気候変動によって私たちが直面している課題には、さまざまなものがあります。2021年に世界経済フォーラムが発表したデータによると、今後10年間で発生する可能性の高いリスクの上位3つは以下のようになっています。
- 異常気象
- 気候変動への適応の失敗
- 人間による環境破壊
環境に関連するものが並んでいますが、これらの環境問題は大きく「公害」と「地球環境問題」に分けることができます。本記事では、「公害」と「地球環境問題」の違いや、「地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)」という概念についてみていきます。

公害と地球環境問題の違い

環境問題と聞くと、熊本県の水俣病、三重県の四日市ぜんそくなどの「公害」を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、今私たち全人類が直面している環境問題というのは、空間的にも時間的にも広がっている地球環境問題と言われるものです。
公害の一例として水俣病を例にとると、熊本県の水俣市にあった新日本窒素水俣工場の廃水にメチル水銀化合物が含まれていたことで起こりました。
このように、公害というのは、特定の企業や特定の有害物質などが原因で起こったものを指し、地域や原因が限定されています。
一方の地球環境問題とは、地球温暖化、海洋汚染、森林破壊、大気汚染、水質汚染など、地域や特定の企業だけでなく、人類全員の活動によって起こってしまったものを指し、空間的にも時間的にも広範囲に及びます。
例えば、空間的な広さでいうと、中国で発生したPM2.5は大気の循環で日本だけでなく世界中に広がっています。また、日本で海に流れたプラスチックがマイクロプラスチックになり、さまざまな健康被害をもたらすことに繋がるかもしれません。つまり、公害に比べて地球環境問題は、影響を地球規模で考える必要があるということです。
また、時間的な広さでは、影響が次世代まで影響してしまうことを指しています。海洋プラスチック問題を例にとると、細かくなってしまった海洋プラスチックは自然分解されることはなく、これから先もずっと海を浮遊し続けることになります。
このように、私たち人類が経済活動を行なった結果、地球規模に広がっている問題のことを地球環境問題といいます。
SDGsウェディングケーキモデル
ではなぜ、気候変動を含めたこれらの環境問題が注目されているのでしょうか?
その理由はこのSDGsウェディングケーキモデルをみていただくことでより理解していただけます。

このモデルはSDGsの17の目標をそれぞれ最下層から「環境(biosphere)」「社会(society)」「経済(economy)」に振り分けたものになります。
この図は、最上部にある経済活動を行うためには、きちんとした生活基盤が必要です。しかし、その生活基盤を整えるためには、そもそも人間が生息できる地球環境があってこそです。
SDGsウェディングケーキモデルについてはこちら▼
また、エコロジー経済学者であるハーマン . E. デイリー氏は、「経済は有限で成長することのない生態系の下位にあるシステムであり、無限に拡大することはできない。」としており、そのための3原則を設けています。
- 再生可能な資源の消費ペースは、その再生ペースを上回ってはならない。
- 再生不可能な資源の消費ペースは、それに代わりうる持続可能な再生可能資源が開発されるペースを上回ってはならない。
- 汚染の排出量は、環境の吸収能力を上回ってはならない。
つまり、経済活動と環境活動を同時に行う必要があることを意味しており、このまま見て見ぬ振りをすれば経済活動はおろか、生命維持すらできなくなるかもしれません。
プラネタリー・バウンダリーとは?
では、現在この地球環境問題はどれほど深刻なのでしょうか?
私たちの人間活動が地球に与える影響や人類が安全に活動できる範囲を科学的に評価する方法として「地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)」という概念があります。
これはスウェーデンにあるストックホルム・レジリエンス・センターの所長だった環境学者ヨハン・ロックストローム氏(現在はドイツのポツダム気候影響研究所に所属)が提唱したものであり、先ほどのSDGsウェディングケーキモデルも彼によって発表されています。

以下の9つに分類され評価されています。
- 気候変動(Climate Change)
- 新規化学物質(Novel entities)
- 成層圏オゾン層の破壊(Stratospheric ozone depletion)
- 大気エアロゾルによる負荷(Atmospheric aerosol loading)
- 海洋の酸性化(Ocean acidification)
- 生物地球化学的循環(Biogeochemical flows)
- 淡水利用(Fresh water use)
- 土地利用の変化(Land-system change)
- 生物圏の一体性(Biosphere integrity)
その中で、緑色の部分は安全域、オレンジ色が外に向かうにつれ、限界に近いことを示しています。また、空欄のものは、現在定量化を進めています。
気候変動は、薄いオレンジ色となっており、限界は越えていないが、ハイリスクな状態にあることが分かります。
もしも、気候変動がこのまま進むと、地球温暖化が進むことで森林火災が頻発し、その結果さらに温暖化が進んでしまう、すると永久凍土が溶けることで地中に埋まっていた音質高がガスが排出されてしまう、という不可逆的な変化が起こると言われています。
地球に住む一人間として、この概念は把握しておく必要があると思います。
いかがでしたでしょうか?
地球環境問題は、私たち人類全員が直面している課題であり、私たちは被害者であると同時に、加害者でもあります。
一人一人の意識が変化し、普段の生活、企業活動を通じて限界点を越えないよう協力していく必要があるのではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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参照:
https://www3.weforum.org/docs/WEF_The_Global_Risks_Report_2021.pdf
https://www.stockholmresilience.org/research/research-news/2016-06-14-the-sdgs-wedding-cake.html
https://www.stockholmresilience.org/research/planetary-boundaries.html
https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/47/1707.html