をご紹介します。
北海道・札幌市「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」
2021年10月1日、北海道・札幌の中心部に「北海道を体感する」をコンセプトとし、「宿泊客とともに自然環境や地域社会に対して出来ることを考えるホテル」としてオープンしました。
日本初の高層ハイブリッド木造ホテルで、客室やロビーのインテリアに北海道産木材を使用しています。11階建てで客室は全部で134室あり、ウッドデッキの床で仕上げられた屋上では、焚き火を囲んで朝食やジンギスカンを楽しんだり、様々なイベントに参加できます。木質感あふれる客室にはテレビが設置されていません。山のキャビンのような空間で、木のぬくもりを感じながらデジタルデトックスできる安らぎの時間を提供しています。
参照:【公式】ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園 – 大通駅すぐそば – 北海道・札幌のホテル
山形県・白鷹町 白鷹源内邸「きものリトリートホテル」
山形県最南端の自然豊かな置賜(おきたま)地域にある白鷹源内邸。「きもの・リトリートホテル」として伝統文化の魅力を発信しています。リトリートホテルとは、日常から離れて自分自身に意識を向ける時間を提供するホテルです。
源内邸は明治中期から大正初期頃に建てられた邸宅で、地域の文化・経済の発展に貢献してきた奥山家の邸宅を改装し、客室全8室の白鷹源内邸としてオープンしました。広大な庭から見える朝日連峰の雄大な景色を堪能し、歴史と文化を尊重した懐かしさと温かみのある館内で、日頃の喧騒を忘れて静かにゆったりと過ごすことができます。江戸時代から地域に受け継がれてきた伝統食を取り入れた料理も提供しています。、また、着物の着付け体験も用意されており、滞在中は着物で過ごすことができます。
東京都・渋谷「TRUNKHOTEL(トランクホテル)」
渋谷駅から徒歩約6分のTRUNK HOTELはソーシャライジング(自分らしく、無理せず等身大で、社会的な目的を持って生活する)をテーマとし、「環境」「ローカル優先主義」「多様性」などに注力しています。
館内のインテリアやベッドには間伐材や古材を使用し、シャンプーやボディウォッシュなどは、国産素材かつエコサート認証*の100%オーガニック。ハンガーやトイレのサニタリーボックスには、鉄くずをリサイクルした材料を使用し、客室用スリッパは、生産過程で廃棄されるゴムの端切部分を利用して作られています。客室にあるミニバーには渋谷生まれのドリンクやスナックも揃っています。
*エコサート認証:フランスを本拠地とする世界最大の国際有機認証機関。ヨーロッパで規定されているオーガニック基準を満たしているかを厳しく検査して、認定を行なう第三者機関
参照:TRUNK(Hotel)
東京都・銀座「帝国ホテル」
「日本の迎賓館」として開業し、社会の要請に応え、貢献することを信念とする帝国ホテルでは、SDGsの達成に向けて様々な取り組みを行っています。ホテルロビーのシャンデリアとモニュメント時計は100%再生可能エネルギーを使用しています。客室アメニティを竹製、木製、バイオマス素材へ切り替えてプラスチック使用量を削減。また、食材仕入れ管理の徹底、廃棄物を減らす食品の開発と生ごみのリサイクルで食品ロスを削減するなど、多岐にわたる取り組みでサステナブルなホテルを目指しています。
2023年3月にはSDGs を実践する宿泊施設を認定する「Sakura Quality An ESG Practice(サクラクオリティグリーン)」認証制度*において、5 段階評価のうち最高評価である「5御衣黄(ぎょいこう)ザクラ」を取得しています。
*サクラクオリティグリーン認証:一般社団法人 観光品質認証協会が運営する、米国のグローバル・サステナブル・ツーリズム協議会が制定する国際規格をもとにした、SDGs を実践する宿泊施設の認証制度
参照:帝国ホテル
東京都・赤坂、青山「ホテルニューオータニ」
1964年東京オリンピックのために誕生した東洋一のホテル、「ホテルニューオータニ」。歴史的建造物でもある当ホテルでは、館内に1万坪の日本庭園や屋上緑化を備えるなど、創業時から自然保全の取り組みを行い、地球環境へ配慮しながら宿泊客に快適な滞在を提供しています。
熱の排出が少ないオール電化厨房システムを採用し、エアコンの使用時間等を効率的に管理することで総エネルギー使用量及びCO2排出量を削減。排熱や夜間電力を利用した空気熱源ヒートポンプ給湯設備も導入しています。
また、バイオ処理で厨房の排水を浄化し、「中水」として庭園の散水やトイレの洗浄水などに再利用しています。厨房から出る1日5,000kgの生ごみは100%リサイクルされ、ホテル内のプラントで堆肥を作り、提携農家の協力を得て、安全・安心な農作物の生育に役立てています。
参照:ホテルニューオータニ
神奈川県・川崎市「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」
羽田空港の対岸・多摩川河川敷に位置し、川崎市の工場夜景や、多摩川の絶景ビューを楽しめる「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」は、世界初の水素ホテルです。脱炭素社会を目指して、純水素型発電システムを導入し、水素発電を行っています。
地球環境保護への取り組みとして、「グリーンコイン」制度を導入しています。歯ブラシ、カミソリ、へアブラシなどのアメニティを使用しなかった場合、「グリーンコイン」をフロントに渡すと、環境保全活動の基金になります。年間で集計されたコイン枚数分の基金を「子供の森計画(アジア太平洋地域の子供たちが、苗木を育てる活動を通じて地球の緑化を進めるプログラム)」「森づくり活動(山梨県丹波山村に『東急ホテルズ・グリーンコインの森』を設置し、地元行政と協働で水源林を植林し育成するプログラム)」へ寄付します。
「ニッコーグループ」
ニッコーグループはサステナブルな取り組みに注力しており、中でもニッコースタイル名古屋とホテル日航熊本は高く評価されています。
ニッコースタイル名古屋は、ホテル滞在に新しい体験を求める、健康や環境に関心が高い客層をターゲットとしたライフスタイルホテルです。2020年の開業当初から、お米が配合された歯ブラシやヘアブラシなど植物由来のエコ素材を用いた客室アメニティを採用しています。特定プラスチック対象アメニティ製品5品目(ヘアブラシ・くし・カミソリ・シャワーキャップ・歯ブラシ)消費量については、前年度比28%削減(2022年度)を達成しています。
滞在中の客室清掃は水の使用量を削減した「エコ清掃」を行っており、客室内・バスルーム清掃、シーツの交換は行っていません。(希望者には対応可)
食品ロス削減の取り組みとして、レストランで食べきれなかった食事を持ち帰りできる専用フードボックスが用意されています。(環境に配慮した認証紙製の容器、一個50円、消費税込み)
ニッコースタイル名古屋は、世界最大の旅行プラットフォーム「トリップアドバイザー」の「トラベラーズチョイス ベスト・オブ・ザ・ベスト ホテル」において、2022年、2023年と2年連続で日本国内の「ベストホテル部門」に選出されました。
「ベスト・オブ・ザ・ベスト」の授与は ホスピタリティにおける最高レベルを示しています。2023年7月にはSDGs を実践する宿泊施設を認定する「Sakura Quality An ESG Practice(サクラクオリティグリーン)」認証制度において、⾃然環境や社会への積極的な関与が認められる「Regenerative(リジェネラティブ:顧客が増える程、地域環境をよりよくする施設)」に位置付けられる「4御衣黄(ぎょいこう)ザクラ」を取得しています。東海・北陸地方のホテルとして初めて認証されました。
出典:ホテル日航熊本
ホテル日航熊本は、阿蘇の山々が一望でき、熊本城へ徒歩10分という熊本観光に最適な立地にあります。「地域社会・地球・従業員へのおもいやり」を目標にし、サステナブルな社会の実現に貢献しています。
地産地消の推進として生産者との繋がりを深める活動を行っています。近隣の農産地域と連携して生産物を贅沢に使用した料理の提供や物販などのイベントを開催するなど、宿泊客と生産者・農産物などの架け橋となる活動をしています。
また、小学生を対象に普段食べている食材が生育し、消費される過程を体験する食育イベントを開催しています。
地域貢献として、母子生活支援施設へのクリスマスケーキ寄贈を毎年継続。また、2016年の熊本地震発生時には、避難所へ食事の提供、炊き出しなどのボランティア活動を行いました。被災地支援のため館内で義援金の募金活動を実施しています。
京都府・京都市「GOOD NATURE HOTEL KYOTO」
京都観光に利便性の高い立地にある「GOOD NATURE HOTEL KYOTO」は、複合商業施設の4〜9階にあります。「体・心・地域・社会・地球にとって健康的で、幸せであること」をモットーにしています。
2022年4月からプラスチックゴミ削減に向けて、アメニティを有料販売に切り替えました。
フードロス問題対策として、食品廃棄物を堆肥化して米の栽培に利用するなど循環型農業の確立に取り組んでいます。客室内に用意されているチョコレートはコスタリカの農園からフェアトレードで輸入しており、製造過程で廃棄物となるカカオの外皮を捨てずに、アップサイクルしてカカオを使い切るお茶を生み出しました。チョコレートもカカオティーも、社会のための活動による循環から生まれています。
2020年8月に、環境や健康に配慮したサービスの提供が認定され、「WELL Building Standard(WELL認証)をゴールドランクで取得し、環境に配慮したグリーンビルディングを評価する「Leadership in Energy & Environmental Design(LEED認証)」をシルバーランクで取得しています。ホテル版評価基準によるWELL認証及びLEED認証の同時取得は、GOOD NATURE HOTELは世界で初めてWELL認証及びLEED認証を同時に取得しました。
沖縄県・名護市「Treeful Treehouse(ツリーフルツリーハウス)」
沖縄本島の北東部に位置する「やんばるの森」にある、本格的なツリーハウスホテル。360度ジャングルに囲まれたスパイラルツリーハウスと、サステイナブルを意識したデザインで高級ホテルのような内装を完備したエアロハウスに宿泊できます。
ツリーハウスは生きている木で作られており、排出する二酸化炭素よりも、吸収する二酸化炭素の方が多い「カーボンネガティブ」を実践しています。化石燃料を使用せず、沖縄県内の太陽光、風力、バイオマス発電を使った再生可能エネルギーの電気を使用し、二酸化炭素排出量を削減しています。また、安価な夜間電力でお湯を沸かしてタンクに貯水し、日中に使用するシステムを導入し、電力を有効に活用しています。
飲用水は、ホテルの目の前にある沖縄一美しい「源河川」の河原に作った井戸から引いており、紫外線による殺菌を行っています。客室にはコンポストトイレを設置しており、人間の廃棄物は植物を育てる土として利用しています。
水陸両用8輪車で絶景スポット巡り、トレッキングなどのアクティビティも用意されており、沖縄の自然を五感で楽しめます。
沖縄県・西表島「星野リゾート 西表島ホテル」
西表島は、2021年7月に国際的に希少な固有種に代表される「生物多様性保全上重要な地域」であると認められ、世界自然遺産に登録されました。星野リゾート 西表島ホテルは、世界遺産の島・西表島の西表石垣国立公園に位置する島内最大規模のホテルです。
レストランのビュッフェでは、カマイ(イノシシ)、ガザミ(ワタリガニ)、ピパーチ(ヒハツモドキ)、島とうがらし(キダチトウガラシ)など、西表島で用いられている食材、スパイスやハーブを使った洋風・沖縄風料理などが提供されています。
ガイドと一緒にイリオモテヤマネコの痕跡をたどりながら、西表島の生態系を学べる「イリオモテヤマネコ痕跡ツアー」、マングローブ群落を目指して歩きながら自然の成り立ちを知ることができる「イリオモテガイドウォーク マングローブコース」など多彩なアクティビティが用意されています。
また、プラスチックごみ削減の一環として、「ペットボトルフリー」と「1WAYプラスチックフリー」を実施し、ゼロ・エミッション(廃棄物ゼロ)を目指しています。これに伴い、客室でのペットボトルウォーターの提供を中止し、ショップや自販機でのペットボトル飲料の販売も停止しました。館内には無料で利用できるウォーターサーバーを設置し、ゲストにはマイボトルの持参を推奨しています。ボトルを持参していないゲストにはレンタルサービスを提供し、歯ブラシやクシなどの使い捨てアメニティの提供も中止しました。さらに、ショップの商品も使い捨てではないものに切り替えています。
それから、絶滅危惧種のイリオモテヤマネコを保護するための「ロードキル防止」の取り組みも行っています。軽井沢で人とクマの共存を目指して活動する「ピッキオ」が、西表島でもイリオモテヤマネコの保護活動を開始しました。ゲストには、イリオモテヤマネコや西表島の自然、生物多様性について学ぶ機会を提供し、正しい知識を持つことでロードキル防止に貢献できるようにしています。
参照:星野リゾート 西表島ホテル【公式】 | Hoshino Resorts Iriomote Hotel
最後に
ホテル選びは旅行の成功を左右する、と言われるほど重要なポイントです。
「SDGsは知っているけれど、ホテル選びに取り入れるという発想はなかった」という方も多いでしょう。今回、サステナブル・エシカルなホテル10選とその取り組みを紹介しました。ホテルの規模や地域性によってそれぞれのこだわりがあり、ホテル独自の工夫とアイディア満載の取り組みが行われていることがわかりました。今後、ホテル選びの際の決め手になるかもしれません。次の旅行では、環境や自然との共存を楽しみながら体験できるサステナブル・エシカルなホテルで過ごしてみませんか?