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バックキャスティングとゴミ問題

あるべき姿の議論から始めるゴミ問題解決

ゴミ問題をご存知でしょうか?日本は国土が狭いという理由から、これまで多くのゴミを燃やして埋め立てを行ってきました。しかし、その埋立地も残り20年でいっぱいになるそうです。ゴミ問題に限らず、このような社会課題を考える際、他人事から自分事へと考えられるようになるための工夫が必要です。問題解決のための「どうすべきか」の問いから始めると、考えが行き詰まりがちです。ではどうすれば良いでしょうか。問題解決のための「どうすべきか」からではなく、まずは社会の「あるべき姿」をイメージし、言語化する事から始めます。問題解決のための「どうすべきか」の前提には、「あるべき姿」があるはずです。「あるべき姿」から考える始めると、消費者や企業の目の前にある世界の見え方が変わります。

そもそも「ゴミ問題」とは

「ゴミ問題」と聞くと、とても抽象的な問題のように感じるかもしれません。しかし簡単に説明をすると、一般ゴミや産業ゴミ・災害ゴミに関する問題・不法投棄による環境汚染の問題・焼却や埋め立てが追い付かない問題・ゴミ処分場の新増設に伴う近隣住民の反対などの問題を総称して、「ゴミ問題」と言われています。

日本のゴミ問題の現状

2021年3月に環境省が発表した資料によると、1年間のゴミ総排出量は4,274万トン(東京ドーム約115杯分)、1人1日当たりのゴミ排出量は918グラムです。

そしてこのままでは、2040年には、ゴミを埋め立てるための最終処分場(埋立地)が無くなってしまうと言われていますが、その解決策は未だに見つかっていません。

これまで日本はリサイクル可能なゴミを資源ゴミとして、中国など主に東南アジアの国々へ輸出をしてきました。しかし、2018年に中国が資源ゴミの輸入を禁止し、2019年にはその他の東南アジアの国々も規制を始めたため、これまで海外への輸出に頼ってきた日本は「ゴミ問題」という問題に直面しています。

焼却炉の数は世界一!

日本は焼却炉の数が世界一で、1067施設ほどあります。焼却率も77%と、回収した多くのゴミを燃やしています。このグラフはOECD加盟国の焼却率を比較したもので、薄いピンク(熱回収を伴わない焼却)とオレンジ色(熱回収を伴う焼却)の合計が焼却率となっています。赤色は埋め立て、薄い黄色はコンポストやリサイクルなどで循環させたことを示します。

ごみ問題
OECD加盟国のゴミの焼却率 (出典:Environment at a Glance 2015

国土面積が小さいので燃やすことで最小限の大きさにしてから埋め立てる必要があるそうです。その結果世界全体で見ても焼却率の数値が高い、という現状があります。しかし、ゴミ問題をこのままにすると最終処分場が無くなるだけでなく、地球温暖化にも繋がってしまうという問題があります。ゴミを焼却する過程で発電している施設もありますが、同時に二酸化炭素も排出しており、2050年にカーボンニュートラルを目指す日本としても、ゴミ問題は見て見ぬフリはできない喫緊の課題となっています。

生ゴミを削減することから始めよう

フードロス

普段当たり前のように生ゴミを捨てている私たちですが、生ゴミの重量のうち80%以上は水分と言われています。ほぼ全てのゴミを焼却処分している日本にとって、生ゴミは、燃えにくく、エネルギーやコストを大量に費やしてしまう原因となっています。つまり、生ゴミやフードロスを減らすことによって、二酸化炭素の排出を減らすことに繋がります。

生ゴミを減らす方法として最近注目されているのがコンポストです。最近では段ボールコンポスト一式をワンコインで購入できる自治体もありますし、鞄型になって持ち運べるものも販売されています。

私たちにできること

よく耳にする3Rという言葉や、4つ目のRとして「refuse(断る)」ということを耳にすることもありますが、私は滝沢 秀一さんというゴミ清掃員の方がラジオで仰っていた事が素敵だなと思ったのでご紹介します。

「僕は4R、4つ目のRを提案したいのは、”リスペクト”ということなんですね。リスペクトって尊敬するとか敬意を払うって意味じゃないですか。これってその気持ちがあれば、意外とゴミ問題って大概、解決するんじゃないのかななんて思ったりするんですね。」

最後に

最終処分場がないなら増やせばいいと考える方もいるかもしれませんが、多くの人は自宅の周辺に処分場があることをよく思わないので、なかなか土地が確保できないという問題があります。また、焼却する過程で地球温暖化の原因になっていることをご紹介しましたが、これ以上気候変動が進んでしまうと、いずれ私たち人間も住めなくなるかもしれません。

国の制度が整うのを待っていては20年はあっという間です。企業は資源を循環させるサーキュラーエコノミーを実践し、サプライチェーン全体でより長く使用することのできる商品設計やシステムの構築を行う必要があります。

私たち消費者は滝沢さんが仰っていたように、ものを大切に使うこと、そして購入する段階からきちんと必要かどうかを考える必要があると思います。私は同じシャンプーという商品を買うにしても、プラスチックをお店が回収してくれるものやそもそも使っていないものなど、できる限りゴミが出ない商品を使用しています。

ゴミ問題は私たち一人一人の行動が変われば解決できる問題だと思うので、多くの企業がまず「どう在りたいか」「どういう未来を描きたいか」を具体的に想像し、削減に向けて変化してくれることを期待します。

<参照>

https://www.env.go.jp/press/109290.html

https://www.env.go.jp/recycle/waste/conf_raw_g/01/mat03.pdf

https://www.bayfm.co.jp/program/flint/2021/09/12/guest20210912/

https://www.oecd-ilibrary.org/environment/environment-at-a-glance-2015/municipal-waste-disposal-and-recovery-shares-2013-or-latest-graph_9789264235199-graph42-en

丸末彩加

丸末彩加

丸末 彩加(まるすえ あやか)。幼少期をアメリカで過ごし、日本と海外どちらの視点も入れながら、楽しく社会問題を解決したいと思っています。趣味は旅行と音楽と食べることです。linkedinでも情報発信しています!

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