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人権デューデリジェンスとは?企業が人権問題に取り組むことの重要性について

人権デューデリジェンスとは?企業が人権問題に取り組むことの重要性について

人権デューデリジェンスとは?

人権デューデリジェンスとは、アメリカの国際政治学者ジョン・ラギー氏が提唱した言葉で「企業が事業活動を行う中で、社内や取引先における人権侵害リスクを把握し、その軽減や予防を行うこと」を指します。

言い換えれば、すべての企業は人権を重視して事業活動を行うべきということを表しており、企業は自社だけでなくサプライチェーン全体で強制労働や児童労働などの人権侵害が起きていないかを把握する必要があります。

人権デューデリジェンスを「人権デューデリ」と言ったり、「人権DD」と表記することもあります。

ビジネスによる人権侵害の一例

人権

原料生産に関わる労働者
わたしたちの生活を支えるパソコンや携帯電話などのIT機器や食品・日用品の原材料を生産する鉱山や農園で、健康をおびやかすほど過酷な労働環境で働く人たちがいます。また児童労働の問題も起きています。

移住労働者
よりよい生活を求めて自国より給与の高い国外で働く移住労働者が増えています。仕事をあっせんしてもらうため、労働者が借金をして高額な紹介料や手数料を支払っていることも多く、債務労働となっています。また、給与の未払いや遅延、雇用主からの暴力、転職の自由がないことなども問題となっています。

日本でもベトナム人労働者への暴力や過労の問題などが取り上げられているので、ご存知の方も多いかもしれません。

先住民の人びと
資源開発のため、先住民の人びとが生活の糧を得たり儀式を行ったりするために伝統的に守ってきた土地が収奪され、生活が破壊されています。また、森林や河川が開発されることで、その周囲に住んでいる先住民や地域住民が食料を得られなくなったり健康被害が起きたりしています。

人権擁護活動家
労働者の権利や先住民の権利を守るため、資源開発から地域を守るため、立ち上がった人権擁護活動家に対する弾圧が強まっています。企業を誘致したい国が派遣する警察や治安部隊、企業から雇われた警備員などから、活動家が嫌がらせや脅迫を受けたり、命を奪われたりしています。

(参照・引用:https://www.amnesty.or.jp/human-rights/topic/bhrs/)

ビジネスと人権の関係性

人権侵害事例

1997年にNIKE(ナイキ)が東南アジアの劣悪な環境で現地の人材に強制労働させていることが発覚し、大きな問題となりました。その結果NIKEの不買運動も起こり、経済的にも企業イメージ的にも大打撃を受けました。その後は、情報公開などを積極的に行い、現在では高い評価を得ています。

また、2021年に起きた中国の新疆ウイグル自治区でウイグル族が強制労働などの人権侵害を受けているという出来事に対して、ファストファッション大手のH&Mや大手スポーツメーカのアディダスなどが新疆ウイグル自治区で生産された綿花を使用しないと発表しました。一方日本のユニクロや無印良品などは深く言及することはありませんでした。

この事例から分かるように、欧米ではこの人権デューデリジェンスがすでに深く浸透しており、ユニクロの新疆綿を使用した製品がアメリカで輸入差し止めとなるなど、日本企業も無関心ではいられない時代になってきています。

欧米諸国での動き

人権侵害

欧米諸国を中心に、企業は事業活動を行う際にサプライチェーンにおける人権への負の影響がないかを特定し、その対応策を開示するよう求める法規制の整備が進められています。

【紛争鉱物規制】
2010年にはアメリカで米国金融規制改革法(通称「ドッド・フランク法」)の中に、紛争が絶えないコンゴ民主共和国およびその周辺国で採掘され、武装勢力の資金源となっていた4つの鉱物(金・タンタル・タングステン・すず)を規制する記載が盛り込まれ、2019年には欧州連合(EU)でも紛争鉱物規制がスタートしています。

【サプライチェーンにおける人権】
2012年、アメリカのカリフォルニア州で、サプライチェーンにおける強制労働・人身取引を防ぐための対応について企業に情報開示が義務付けられ、続いて2015年にはイギリス、2019年にはオーストラリアでも、サプライチェーンにおける現代奴隷を防ぐ企業の取り組みの情報開示が義務化されました。

2017年には、フランスで人権デューディリジェンスの実施を企業に義務づける法律が出来るなど、年々その流れが強まっていることが分かります。

日本国内の動き

国内の人権侵害

日本政府は、2020年10月に「ビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)」を公表しました。行動計画には、優先的に取り組む分野として、労働者の権利、子どもの権利、新しい技術の発展に伴う人権、消費者の権利、外国人の権利などについて、企業の対応を求めていくことが明記されています。

しかし、欧米諸国に比べると取り組みはまだまだ遅れていると言われており、「ビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)」にも特に強制力はありません。

しかし、人権デューデリジェンスの意識が高い国へ進出する際には、人権デューデリジェンスを遵守しなければ輸出が認められない可能性があるだけでなく、現地の法律に違反しているとして罰則を受けることもあるため、企業はサプライチェーンマネジメントやESGの情報開示を積極的に行うなどして、取り組んでいくことが求められるでしょう。

最後に

いかがでしたでしょうか?

ESGの情報開示を既に行っている企業さまもいらっしゃると思いますが、実際には何をどうすればいいのか、迷われている方も多いのではないかと思われます。

あすてなでは、人権デューデリジェンスに取り組んでいる企業の事例もご紹介しています。

今後日本でも人権に対する動きがさらに加速し、より透明性が求められる世の中になった時に遅れを取らないよう、今から取り組んでみてはいかがでしょうか?


最後までお読みいただきありがとうございます。

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丸末彩加

丸末彩加

丸末 彩加(まるすえ あやか)。幼少期をアメリカで過ごし、日本と海外どちらの視点も入れながら、楽しく社会問題を解決したいと思っています。趣味は旅行と音楽と食べることです。linkedinでも情報発信しています!

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