COP28がドバイで開幕!COPとは何か徹底解説
2023年11月30日(木)、COP28が開幕しました。計13日間、12月12日(火)まで開催されます。COP28のメイン会場は、当オウンドメディアでも紹介したドバイ万博の会場の跡地です。2020年に開催されたドバイ万博当時の様子に興味ある方は、是非当オウンドメディアの記事をご覧下さい。
ドバイ万博特集記事: ドバイ万博 | earth sustainability
COPとは?
日本の新聞やウェブメディアを中心に内容が取り上げられるようになっているCOPですが、COPとは何かご存知でしょうか? COPとは、「締約国会議(Conference of the Parties)」の略称です。「気候変動枠組条約」の加盟国が、地球温暖化に対する具体的政策を定期的に議論する会合を指します。2023年のドバイ会議で28回目を迎えました。COPでの合意は、国際的な取り決めとして実行され、各国の経済やエネルギー政策等に大きな影響を与えます。そのため、最終的には民間企業も影響を受けます。
COPが誕生したきっかけは、1992年6月3日から14日にかけてブラジルのリオデジャネイロで開催された「環境と開発に関する国連会議」です。この会議は、「地球サミット」とも呼ばれています。この会議には172の政府の代表が参加し、NGOからの参加も含め、17,000人以上の参加者がいた大規模な国際会議でした。この会議で、持続可能な開発を目指すリオ宣言や21世紀に向けての環境保全計画であるアジェンダ21、森林保全などに関する原則声明などが採択されました。そして、地球サミットの中で結ばれた諸条約の一つが「気候変動枠組条約」です。この条約に基づき、毎年COP(締約国会議)を開催することが決まりました。
COPは、気候変動枠組の国際交渉の場です。但し、回数を重ねることで参加人数も増え、一部有識者からはカンファレンス化されているという声もあります。COPという枠組みが今後も機能しうるのかどうか、市民社会は注視する必要があります。
COP28では何をするの?
こちらがCOP28の13日間のスケジュールです。各日、アジェンダが決まっています。COP28で新しく入ったアジェンダがあります。Day3の「Health/Relief, Recovery and Peace」です。気候変動は人類の健康に大きな影響を与えます。また、気候変動による影響で食糧危機などが起きれば、より多くの気候難民を生み出し、平和にも大きな影響を与える可能性が高いです。アジェンダからも気候変動が人類の差し迫った危機であることが分かります。
12月10日(日)と11日(月)は、最終交渉でCOP28の最終決定文章を詰める交渉が行われます。
1997年に京都で開催されたCOP3で採択された「京都議定書」では、2020年までの温暖化対策の国際ルールが先進国向けに定められました。しかし、2015年に開催されたCOP15のパリ協定では、先進国だけでなく、すべての国と地域を対象としたため、最終決定文章はすべての国と地域に影響を与えます。また、パリ協定では各国がNDC(Nationally Determined Contribution=国が決定する貢献)と呼ばれる削減目標を自ら決定し提出しました。COP28は、NDCの世界全体の進捗状況を評価する初のグローバルストックテイクが実施されます。
COP28の最終決定文章に何が盛り込まれるのか注目しましょう。個人的には、2100年の世界平均気温の上昇を産業革命以前の1.5℃以内に抑える動きを強化できるかどうかに注目です。そのためには、石油や天然ガスを含めた化石燃料使用の段階的廃止なしに実現は難しいと考えます。
COP28会場 ブルーゾーンとグリーンゾーン
会場は、「ブルーゾーン」と呼ばれる国連管理エリアと「グリーンゾーン」と呼ばれる開催国政府が管理するエリアに分かれています。グリーンゾーンでは気候変動に関するイベントや展示、ワークショップなどが行われ、登録した一般市民も無料で参加出来ます。
COP28では、ブルーゾーンの登録者にドバイメトロの乗り放題パスとウォーターボトルが配られます。公共交通機関を使って会場へアクセスしなさい。そして、プラスチックボトルを購入せずに、ウォーターボトルで水分補給しなさいというメッセージを受け取りました。ドバイの公共交通機関網は、かなり発達しています。特に公共バスを使いこなせるようになると公共交通機関で多くの場所にアクセスできるようになりますが、地理感がないと難しいのも事実です。私は、可能な限りタクシーやUberを使わずに移動することを心掛けます。
COP会場の様子
国家元首、政府高官、ビジネスリーダー、NGO、科学者、気候専門家、市民社会を含む最大8万人の代表者が集まるので、会場は大変な賑わいを見せています。11月30日(木)は、Opening Dayです。エジプト・シャルム・エル・シェイクCOP27の議長からCOP28の議長へとバトンが渡されました。COP28 アル・ジャベル議長のオープニングスピーチでは、「ファイナンス」の重要性が強調されました。気候変動の緩和、適応、政策の導入等に関してやるべきことは明確です。ファイナンスギャップをどのように埋めるか。このファイナスギャップを埋める動きには、グローバルサウスに対する気候関連資金流入ルートをどのように設計していくのかという点や損失と損害(ロス&ダメージ)基金の具体的な設立の話も関わってきます。気候変動や生物多様性などの環境問題の解決に取り組むにあたり、すべてのステークホルダーにとって公正かつ平等な方法により持続可能な社会への移行を目指す概念「ジャストトランジッション(Just Transition)」も考えなければなりません。2030年目標の大切さが改めて強調され、中東の国営石油会社(National Oil Comapany)もネットゼロに向けて大きく変化の一歩を歩み始めている説明もありました。
また、11月30日(木)のOpening Day(Day1)で一番大きな拍手が起きた場面は、損失と損害(ロス&ダメージ)を救済する基金の運用方針が採択された時だったのではないでしょうか。社会インフラが脆弱な途上国に対して、干ばつや洪水など気候変動による自然災害による被害を救済するためのファイナンス面の仕組みです。COP28の委員会が纏めた運用方針案が採択され、基金は暫定的に4年間、世界銀行の下に設置されます。基金に対する資金提供は任意であるものの、資金の出し手として先進国には強い要請が行われていました。COP28の議長国・UAEは、1億米ドルの拠出を表明し、次いでイギリスとドイツが6,000万ポンド(約7,586万米ドル)、アメリカが1,750万米ドル、日本が1,000万米ドルの拠出を表明しました。
COPの会場は多様性が豊かな場所です。地理的にアフリカや中東が近いため、アフリカや中東出身の方々を多く見かけます。会場にアクセスするためのバッチを受け取る際、レバノン出身の方と一緒になり話をしました。地理的に近いこともあって、レバノンからはこれまでで最大規模の120名をCOP28に派遣する予定だそうです。レバノンは財政的な理由で、再生エネルギーに対する大型投資が進まないそうですが、昨今の原油高の影響で電気コストが高くなっているため、経済的なコストを抑える目的もあり、省エネルギーの取り組みは過去1〜2年間で大きく進んだと話していました。
会場は、カンファレンスルーム、ミーティングルームや各国のパビリオンに加え、レストランやカフェテリアも多くあります。ドバイ万博時に建設された美しい建物が有効に活用されています。ブルーゾーンでは、ドバイで人気の日本スタイルのパン屋「YAMANOTE Atelier」もカフェテリアを提供しています。2013年4月にドバイの高級住宅街のアルサパに第一号店ができ、今ではドバイモールやアブダビ等でも店舗を展開しています。立ち上げたのはドバイに住む1人の女性、ハムダ・アルターニ氏です。彼女は日本を訪れた際、デパ地下のショーケースに並ぶ生ケーキの美しさに感動し、ドバイでケーキ屋をやりたいと考えるようになりました。しかし、ケーキ職人育成や材料の調達の難しさなど、ケーキ事業でスケールすることが難しかったため、日本・サガミベーカリーの協力を得て、ケーキ事業からパン事業に切り替え大成功を収めています。日本人にとっては、日本で購入できる当たり前の日本スタイルのパンかもしれまんが、ドバイに住んでいると貴重な日本の味です。仕事や観光等でUAEを訪れる際は、日本の食が中東でどのように受け入れられているのか知るために、是非「YAMANOTE Atelier」の店舗を訪れてみて下さい。
YAMANOTE Atelier URL:Yamanote Atelier | Taste the Best of Japanese Bakery & Restaurant
引き続きCOP28の様子を皆さまにお伝えしていきます。