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フードロス、今まで捨てられていたものが大変身|事例

フードロス | 今まで捨てられていたものが大変身!世界の事例3選

フードロス(食品ロス)とは、まだ食べられるのに廃棄される食材のことです。フードロスには種類があります。形が綺麗ではないという理由で廃棄されてしまう「規格外品」は、比較的利用しやすいでしょう。しかし、卵の殻やフルーツジュースを作る過程で残る搾りかすは、「ゴミ」として捨てられてしまうことが一般的です。しかし、世界にはこれらをアップサイクルし価値を生み出している事例がいくつもあります。

本記事では、これまで活用されてこなかった食材を通じて、価値を生み出すだけでなく、農家の労働改善にまで良い影響を及ぼしている取り組み事例を紹介します。

世界や日本の取り組み

世界全体のフードロスは、年間13億トンにも及びます。この量は、年間に生産される食料の1/3に相当します。もっとも廃棄量の多い国は中国で、アメリカ、日本、イギリス、フランス、ドイツ、韓国、オランダと続きます。中国は1億トン超、アメリカは約6,000万トン、日本は1,700万トンです。それ以下の国々は、約1,000万トンから漸減する傾向にあります。

フードロスは、もったいないだけではありません。廃棄された食べ物は焼却に費用がかかるだけでなく、温室効果ガスである二酸化炭素も発生します。

フードロスの種類

フードロスは、大きく2種類に分かれます。家庭から出る家庭系フードロスと、消費者やレストラン、小売店、流通業者、食品加工・製造業者、畜産・農家などの事業系フードロスです。家庭系フードロスは、料理のつくりすぎや食べ残し、賞味期限切れで廃棄されるものなどを指します。一方の事業系フードロスは、製造工程でのロスや、スーパーやコンビニでの売れ残り・破損、飲食店での仕込みロスやお客の食べ残しに相当します。つまり、私たちの誰もがフードロスに関係しているといえます。

日本では多くの食品が廃棄されていますが、2019年10月に施行された「食品ロスの削減の推進に関する法律」によって、フードロスという課題に対する認識が徐々に高まってきているといえるでしょう。 世界各国でも、フードロスに対するさまざまな取り組みが行われています。

世界のフードロス問題に取り組む企業 3社

フードロスという問題に対してアップサイクル(「創造的再利用」とも呼ばれます)という方法でアプローチをしている企業を3社ご紹介します。今の常識では「食べないもの」「捨てるもの」と考えられている食品やその一部を加工し、付加価値を高めた商品へと変化させています。

NETZRO(アメリカ)

NETZRO
引用:NETZRO

NETZRO社は、2015年に創設されたアメリカの企業です。食料生産量をこれ以上増やすことなくフードビジネスを拡大させ、フードロスを削減することをビジョンに掲げています。農家と流通業者、小売業者、レストラン、消費者、行政を巻き込んで食料のアップサイクルの循環を作り出す挑戦を行っています。

利用される原料は、卵の殻やビールの醸造に使われた麦芽かす、コールドプレスジュース(野菜や果物の水分を絞り出したジュース)の搾りかすなどがあります。

アメリカは、年間に約1,050億個もの卵の殻が埋め立てなどの方法で処理されています。卵の殻を卵殻膜と殻とに分離し、それぞれからカルシウムとコラーゲンを精製。人間だけでなく動物にも使える製品を製造しています。

麦芽かすは、残存する栄養素を考慮すると捨てるにはもったいない食材です。高たんぱくで繊維質豊富、かつ低糖質な粉末に加工することで、ベーカリーに喜ばれ購入される商品へと変化しています。

コールドプレスジュースは人気がありますが、飲まれた分だけ搾りかすが出ます。ジュースの絞りかすにある繊維質などの栄養素を活かすことを考えた同社は、加工を加えてスーパーフード(栄養価の高い食品)の素材へとアップサイクルしています。

RUBBiES in the RUBBLE(イギリス)

RUBBiES in the RUBBLE
引用:RUBBiES in the RUBBLE

RUBBiES in the RUBBLEは、2012年「フードロスと闘う」ことをビジョンに掲げ創設されたイギリスの企業です。形や色がよくないという見た目だけの理由で捨てられてしまう野菜や果物をアップサイクルし、マヨネーズなどの調味料を製造・販売しています。

同社は、世界で生産される食料の1/3が食卓に上るまでの間に廃棄されているという衝撃の事実を受け止めたところから、活動をスタートさせました。イギリスでは年間720万トンの食料や飲料が廃棄され、一世帯当たりの平均廃棄コストは60ポンド(約9,400円=1ポンド157円で計算)といわれています。

農場から出荷される前に廃棄されるもの、スーパーなど小売店のチェックではじかれるもの、そして家庭でゴミ箱に入ってしまうものなど、流通の複雑さも廃棄量を増加させてしまう理由の一つとし、自社商品の製造でその問題に対応しています。

ケチャップに使われる果物や野菜は、農場で生産されたものを直接仕入れて使用します。また、マヨネーズに必要とされる卵の代わりに使用するのはアクアファバ(ひよこ豆の煮汁)です。保存料などを使用せず、砂糖や酢を上手に使うことで、調味料としての賞味期限を延ばす工夫もしています。 同社は2012年の創設からこれまでに、352トンの余剰食料を消費し、295トンに相当する二酸化炭素の排出を削減することができたと報告しています。

WISE TEA(カナダ)

WISE TEA
引用:WISE TEA

WISE TEAは、2014年に創設されたコーヒーリーフティーを製造・販売するカナダの企業です。同社がニカラグアで取り組んでいることは、コーヒーのアップサイクル以上の環境・地域貢献です。なぜなら、コーヒー農家の働き方そのものを変えることにつながっているからです。

コーヒーは通常、コーヒー豆を収穫するために栽培されますが、同社が注目したのはコーヒーの豆ではなく葉っぱです。土を含めた木の育て方を指導し、コーヒーリーフをお茶にし、コーヒー農家の働き方や収入だけでなく子どもの労働まで大きく変えました。

1年間のうち、コーヒー豆が収穫できる期間はたったの3〜4ヶ月間(12〜3月)です。残りの約9ヶ月間は仕事がなく、コーヒー農園の労働者は日雇いの仕事を求め、季節労働をしに都市部へ行かざるを得ませんでした。一方で、農繁期には子どもに学校を休ませ、家族総出で収穫する必要がありました。

同社がコーヒーリーフに注目した理由は、葉に含まれる成分やお茶としての風味が豊かだからです。ポリフェノールを含み、天然のほのかな甘みが特徴です。味わいは、緑茶やウーロン茶のようでスッキリとしていることから、高い評価を得ています。 健康的で美味しいだけではなく、コーヒー農家の働き方までも変えるというインパクトを持つ同社の活動は今後注目を集めるでしょう。

まとめ

最近、メディアでもよく取り上げられる「フードロス」という問題。コンビニエンスストアやスーパーマーケットでも「手前取り」を推奨するなど、社会側と私たちの意識も少しずつではありますが、変化しているように感じます。

従来の考え方では廃棄されるはずだったものを、価値ある商品にアップサイクルする取り組みは、食べ物だけでなく他の業界でも広がりを見せています。今回ご紹介したWISE TEAのように、生産地の環境や農家の労働改善にまで良い影響を及ぼしている事例は、今後インパクト投資の拡大によって増えていくでしょう。

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丸末彩加

丸末 彩加(まるすえ あやか)。幼少期をアメリカで過ごし、日本と海外どちらの視点も入れながら、楽しく社会問題を解決したいと思っています。趣味は旅行と音楽と食べることです。linkedinでも情報発信しています!

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