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サステナビリティとファッション業界

ファッション業界は自社基準ではなく、国際基準の情報開示を

ファッション業界は、大量生産と大量廃棄を繰り返し、長いサプライチェーンの中で多くのエネルギーや水の消費、染色による水質汚染など環境に負荷をかけてきました。しかし、これらの問題が徐々に明るみに出たことで、課題意識を持つ企業が増えています。その取り組み方法はさまざまです。自社の基準で情報開示を行うブランドや、第三者機関の評価に沿って情報開示を行っているブランドもあります。

CDPに沿った情報開示

ファッション業界もサステナビリティに対する取り組みを強化していますが、その中でもCDP(Carbon Disclosure Project)に沿って情報開示を行っている欧州のアパレルブランドについてご紹介します。

CDPとは、英国・ロンドンで設立された非営利団体です。投資家、企業、国家、地域、都市が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営しています。「気候変動」「水」「森林」の分野について、年に1度世界の主要企業へ質問書を送るなどの活動をしています。企業から得られた回答から、企業の気候変動に対する活動を、最高位を「A」として以下A-、B、B-、C、C-、D、D-、の8段階で評価し、結果を機関投資家向けに開示しています。

CDPに沿った情報開示を行っているアパレルブランド

Ted Baker

tedbaker
引用:tedbaker

Ted Bakeは環境や人権に配慮した製品づくりに取り組むファッションブランドです。

環境負荷を軽減するために積極的に取り組んでいる企業で、現状の課題から目標を設定し、取り組みや経過、成果を数値化してレポートで情報を開示しています。2021年のCDP気候変動スコアはBでした。

同社では、製品の材料を2030年までに100%持続可能なものを調達する目標設定をしています。2024年までに綿はオーガニックコットンやリサイクルコットン、BCIコットンにすることを表明しています。また、2025年までに革はLWGまたは同等の認定なめし皮工場から調達し、再生セルロースはFSCまたはPEFC認証森林から調達。2030年までにポリエステルを100%リサイクルすることを目標としています。

また、地球の環境負荷を軽減するため、2030年までに、自社の事業活動における排出量を100%ゼロにし、サプライチェーンでの排出量を46%削減するなどの目標を設定しています。取り組み内容と達成度を、具体的な数字でレポートしています。

ほかにも人権に配慮した取り組みとして、毎年「サプライチェーンの透明性と現代の奴隷制に関する声明」を発表し、サプライチェーンにおいて、強制労働、奴隷労働、人身売買、児童労働はせず、容認している国や地域、企業とは取引しないことを宣言しています。

「ジェンダー・ペイ・ギャップ・レポート」では、企業の男女の賃金格差の情報を、在籍年数別や役職別などの区分ごとに詳細に開示し透明性を確保しています。

Super dry

super dry
引用:corporate superdry

Super dryは2030年までに地球上で最も持続可能なグローバルファッションブランドになること目指しており、2021年のCDP気候変動スコアはA-でした。

環境負荷を軽減するため、材料・炭素排出量・従業員に関して「3つの戦略と目標」というレポートで環境への姿勢と取り組みを開示しています。「環境負荷のかからない材料」の戦略では、服の素材、パッケージ、ウォーターフットプリントの項目別に、目標と取り組み内容、達成期限が具体的に明記されています。また、取り組みによる主な成果が具体的な数字で掲載されています。

洋服の3枚に1枚の割合で使用されているオーガニック素材、低負荷素材、リサイクル素材の詳細な特徴と、地球への環境負荷の軽減についての成果を丁寧に説明しています。また、各素材の現状の使用量と目標を具体的な数字で明示しています。

動物倫理やジェンダー、サプライチェーン、人権など18の項目に関しても企業の姿勢と取り組みなどの情報を具体的に公開し、理解と共感を得る姿勢を明確にしています。

H&M

H&M
引用:h&m group

H&Mは持続可能な生産と活動を積極的に実践し、常に革新を追求しているファッションブランドです。CDP気候変動スコアは、2020年はA、2021年はBとなっており、また気候変動に関する情報開示だけでなく、水セキュリティー(B)や森林(D)に関しても回答を行っています。

H&Mでは、使用する材料は環境に負荷をかけず、リサイクルしやすい天然繊維を持続可能な方法で調達しています。布切れや古着でウールやジーンズを作り、廃棄されたペットボトルや漁網で合成繊維を作るなど、リサイクルしています。ワイン造り後のブドウで革、収穫後のバナナの葉や稲の藁など廃棄物で生分解性の繊維などの新素材を積極的に採用。資源を有効活用し、持続可能で環境に負荷をかけない製品づくりを追求しています。

このほか、店舗やオフィス、家具の設置も持続可能な方法で建設できるよう研究中しています。H&MグループのパートナーのReally社は、テキスタイルの繊維やほこりからインテリアパネルを作成しました。このパネルは、H&Mの店舗のインテリアとして使用されています。またスウェーデンのオフィスでは、タイルやコンクリートに代わるバイオセメントを床に使用する試みを始めました。カーボンフットプリントを大幅に削減することが期待されています。

H&Mグループには気候関連の問題に取り組む専任チームがあることも特徴的です。WWF Climate SaversやUNFCCC Fashion Charter for Climate Actionsなど外部の専門家や科学者と協力して、気候変動対策の目標を設定しました。 サステナビリティパフォーマンスレポートでは、目標達成までの進捗状況や課題、学習について、オープンかつ透過的に報告されています。より良いビジネスを行い、ファッション業界に有意義な変化をもたらすために、企業責任として実践しています。

最後に

今回はCDPに沿って情報開示を行っているアパレルブランドについてご紹介させていただきました。自社で基準を設け、透明性を確保しようとする動きがあることは素晴らしいことだと思いますが、第三者による評価に沿って情報開示を行うことでより透明性を高め、環境への負荷を低減させることができるように思います。

また日本のアパレルブランドと比較すると、欧州の方が動物倫理や人権に関する情報開示を積極的かつより具体的にしており、日本のファッション業界が学べる点が多くあります。

環境や動物、そして私たち人間に配慮されたエシカルなブランドが増えることで、消費者の選択肢の幅を広げることができます。今回ご紹介したような企業が国内でも増えることを期待します。

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丸末彩加

丸末 彩加(まるすえ あやか)。幼少期をアメリカで過ごし、日本と海外どちらの視点も入れながら、楽しく社会問題を解決したいと思っています。趣味は旅行と音楽と食べることです。linkedinでも情報発信しています!

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