サステナビリティと和紙|伝統技術が持つ持続可能性とそのメリット
和紙は襖や障子に使われているように、日本人の生活に深く根付いてきました。現在その和紙は、廃棄野菜を使用してカラフルなノートや、衣類や靴といった身近なものに姿を変えています。また環境負荷が少なく、サステナブルな素材として国内外で注目を集めています。今回は、日本国内で和紙を使用した商品を開発している3社についてご紹介します。
和紙を使用することのメリット
和紙を使用することのメリットはいくつかあります。今回ご紹介する商品には、和紙漉きを使用した伝統的な技法を用いたものがあり、伝統を守ることに繋がっています。
また、衣類や靴で使用されている原料は、フィリピンなどが原産のマニラ麻を使用しています。マニラ麻は、苗を植えて3年という短いサイクルで5〜6mに成長し、環境負荷の低い植物なので、サステナブルな素材として海外でも注目されています。
さらに、繊維を拡大してみると無数の穴があり、衣類や靴の素材として利用することで、通気性や吸水速乾性、消臭性など、さまざまな機能を発揮します。
廃棄野菜から生まれたFood Paper
福井県越前市にある越前和紙の老舗工房である「五十嵐製紙」は、廃棄される野菜や果物からfood paperを作っています。これらの商品は、環境に優しい紙文具ブランドとして注目されています。
このfood paperは、本来廃棄される野菜や果物を使用していることから、世界で問題となっているフードロスを減らす取り組みの一つとしても注目されています。現在は、ニンジンやパプリカ、ブドウなど、12種類の食材を使用して作っているそうです。
2022年7月20日〜7月24日に名古屋のFabCafeにて展示がされていました。実際に手にとって見て参りました。とても手触りの優しいメッセージカードでした。また、匂いも嗅いでみましたが無臭でした。
メッセージカードだけでなく、B5サイズのノートや小物入れなども展示されていました。小物入れはメッセージカードとは違い分厚く作られており、柔らかい和紙のイメージとは異なる印象を持ちました。
和紙100%の服「WASHI-TECH」
岩手県の一関市藤沢町に自社工場をもち、90年以上に渡って縫製業を営んできた「和興」は、和紙を使用した自社製品「WASHI-TECH」を開発しています。シャリ感と滑らかさのある独特な風合いを実現させた本製品は、2020年1月にフィレンツェで開催されたファッション業界を牽引する多くのブランドが翌年の新作モデルを発表し、 また各国からそれを買い付けるために多くのバイヤーやプレス関係者達が一同に集うメンズファッション世界最大の展示会である「Pitti Immagine Uomo 97」にて、次世代のサスティナブル素材として高い評価を得ています。
ファッション業界では、過剰生産や在庫処分のために行われる焼却が大きな問題です。焼却によって、廃棄過程でも二酸化炭素を排出するという悪循環を生んでいました。しかし、「WASHI-TECH」は100%和紙から作られているので、土に還ることができます。着なくなったものを土に埋めると、約3ヶ月で微生物による分解が始まり、半年後には完全に土に還ります。
和紙布を使用したシューズ
最後にご紹介するのは、富山県で1891年に創業した織物工場である細川機械株式会社のファクトリーブランドである「ORIGAMIX(オリガミクス)」です。
見た目はどれもシンプルですが、通気性や消臭性といった和紙の機能を最大限に引き出しています。また、和紙と聞くと「紙」をイメージするので、どうしても破れやすいのではないか?と心配になるかもしれません。しかし、見た目はコットンキャンバスに近く、また自社の技術を生かし、和紙糸を補強するために細いポリエステルの糸を使用することで、摩擦に強い靴作りが可能になっています。
最後に
和紙と聞くと、伝統的な「紙」をイメージする場合が多いです。今は廃棄されてしまう野菜や果物から作られた和紙があることや、衣類や靴に形を変化させていることを知りました。形を時代に合わせながら変える姿勢というのは、伝統工芸に限らずどの業界でも求められます。これから企業がサステナビリティとビジネスを統合し、事業を展開する動きは加速的に拡がっていくでしょう。
参照:
Material Driven Innovation Award 2022 Exhibition ~素材を起点にWell-beingを考える~ 名古屋巡回展 – FabCafe Nagoya