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世界から貧困をなくすために|企業・事例

貧困をなくすために、世界の企業が取り組んだ具体的な事例

SDGsの目標1には「貧困をなくそう」という目標が掲げられています。この「貧困」には「絶対的貧困」と「相対的貧困」という2つの定義がありますが、南アジアやアフリカ南部を中心にはびこる問題は、極度に貧しい暮らしを強いられるという意味での「絶対的貧困」です。

一方の相対的貧困は、その国や地域の水準の中で比較して、大多数よりも貧しい状態のことを指し、日本でも女性や高齢者の貧困が問題となっています。この記事では、そうした貧困の問題に対しての取り組みを行っている、世界の企業の事例についてご紹介します。

世界にはびこる絶対的貧困

世界銀行(THE WORLD BANK)の発表によれば、世界中の貧困者の数は1990年から2015年までの15年間で、世界人口の36.2%から10.1%にまで減少しているといわれています。しかしそれでも、今なお全世界で8億人以上の人々が絶対的貧困と定義づけられる、1日1.9米ドル(約210円:2021.6.28時点)以下での生活を余儀なくされています。

その多くは子どもたちで、十分な食料や安全な飲み水、教育や医療といった人として与えられるべき物を十分に受けることができません。これらは世界的な紛争や戦争、気候変動や災害などを要因として引き起こされていますが、この絶対的貧困を2030年までに根絶させようというのがSDGs目標1に掲げられた「貧困をなくそう」です。

貧困問題に取り組む具体的事例

この貧困問題に立ち向かうために、各国ではさまざまな取り組みがなされています。ここでは、貧困問題の解決に対して欠かすことのできないキーワードとともに、SDGsへの取り組みも盛んな欧州の企業・団体の取り組みについてご紹介します。

マイクロファイナンスで農業従事者の生活を支える

Nestle(ネスレ)
ネスレ日本公式サイト

スイスに本社を構える世界一の食品会社Nestle(ネスレ)では、主力商品の1つであるコーヒー豆の栽培農家を守るために、数多くの取り組みを行っています。

コーヒー豆農家は世界市場の原材料価格に大きな影響を受け、価格変動によって大打撃を受けることも多く、簡単に廃業に追い込まれる可能性のある事業です。そうした農家へ世帯収入向上プロジェクト(Household Income Accelerator Project)を立ち上げることによって、効率改善やコスト削減、そして作物の品質向上などの支援を行っています。

こうすることで、価格変動の影響を受けにくい事業体質を手助けするなど、コーヒー豆農家の事業そのものの変革を促すのです。また、マイクロファイナンス(小規模金融)の制度を提供することにより、豊作・不作に振り回されない事業計画の立案を手助けし、コーヒー豆農家の経営を安定させる仕組みづくりから関わることにより、不安定な経営から引き起こされる貧困問題に取り組んでいます。

P+SITIVE PLANET JAPAN
引用:P+SITIVE PLANET JAPAN【マイクロファイナンスとは】

*マイクロファイナンス(小規模金融):貧しい人々に小口の融資や貯蓄などのサービスを提供することにより、自ら貧困から脱却し自立を促すことを目的とした金融サービス。

フードロスを地域の慈善団体へ寄付

TESCO(テスコ)
引用:TESCO/FareShare

イギリス最大のスーパーマーケットチェーンTESCO(テスコ)では、フードロスを解決するために、まだ食べられるはずの食品廃棄を禁止。すべての余剰食品を地域の慈善団体へ寄付するプログラム「Community Food Connection:コミュニティ・フード・コネクション」を行っています。

このプログラムの特徴は、単に余った食品を慈善団体へ配ったとしても、そこで余らせてしまえば元も子もありません。そこでTESCOは、イギリスで食糧支援を行っている団体「FareShare」と、アイルランドの社会的企業「FoodCloud」と手を組み、「FareShare FoodCloud」というアプリを開発。

このアプリでは、TESCO各店が余った食品リストをアプリに入力すると、慈善団体の近隣にある支店のリストが届き、それをみて慈善団体は必要な分だけ必要な人達に提供するという仕組みです。スーパーマーケットと慈善団体がアプリによってつながり、余った食品を通して地域の人々へ貢献するというこのプログラムは、日々の食料確保に悩む貧困状態の人々とのコミュニティ形成にも役立つプログラムとして、SDGs1に取り組むモデルケースとしても注目を集めています。

期限切れの食品を廉価販売で廃棄問題解決へ

We food
引用:Wefood公式Facebook

SDGs達成度では毎年上位に入り、国を上げてのSDGsへの取り組みが盛んなデンマークのWe food。DanChuchAidという慈善団体とFødevareBankenという非営利の支援団体が資金を募り、2016年にスタートしたスーパーマーケットです。

世界の3分の1の食品がまだ食べられる状態であるにも関わらず廃棄されている一方で、8000万人以上が飢餓に苦しんでいるという状態へ一石を投じるために作られた同店。提携を結んだ一般のスーパーから「賞味期限切れ」や「包装に傷がある」といった商品を無償で譲り受け、それを定価の30~50%引きで販売しています。

期限切れとはいっても、デンマーク食品法において安全な基準を満たしているもののみが販売され、フードロスの軽減に大きな役割を果たし、開店時にはデンマークの食品環境大臣が「食品廃棄問題を解決する大きな一歩」と称賛の言葉をかけました。さらに、同店のスタッフはすべてボランティアでまかなわれ、利益のすべては発展途上国でのさまざま活動にあてられるなど、フードロスの削減から貧困問題の解決まで、興味深いモデルケースとして各国から注目を集めています。

フェアトレードで途上国を守る

フェアトレード・ファンデーション
引用:フェアトレード・ファンデーション

SDGsを語る上で必ず耳にする言葉の中に「フェアトレード」があります。先進国と途上国間の貿易においては商品を買う側、つまり先進国側が圧倒的に有利な構造がありました。途上国で生産された製品を安価に先進国が手にすることにより、途上国の人々は不安定で低い賃金と劣悪な労働環境で働くことを余儀なくされる図式があったのです。

こうした貿易に関わる不平等を是正し、労働や製品に見合った正当な価格で継続的な取引を行うことを目的に作られた仕組み。それをフェアトレード(公正・公平な貿易)と呼び、これは国や企業の枠を超えて貧困をなくしたいという、一方的な支援ではない対等なパートナーシップによるSDGs1解決にとっても欠かせない考え方として世界に広まっています。

そんなフェアトレードがあらゆる場所で浸透している国、イギリスでフェアトレードの普及活動に取り組んでいる組織が「フェアトレード・ファンデーション」です。フェアトレードには国際的な基準も設けられており、国際フェアトレード認証ラベルが付けられた認証製品を購入することは、途上国の生産者をサポートすることにつながります。

フェアトレード・ファンデーションは、まだイギリス国内にフェアトレードというコンセプトを認知している人が少なかった1992年に、複数のNGO団体によって作られ、その普及活動に尽力。現在のイギリスでは80%以上の人がフェアトレードを知っていて、国際フェアトレード認証製品を質や安全面で信頼しているなど、一般の認知度を獲得するのに一役買ってきました。

まとめ

目標1「貧困をなくそう」だけでなく、国全体としてSDGsへの意識が高い欧州各国の取り組みについて、重要なキーワードとともに解説してまいりました。特に日本の場合、これらの取り組みに関しては1企業としてだけではなく、行政の協力がなければなし得ないような取り組みもあるかもしれません。しかし、そうした課題を官民一体となって少しずつ取り組んでいくことは、世界の貧困問題を解決するたために大きな一歩となります。まずは自社にできる小さな取り組みからでも構いませんので、「できること」を探して動き出してみることが、地球の未来を創り出していくことにつながるのです。

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