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海の幽霊「ゴースギア」に負けるな

海洋生物の命を奪う海の幽霊「ゴースギア」とは

工場排水による水質汚染や海洋プラスチック問題などが原因で、多くの海洋生物の命が危険に晒されています。海洋プラスチックの問題は、5mm以下の小さな粒子になったマイクロプラスチックだけではありません。海に流出してしまった漁網が、生き物の体に巻きつくことで命を奪ってしまう「ゴーストギア(漁具の幽霊)」問題と、その解決に向けて取り組んでいる海外企業の事例をご紹介します。

あまり知られていないゴーストギア問題による影響

ゴーストギアによる影響
ゴーストギアによる影響 出典:The nature conservancy”LOST FISHING GEAR

「ゴーストギア」とは、海で紛失または廃棄・投棄され流出した漁網やロープ、釣り糸など、持ち主の手を離れた漁具(幽霊漁具)のことをいいます。このゴーストギアは、海洋プラスチックごみの少なくとも10%を占めているといわれています。毎年、最大100万トンのゴーストギアが海上で失われたり、放棄されたり、廃棄されたりしているといわれています。そのゴーストギアの多くはプラスチックで出来ているので、劣化することでマイクロプラスチックになってしまいます。

また何十年もの間、朽ちることなく海を漂い続けることでサンゴや藻などの海底を傷つけたり、海洋生物に絡まることで、けがを負わせたり命を奪っています。さらに、これらは海流に乗って世界中へ移動することで、本来はそこに生息していない生物が繁殖するなど、海の生態系を脅かすことも懸念されています。

そしてゴーストギアは生物の命を奪うだけではありません。海洋航行の障害物にもなっており、船舶の推進力や操作性を妨げ、航行を遅延させるといった経済的な損失ももたらしています。

海洋プラスチックに関する関連記事はこちら▼
https://earthsustainability.jp/environment/3055/

ゴーストギア問題に取り組み海外企業3社

このような問題から世界各国では、海への「ゴーストギア」流出を防ぐために、適切な漁具の設計や漁具回収といったさまざまな取り組みが始まっています。ここでは、廃棄される漁網を回収し、新たなアイテムへと生まれ変わらせるアップサイクルの取り組みで、海の脅威となるゴーストギア問題の解決に取り組んでいる企業をご紹介します。

BUREO(アメリカ)

BUREO
引用:BUREO

アメリカ・カリフォルニアに拠点を置くBureo(ブレオ)社。使用ができなくなり海中に廃棄された漁網を回収し、ネットプラス(NetPlus)というリサイクル素材へと再生しています。ほとんどの使い古された漁網はほかに利用道がないためそのまま海に廃棄され、海洋生物に重大な悪影響を及ぼしています。Bureoでは南米の漁業コミュニティから使用済みの漁網を回収し、有害な廃棄物が海に流出することを防ぐ活動をしています。

そんなBureoで再生されたネットプラスは、パタゴニアの帽子のつばやジャケット、コスタ社のサングラス、フューチャー社のサーフフィン、さらにはジェンガのゲームにまで再利用されています。さらにBureoは収集された漁網1キロごとにコミュニティ・プロジェクト基金を納め、地元の非営利団体と恊働して、コンポストセンターや缶とボトルのリサイクル・スポットを設置したり、ビーチ清掃と環境トピックスについて若者を教育する環境教育ワークショップを支援したりするなど、海洋汚染問題に積極的に取り組んでいます。

Waterhaul(イギリス)

Waterhaul
引用:Waterhaul

Waterhaul(ウォーターホール)はイギリス・コーンウォールを拠点とする、海洋生物学者でサーファーのHarry Dennis(ハリー・デニス)が創業した社会的企業です。
Waterhaulの使命は、海洋廃棄物であるゴーストギアを貴重な資源に変えることです。コミュニティグループやNGOと共同して、ビーチや海から漁網を回収することや、ビーチの清掃活動を通じて、プラスチック汚染の最も有害なゴーストギア問題に直接取り組んでいます。

そうして収集した漁網を専門の施設と協力して、ネットを分類、洗浄、細断し、それをペレットに押し出し、スタイリッシュなアイウェアへとアップサイクルしています。海で何十年も原型を留めている耐久性のある漁網から作られているため、「リサイクルと交換」という生涯寿命が保証されているのが特徴です。また、返却されたフレームを再度細断し、リサイクルループに戻す100%のリサイクル率でサーキュラーエコノミーの実現を目指しています。この他にも、英国全土にワークショップを提供し、海洋環境や生態系の価値、資源への廃棄物の概念を伝えることで海洋汚染問題に取り組んでいます。

Bracenet(ドイツ)

Bracenet
引用:Bracenet

Bracenet(ブレースネット)は、ゴーストネットを海から失くす活動に専念するドイツの企業です。パートナーである海洋保護団体等と協力して、海洋生物に危害を与えるゴーストネットを回収し、ブレスレットやリング、キーホルダーなどのアクセサリーへとアップサイクルして販売することで、海洋プラスチックごみの軽減に貢献しています。廃棄された漁網を原料として使用することで、バージンプラスチックの必要性を削減し、有害なプラスチックが世界の海に捨てられることを防いでいます。

Bracenetは、現在までに5トン以上の古い漁網とゴーストネットを新しい製品にリサイクルしてきました。すべての収益の10%は、漁網を回収するパートナーをさらにサポートするために寄付し、海洋と海洋生物保護のための多くのプロジェクトを支援しています。そしてBracenetの各製品は、ネットを元の形と色で使用しているため、海を守るメッセージを広めるための活動にもつながっています。

まとめ

現在の漁業において、ゴーストギアは発生が避けられない副産物となっていますが、漁網は重くかさばるため運搬コストがかかることや、さまざまな素材のものがあり、分別が難しいことなどが課題となってリサイクルが進んでいないのが現状です。

意図しない海洋生物の殺戮をこれ以上防ぐために、取り上げた3社のようなゴーストギア問題に積極的に取り組む企業の活動を取り入れ、漁具の回収・リサイクル率を上げていくことが課題になってくるのではないでしょうか。

また、そのようなリサイクル製品を購入することで活動を応援し、世界で協力して解決へと向かっていく必要があるでしょう。

参照:
https://www.nature.org/en-us/newsroom/ca-ocean-plastic/
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/4452.html
https://www.env.go.jp/nature/biodic/kaiyo-hozen/guideline/05-3.html
https://waterhaul.co/
https://bureo.co/
https://bracenet.net/en/

丸末彩加

丸末彩加

丸末 彩加(まるすえ あやか)。幼少期をアメリカで過ごし、日本と海外どちらの視点も入れながら、楽しく社会問題を解決したいと思っています。趣味は旅行と音楽と食べることです。linkedinでも情報発信しています!
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