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食の未来を変える培養肉とは?注目される背景とMosa Meatの事例を紹介

食の未来を変える培養肉とは?注目される背景とMosa Meatの事例を紹介

大豆ミートやプラントベースミート、培養肉など、タンパク質摂取源が近年多様化し、代替肉と呼ばれています。代替肉が注目される背景には、環境や社会、そして健康に対する関心の高さがあります。本記事は、代替肉の中でも「培養肉」に焦点を当て、オランダの培養肉企業Mosa Meat(モサミート)の取り組み事例を紹介します。

培養肉とは?

培養肉をシンプルに説明すると「細胞から作られた肉」です。培養肉の製造には、細胞培養技術や組織工学などの先進的な技術が活用されます。また、培養肉は、牛肉や鶏肉などのさまざまな種類の肉製品を生産することが可能で、一般的な肉製品と同様の味や食感の実現を目指しています。

培養肉が注目される背景とは

培養肉が注目される背景には、主に理由の3つがあります。

工業型畜産による環境破壊

食の未来を変える培養肉とは?注目される背景とMosa Meatの事例を紹介

牛肉は、生産過程で多くの水資源や飼料が必要にも関わらず、摂取できるタンパク質の量が少ないことから環境負荷の大きい食材です。具体的には、1kgのステーキを作るために約15,000リットルの水と25kgの穀物が必要です。中でも、工業型畜産と呼ばれる工業的に牛肉を生産する方法は、地球環境に大きな負荷を与えています。例えば、地球上の熱帯雨林の半分が存在し、世界の肺と呼ばれるアマゾンでは、農家が放牧や飼料を生産するために森林伐採が行われています。環境NGOのグリーンピースによると、1980年から2000年にかけて約1億ヘクタールの熱帯雨林が失われました。森林は、炭素を吸収し蓄える役割だけでなく、そこに住む住民や動物の住処にもなっています。今後の食肉需要を賄うためには、より多くの土地が必要と言われていますが、食肉から培養肉に需要が代替されることで、畜産業で必要とされている土地面積の64〜90%を削減することができ、不必要な森林伐採を食い止めることができます。

牛から排出されるメタンガスによる温室効果

畜産業は、多くの温室効果ガスを排出しています。特に牛のゲップには、二酸化炭素よりも温室効果が25倍もあるメタンガスが含まれており、その排出量は世界全体で排出される温室効果ガスの14%を占めています。動物を飼育する必要のない培養肉は、従来の食肉生産と比較して温室効果ガスを大幅に削減することが可能です。

タンパク質危機(タンパク質クライシス)

2022年11月に世界の人口は80万人を突破しましたが、世界の人口は今後も増加すると予想されています。人口増加により、タンパク質の供給が需要を賄えなくなる「タンパク質危機」が起こると予想されています。現在の畜産業は、温室効果ガスの排出や、土地や水といった多大な自然資源の消費が必要であり、地球環境への負荷が大きいです。培養肉の技術が普及すれば、環境負荷をかけずに食肉の需要を満たすことが可能になるでしょう。

オランダ発の培養肉企業Mosa Meatとは

食の未来を変える培養肉とは?注目される背景とMosa Meatの事例を紹介
引用:Mosa Meat公式ホームページ

オランダを拠点とするMosa Meatは、2013年に世界で初めて培養肉のハンバーガーを作ったことで注目を浴びました。同社は、現在の食料システムが環境に大きなダメージを与えているとし、解決に向けた以下4つのビジョンを掲げています。

  1. 行動ではなくプロセスを再考する
    多くの人はお肉が好きです。問題は、食べることではなく作り方です。私たちは、従来の方法から、より持続可能で効率的な方法へ移行したいと考えています。
  1. 魅力的な商品づくりを行う
    安全性などの基準を満たしながら、消費者の皆さんの期待に沿うハイクオリティーな牛肉を届けたいと考えています。
  1. どこでも購入できるようにする
    世界のどこにいても、私たちのハンバーガーが食べられるよう、生産規模を拡大することを検討しています。
  1. 地球規模のインパクトを与える
    多くの人が美味しいハンバーガーを楽しみながら、私たちの住んでいる地球環境をより良くするような、大きなインパクトを起こしたいと願っています。

培養肉が完成するまでのプロセス

食の未来を変える培養肉とは?注目される背景とMosa Meatの事例を紹介

Mosa Meatの培養肉の生産過程を紹介します。

まずは、ごま粒サイズの牛の細胞サンプルを採取します。この時、畜産農家が行うように、最も健康的で食肉に適していると思われる牛の細胞を選びます。ごま粒サイズの細胞サンプルからは、最大8万個分のハンバーガーを作ることが可能です。

その後は、子牛から成牛に成長するように、細胞を育てます。牛が綺麗な空気や栄養のある牧草を食べるように、細胞にもビタミンや酸素などを与えて、成長に適した環境を提供しています。細胞は、自然の摂理に従って培養することで、牛の体内と同じように筋肉や脂肪に成長します。

完成した培養肉の見た目は、従来の方法で生産された食肉と違いがわかりません。唯一違う点は、食肉の生産過程で牛も地球も傷つけていないということです。

詳しくはこちら:https://mosameat.com/growing-beef

培養肉の生産に向けた世界の動き

食の未来を変える培養肉とは?注目される背景とMosa Meatの事例を紹介

Mosa Meatは、持続可能な食料システムの構築に向けて、2023年5月にオランダのマーストリヒトに培養肉の工場を設立しました。

当面は年間数万個の培養肉バーガーを工場で生産する予定です。しかし、将来の需要増加を想定し、年間数十万個のハンバーガーを生産できる能力まで拡大できるよう工場及び製造ラインが設計されています。Mosa Meatのほかにも、マレーシアのCell AgriTechや中国のCellX、イスラエルのBELIEVER Meatsが工場の建設に着手しています。培養肉の産業全体で、商用化・大量生産に向けた動きが活発化しています。

最後に

培養肉の販売が認められている国は、2023年6月現在で、シンガポールとアメリカの2カ国のみです。今回紹介したMosa Meatの拠点であるオランダも、規制により消費者市場での販売には至っていません。

培養肉は、環境負荷を低減することができます。未来の食べ物として期待される培養肉の研究・開発は、今後も加速していくことが予想されます。一方、2023年3月、イタリアでは、伝統的な食文化を守ることを目的に、培養肉を禁止する法案が提出されました。環境を守ることも重要ですが、食文化の保護や反対の耳に声を傾けることも重要でしょう。

今後も拡大すると予想される培養肉市場が、今後どう成長していくのか。そして次に販売を許可する国や地域はどこなのか。今後も注目していきます。

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丸末彩加

丸末 彩加(まるすえ あやか)。幼少期をアメリカで過ごし、日本と海外どちらの視点も入れながら、楽しく社会問題を解決したいと思っています。趣味は旅行と音楽と食べることです。linkedinでも情報発信しています!

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