貧困問題の現状と今後の課題|日本・各国の事例

SDGs目標1である「貧困をなくそう」。

この中で述べられる貧困状態にある人々には、極度に貧しい生活を強いられている「絶対的貧困」層と、その国や地域の水準と比較して大多数より貧しい状況にある「相対的貧困」層が存在します。

この記事では特に日本においても大きな社会課題である「相対的貧困」に焦点を絞り、現状を知るとともにその原因を考えてみましょう。

さらには解決へ向けての日本や各国の取り組み事例についてもご紹介しますので、ぜひ自社の現状に照らし合わせて、SDGsビジネスにどこから取り組むべきかを考えてみてください。

相対的貧困は日本でも大きな社会課題

相対的貧困は日本でも大きな社会課題

SDGs1において世界の貧困が問題になっていると聞いても、絶対的貧困が問題となる地域は南アジアやアフリカ南部に集中し、日本国内では一見遠い国の出来事にみえてしまうかもしれません。

しかし、日本をはじめとする先進国が自国内で憂慮しなければならないのは、むしろ相対的貧困のほうです。

相対的貧困の定義

相対的貧困ラインはその国や地域の水準と比較して算出されます。

しかし、一般に世帯の所得平均がその国の等価可処分所得の中央値の半分(貧困線)に満たない状態のことをいわれ、その算出方法は定められているものの、可処分所得の計算なども含めてここからここまでという線引をするのは簡単ではありません。

日本の相対的貧困の現状

日本の相対的貧困線は1つの基準として、総務省の全国消費実態調査では135万円(2009年)、厚生労働省の国民生活基礎調査では122万円(2012年)という調査結果が発表されています。

また、相対貧困率は2016年には15.7%ということで、実に約6人に1人が相対的貧困状態にあるとされ、これはG7加盟国の中では米国で次ぐ2番目に高い比率です(参考:SDGs SCRUM【SDGs用語集/相対的貧困】)。

さらに日本の相対的貧困世帯の特徴は以下の通りとなっています。

  • 高齢者・単身世帯
  • ひとり親世帯
  • 郡・町村の地方在住世帯

この中でも特に「ひとり親世帯」いわゆるシングルマザーやシングルファーザーの世帯においては、親はもちろんのこと子どもたちの貧困につながるということが大きな問題です。

子どもの貧困率は「平成28年国民生活基礎調査」によると13.9%ですが、これをひとり親世帯に限定すると50.8%を超えるという調査結果が出ています。

これは先進国の中でも頭一つ抜けた状態といえ、ひとり親世帯の多くを占めるシングルマザーたちが子どもがいるために正職に就けなかったり、適切な養育費を確保できないなどの要因によって貧困状態に陥ってしまうのです。

つまり、日本の相対的貧困問題を解決するためには、こうしたひとり親世帯への支援策に目を向けることが急務といえるでしょう。

相対的貧困に取り組む各国の事例

相対的貧困に取り組む各国の事例

相対的貧困率が高いということは、国内の格差が大きい=格差社会であるということができます。

こうした格差社会が大きい国は先進国35カ国の中では、アメリカ、トルコ、チリなどが挙げられますが、日本も7番目に高い水準となっており、どの国でも子どもの貧困が深刻化しているのです。

ちなみに相対的貧困率が低い国、つまり国民の格差が少ない国はアイスランド、デンマーク、チェコなどが挙げられています。

では、諸外国はそれらについてどのような取り組みを行っているのでしょう。

ここでは、次の3カ国の取り組みについて簡単にご紹介します。

アメリカ

短期的な日々の生活に必要な所得の維持を目的とした「所得保障」プログラムが展開され、社会保険、増額控除、資産調査を含む公的扶助などを行っています。

しかし、これら貧困者(低所得者)を支援しようという策は必ずしも十分な成果を挙げているとはいい難く、現在でも子どもの貧困率は改善していません。

経済、雇用、人種、移民問題などさまざまな社会問題へのアプローチを持った抜本的な改革が求められています。

参考:内閣府【米国(第3)貧困実態下にある子供とその家族に対する具体的な支援】

スウェーデン

ひとり親世帯の子ども、特に0~6歳児の子どもがいる世帯においての貧困が顕著に見られ、次いで移民の親を持つ子ども、仕事のない世界の子どもに多く見られます。

スウェーデンでは最低賃金レベルが高く、比較的パートタイム労働者が少ないとはいわれていますが、さらに出生から16歳または学業が終了するまでの「子ども補助金」の支給、子どものいる家庭の所得に応じた「住居補助金」の支給など、手厚い社会保障を整備。

さらに大学までの授業料は無料で、補助金または貸付金による就学援助もあり、修学期間中の生活支援も行われるなど、子どもの貧困に対しては手厚い支援がなされていますが、子どもの社会的経済的背景と学業成績との関連性があることも指摘されています。

参考:内閣府【スウェーデン 第1 スウェーデンにおける子どもの貧困対策の概要】

イギリス

SDGs採択に先立ち、ブレア元首相が1999年に「2020年までに子どもの貧困を撲滅する」と宣言したイギリスは、その後政府が多くの政策を打ち出し、毎年その実績を公表しています。

日本よりも広く貧困層を捉えている貧困率を算出しているため、その数値は高く見えますが、それでも子どもの貧困率は1997年から2010年までに26%から18%に、ひとり親世帯の子どもの貧困率に限ってみれば、49%から22%へと約5割も低下しています。

その取り組みはの例は次の通り。

  • 貧困の児童数に応じて学校に出される補助金「自動特別補助」
  • 子どもが18歳になると引き出せる資産型の経済支援「自動信託基金」
  • 子供のいる低所得世帯や親が数弄している低所得世帯への現金給付「タックスクレジット」

イギリスの取り組みの優れた点は、これらの経済支援で就労意欲を失わせない仕掛けや、制度の複雑さを排除して確実に支援を届ける仕組みづくりを統合した点です。

参考:公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン【チャンス・フォー・チルドレンのブログ/「子どもの貧困」対策先進国での取り組みとは?~イギリス編~】

SDGs1「貧困をなくそう」に向けた日本政府の支援策

SDGs1「貧困をなくそう」に向けた日本政府の支援策

相対的貧困に対する諸外国の取り組みに対して、日本政府の取り組みは大きく分けて次の4つの支援策が用意されています。

  • 教育支援:児童養護施設や生活保護世帯の子どもたちへの学習支援、給付型奨学金制度の整備。文部科学省管轄。
  • 生活支援:健康で文化的な最低限度の生活を保証し自立を助長する生活保護制度や、生活困窮書自立支援制度。厚生労働省管轄。
  • 保護者の就労支援:希望する仕事に就くために必要な職業スキルや知識の習得を助ける公的制度「ハロートレーニング」や、母子家庭等就業・自立支援センター事業。厚生労働省管轄。
  • 経済的支援:児童扶養手当の支給、養育費の相談ができる養育費相談支援センターの設立。厚生労働省管轄。

こうした支援策によりひとり親家庭の親の経済的自立を助け、それに伴って子どもたちの貧困率を下げることを目的とした数々の取り組みがなされているのです。

まとめ

SDGs1「貧困をなくそう」の中でも、先進国諸国で問題になっている相対的貧困について、その現状と諸外国や日本の取り組みについて解説してまいりました。

特に日本においてはひとり親家庭の子どもたちのうち、半数以上が相対的貧困状態にあるというのは、けして目を背けることの現状です。

日本政府としてもさまざまな取り組みを行っていますが、国や自治体の取り組みだけでは取りこぼされる人たちは確実に出てしまいます。

そうした層に目を向けた取り組みを行うなどは、一般企業にしかできないことでもありますので、そこに新たなビジネスチャンスの芽は隠れているかもしれません。

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