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BOPは大きなビジネスチャンス | 企業事例

BOPは大きなビジネスチャンス。企業の成功事例をご紹介

現在世界で起こっている貧困や飢餓、所得格差といった社会問題を解決する方法として、BOPビジネスが注目されています。これは、本質的な問題解決に向けて、ボランティアや寄付といった形ではなく、ビジネスとして介入する方法です。本記事では、低所得者層を対象にしたBOPビジネスを成功させ、貧困問題の解決に向けた動きに一役買っている国内外の企業事例をご紹介します。

BOPとは?

BOPビジネス
引用:JETRO(BOPビジネスとは

BOPとは、“Base of the Economic Pyramid”(経済ピラミッドの下層部)の頭文字をとったもので、「購買力平価(PPP)ベースで年間所得が3,000ドル未満」の低所得者層と定義されています。BOPとされる低所得者層は1人当たりの購買力は低いものの、世界中で40億人にも上る大きな市場です。次の時代の中間層になる「ネクスト・ボリューム・ゾーン」といわれています。

また、貧困は決して開発途上国だけの課題ではありません。先進国では貧富の差が問題になっているように、日本でも「相対的貧困」の解消が課題となっています。

相対的貧困とされるのは、世帯所得が全世帯の中央値の半分未満の人です。厚生労働省の調査では日本の相対的貧困率は15.4%、子どもの貧困率は13.5%でした(2018年)。一人親家庭に限ってみると、相対的貧困率は43.6%(2015年)と跳ね上がります。

これまで、国内外で多くのNPOやNGO団体が貧困問題に取り組み、多額の寄付や公的資金が投じられてきました。しかし、寄付やボランティアでは活動の継続が難しい、人員の確保がままならないなどの問題もあります。 BOPビジネスは低所得者層の抱える問題を解決しつつ、現地に寄り添った形で展開することで、貧困問題の解決にも一役買うことのできるビジネスとして注目されています。

BOPビジネスに成功している企業事例

どのような企業がBOP層に働きかけ、課題解決に取り組んでいるのでしょうか?そして開発途上国などの賃金が低く購買力が低い地域で、どうすればビジネスの成果をあげることができるのでしょうか?日本と海外の企業事例をそれぞれご紹介します。

株式会社ヤクルト本社

yakult
引用:株式会社ヤクルト本社

乳酸菌飲料のパイオニア的存在であるヤクルトは、1964年の台湾進出を足がかりにアジアやヨーロッパ、オーストラリア、中南米へと世界中に販路を拡大。現在では日本を含めて40の国と地域で販売しています。

ヤクルトは、購入者の多くを占める主婦に親しまれやすい女性を「ヤクルトレディ」として起用することで売り上げを伸ばし、雇用も創出してきました。国内では1,100カ所の託児所を設け、女性が働きやすい環境を整備している企業としても有名です。

ヤクルトの営業利益の半分以上は海外での収益です。中でも、アジアやオセアニアなど比較的低所得者層の多いBOP市場で支持されています。広告費をかけず、日本と同じように現地の女性をヤクルトレディとして採用。現在、約4万7,500人のヤクルトレディが海外で活躍しています。広告やブランディングに頼らず商品を販売するこの手法は地道ですが、商品の良さや効能を伝えやすくリピート購入につながっています。

さらに現地の生活文化や食習慣に応じた情報発信や、予防医学に関するシンポジウムの開催などを通じて地域の人々の健康に貢献しています。徹底した現地主義で業績を伸ばしています。

サラヤ株式会社

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引用:サラヤ株式会社

サラヤ株式会社は「ヤシノミ洗剤」をはじめ、さまざまな日用品・衛生製品を扱う大阪の企業です。1952年に創業し、日本で初めて薬用手洗い石けん液を開発しました。 ”石けんを使った正しい手洗い” を普及させ、衛生環境を改善するという創業者の想いを引き継ぎ、アフリカ・ウガンダでBOPビジネスとCSR活動の両輪で衛生環境の改善に取り組んでいます。

2010年に「100万人の手洗いプロジェクト」をスタートさせ、対象製品の売り上げの1%を寄付する形でユニセフの手洗い促進活動を支援しています。2011年5月には現地法人「SARAYA EAST AFRICA(サラヤイーストアフリカ)」を設立し、「病院で手の消毒100%プロジェクト」も開始しました。

サラヤは持続可能なビジネスという形で、雇用を生み出しながら社会課題を解決し、アルコール手指消毒剤の現地生産を行っています。可能な限り地元で原料調達し、地域農家の収入向上、生産・物流のためのスタッフの雇用創出などで地域に貢献。現地生産を実施したことで、ウガンダの一般消費者にも購入しやすい価格を実現しています。

Unilever PLC.(イギリス)

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引用:Unilever PLC.

世界最大級の日用品・食品メーカーであるユニリーバは、190か国で400を超えるブランドを展開しているグローバル企業です。英国で創業した1883年当時から「清潔さを暮らしの“あたりまえ”に」というミッションを掲げ、人々の健康に寄与しながら業績を拡大してきた実績があります。

ユニリーバが擁するブランドの1つに「Life buoy(ライフボーイ)」という除菌石鹸があります。1894年に誕生したライフボーイは、現在ではアジアを中心にインド、バングラディッシュなど60か国で展開し、世界でNo.1の売上実績があります。「すべての人に健やかで衛生的な暮らしを」という目標のもと、石鹸を知らない人々に石鹸で手を洗って清潔さを保つことの重要性を伝えてきました。

これまでに4億2,600万人に衛生的な生活習慣を教えるプログラムを実施し、さらなる展開を計画しています。 手洗いを啓発するだけでなく、農村部などの貧しい地域では「サシェ」という小分け販売にすることで多くの人の手に届く価格を実現しました。インドの農村地帯など店舗のない場所では「プロジェクト・シャクティ」という手法で、女性たちに個人事業主になってもらい研修を実施し、訪問やキオスクでの販売も行っています。農村の女性たちを販売員として起用することで、女性の自立や生活向上にも貢献するビジネスとなっています。

まとめ

世界でBOPビジネスを展開する日本企業やグローバル企業をご紹介しました。いずれの企業も現地の人々の衛生環境や健康状態の維持など、課題解決に貢献することで業績を伸ばしています。

衛生や健康の知識が乏しい地域では、まず「知ってもらうこと」が必要です。なぜ必要なのか、商品価値をきちんと伝え、どのように健康の維持に役立つのかを理解してもらい、価格を現地の人々の生活に見合ったものにすることなど、ビジネスを軌道に乗せるのは決して楽な道のりではありません。

しかし、双方にとってwin-winの関係を築くことが、BOPビジネスを成功させるポイントといえます。今後はこのようなビジネスと地域貢献を両立させるBOPビジネスが、より多くの企業でも広がりを見せるのではないでしょうか。

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丸末彩加

丸末 彩加(まるすえ あやか)。幼少期をアメリカで過ごし、日本と海外どちらの視点も入れながら、楽しく社会問題を解決したいと思っています。趣味は旅行と音楽と食べることです。linkedinでも情報発信しています!

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