検索
Close this search box.

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)がベータ版のフレームワークを公開

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)がベータ版のフレームワークを公開

現在、多くの企業が気候変動に関する取り組みを強化しており、こちらの記事に辿り着いた読者の皆様も「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。

TCFDとは、財務情報だけでなく会社のガバナンスや気候変動による長期的、短期的な機会とリスクなど、非財務情報を開示するよう求められるものになります。

今回ご紹介するTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は2021年に発足し、今年2022年3月15日には、その最初のベータ版(v0.1)を公開しました。

TNFDについてはこちらご覧ください▼

2023年の正式な発表に向けてフレームワークを改定しながら完成させていく予定で、2022 年 6 月(v0.2)、2022 年 10 月(v0.3)、2023 年 2 月 (v0.4)に渡って3回改定される予定です。

TNFDが注目される背景

生き物

世界経済フォーラムによると、世界のGDPの半分が自然資本や生態系サービスに依存していると発表しています。

私たちのこれまでのやり方は生物多様性の喪失や環境破壊、海洋や土壌の汚染を引き起こしており、今後これらが企業を経営する上で大きなリスクになるかもしれないという危機感が、企業だけでなく投資家や金融機関の間でも高まっています。

しかし、上記のようなリスクの面だけでなく、ビジネスチャンスに繋がることも期待されています。世界経済フォーラムの発表によると、自然環境へ配慮した社会を実現することで約4億人の新たな雇用を生み出し、年間事業価値は10兆ドルにもなると発表しています。

TNFDフレームワーク

TNFD
TNFD

今回発表されたフレームワークは、以下の3つの内容に大きく分けられています。

概念や定義
広範な市場関係者による自然と自然関連のリスク・機会への理解を支援するための、科学的根拠に基づく重要な概念と定義に関する基礎的なガイダンス

開示提案
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が策定した気候関連ガイダンスのアプローチと文言に沿った情報開示提案

リスクと機会の分析方法
自社の事業リスクやポートフォリオ管理プロセスに自然関連リスクと機会の分析を組み入れることを検討する企業や金融機関のための、実践的なガイダンス

このフレームワークを通じて、企業が事業活動を行う過程でどのくらい自然に依存しているのか、また自然に対して影響を与えているのか、という理解を促進します。

また、TCFDと同じように、自然関連によるリスクと機会を分析して経営に組み込み、意思決定の中核に取り入れることが期待されています。

サステナビリティに対する一貫したアプローチ

TNFDのフレームワークは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が行った作業を基に、大まかな開示提案を可能な限り整合させています。

情報開示に関するTNFDの提言(草稿版)
情報開示に関するTNFDの提言(草稿版)

これは、サステナビリティ報告書の一貫したアプローチと表現を求める市場参加者の要求に応えたものであり、気候変動と自然関連のリスク開示を組み合わせた統合的なサステナビリティ報告に向けた動きが加速されることを期待しています。

私たちにとって不可欠な自然

プラネタリー・バウンダリー
プラネタリー・バウンダリー

私たちはこれまで多くの自然資本を消費してきました。地球の限界を表すプラネタリー・バウンダリーの項目の一つである「生物圏の一体性(Biosphere integrity)」、つまり生物多様性の喪失や種の絶滅という項目では、すでに限界を超えてしまっています。しかし、人間はこのプラネタリー・バウンダリーの中でしか繁栄することはできません。

現在、多くの企業が様々な取り組みを行なっている気候変動と自然資本や生態系の喪失は根本的には繋がっています。

TNFDの共同議長であるDavid Craig氏は、「自然や自然関連リスクと機会に対する理解を深めることは、より優れた企業戦略、より優れた資本配分の決定、より優れたガバナンス、より優れたリスク管理と情報開示の慣行を実現する重要な要素です。気候変動や自然関連の影響・リスクが増大する中、企業が成功していくためには、戦略的計画やリスク管理に自然資産を組み込むことが不可欠です。」と述べています。

最後に

いかがでしたでしょうか?

今後企業は、今回発表されたTNFDのフレームワークを実際に試し、フィードバックを送ることでより精度の高いもの作成に貢献することが求められています。

また、生物多様性の喪失や気候変動、その他の環境問題含めて、それらはバラバラの課題ではなく、お互いに影響しあっていることを認識し、自然資本の需要性を理解することが求められていると感じました。

参照:
https://tnfd.global/wp-content/uploads/2022/03/Japanese-TNFD-first-beta-version-framework-release.pdf
https://tnfd.global/
https://www3.weforum.org/docs/WEF_New_Nature_Economy_Report_2020_JP.pdf

丸末彩加

丸末彩加

丸末 彩加(まるすえ あやか)。幼少期をアメリカで過ごし、日本と海外どちらの視点も入れながら、楽しく社会問題を解決したいと思っています。趣味は旅行と音楽と食べることです。linkedinでも情報発信しています!

サステナブルツーリズムでお悩みの方は
お気軽にご相談ください