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実現のカギは基盤となるシステム作り|オランダ

実現のカギは基盤となるシステム作り|オランダ

限りある資源を有効活用し、循環させるサーキュラーエコノミー(循環型経済)が注目を集めています。2050年までに100%サーキュラーを目指すオランダ政府は、サーキュラーエコノミーを推し進める上で土台となる国際協力やテクノロジーの推進、そしてそれらを守る法整備やルール作りに取り組んでいます。SDGsの世界観にとっても重要なサーキュラーエコノミー。成功の鍵となるシステム構築の取り組みについて解説します。

オランダ政府の2050年までの方針についてまとめた記事はこちら▼

法律と規制のあり方

法律は、イノベーションを促進することもあれば、阻害することもあります。なぜなら、現段階で使用が認められているテクノロジーが中心となった法整備や、リニアエコノミー(直線型経済)の時のルールに合わせて作られたものだからです。サーキュラーエコノミーを推進する上で必要な新しいテクノロジーが誕生した際は、規制を設けた上で実験する余地を残す必要があります。その一方で、規制や法律により新しいイノベーションに繋がることもあります。大地・空気・水が完璧に循環する基準を設け、その法律を徐々に拡大していくことで、企業は循環する資源や技術の導入を余儀なくされます。

廃棄物の定義

サーキュラーエコノミーでは、廃棄物とされてきたものが資源に変わります。そのため、より具体的に「廃棄物」を定義する必要があります。残留廃棄物のフローだけでなく、返品(修理・分解・リサイクルされる製品)についても「廃棄物」としての分類や評価を行います。オランダ政府は2015年に、廃棄物を再資源化粒状物(石材)と物質グリセリンに合わせた副産物に分ける省令を制定しました。それ以来企業や政府は、「副産物」と「最終廃棄物」の概念を使用し始めています。

廃棄物は、製品や材料をリサイクルし、原材料についても可能な限り効率的に処理することが原則です。物質に関する方針は、製品や材料に含まれている有害物質を段階的に廃止することを目指しています。サーキュラーエコノミーを実現するためには、原材料のリサイクルと有害物質の抑制という2つの間のバランスをとることが重要です。

法律にもよりますが、有害物質を使用していても、安全にリサイクルできるものもあります。リサイクルすることで新たな資源を使う必要がなくなり、二酸化炭素の排出を削減することで環境負荷を小さくすることにもつながります。オランダ政府は、リサイクルまたは廃棄のどちらが最善の選択であるかを判断することができる評価基準を制作しています。

生産者の責任ついて

生産者の責任は、EU廃棄物枠組み指令が限られた業界(自動車・タイヤ・電子機器・パッケージ・バッテリー)にのみ適用されています。しかし、オランダのインフラ・環境省は、他の業界にも応用することを目指しています。例えば、循環する製品づくりを行うことによるインセンティブや新たな資源利用を抑制する仕組み、高品質の素材を再利用することやアップサイクル、あるいは廃棄された製品の回収を生産者が行うなど、どうすれば生産者の責任を高めることができるのかについて議論を進めています。

実現に向けての第一歩

最初にオランダ政府は、オープンスタンダード(公開された基準)を公開しました。オープンスタンダードは、認証と標準化の両方の役割を果たします。さまざまなビジネスコミュニティや業界関係者、そしてオランダ王立標準化協会であるNENと協力して基準を設定しており、認証の証明書を発行するプロセスを含めて行っています。この基準は、大手企業だけでなくサーキュラーエコノミー実現に向けて挑戦している中小企業も活用できるよう設計されています。

移行期の政府の役割

政府の役割として、国民の健康・安全・環境といった公共の利益を保護することが挙げられます。しかし、サーキュラーエコノミーへの移行期には、構築されていたシステムやフローが大きく変化し、監視体制も変化することが求められます。社会全体で大きな変化を伴うからこそ、迅速かつ効果的に対応する必要があります。そのためには、IT技術などのテクノロジーの活用が有効な場合もあります。オランダ政府は、最適な方法について研究を行っています。

またオランダ政府は、優先な取り組みを決定している「プラスチック」「消費財」「製造」「建設」「バイオマスと食品」の5つのセクターと関係するサプライチェーンについて深く研究しています。特に、イノベーションを起こす可能性のあるベンチャー企業の「機会」と「障壁」、そして「リスク」を正しく分析し、社会への実装する際の最適シュミレーションを実施しています。そして、「障壁」を取り除くため、解決に向けて起業家やその他の政府関係者との対話の場が設定され、サーキュラーエコノミーへの移行をより加速させるためのイノベーションが誕生しやすい環境を整えています。

最後に

「2050年までに100%サーキュラーエコノミーを実現する」という目標を掲げること自体は簡単かもしれません。目標設定後の行動が、本当にトランスフォーメーションできるかどうかを決定します。移行するためには行政の法整備はもちろん、規模に関係なく多くの企業にサプライチェーン全体で取り組んでもらう必要があります。また、企業もグローバルに展開しているので、オランダ国内だけでなく、他国の協力も必要です。

一見、オランダは政府がトップダウン式で一気に進めているように見えます。しかし、実際には多くのセクターと協力しながら、また政府も問題に対して柔軟に対応することで、課題を一つずつ解決しており、一歩一歩サーキュラーエコノミー実現に向けて取り組んでいる姿勢を垣間見ることができます。

参照:
https://circulareconomy.europa.eu/platform/sites/default/files/17037circulaireeconomie_en.pdf
https://www.nen.nl/en/

Picture of 丸末彩加

丸末彩加

丸末 彩加(まるすえ あやか)。幼少期をアメリカで過ごし、日本と海外どちらの視点も入れながら、楽しく社会問題を解決したいと思っています。趣味は旅行と音楽と食べることです。linkedinでも情報発信しています!

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