サステナブルなオーガニックコットンを選ぼう!認証機関と取得企業を紹介
私たちが日々着ている洋服には、さまざまな素材が使用されています。天然繊維には綿や羊毛、リネン、シルクなどがあり、化学繊維には合成繊維であるポリエステル、ナイロン、アクリルなどがあります。
化学繊維の多くは石油由来で、洗濯をすることで繊維が抜け落ち、排水と一緒に海に流れ出たものが海洋プラスチック問題を引き起こす原因の一つになっています。
海洋プラスチック問題に関してはこちら▼
天然繊維は環境にやさしいのか?
一方の天然繊維が環境にやさしいかといえば、そうではありません。
コットンは植物由来で環境に優しいイメージがありますが、生産過程で大きな環境負荷が生じます。特に、綿花の栽培で大量の水資源が消費される点が問題です。
綿花の栽培で大量の水資源が消費される
ICACの報告によれば、1キロのコットンを生産するのに平均1,931リットルの灌漑用水と6,003リットルの雨水が必要です。ただし、水の使用量は生産地ごとに異なり、52%の地域では雨水を利用し、残りの地域では灌漑を利用しています。
水資源が乏しい地域における綿花栽培のリスク
綿花はインドや中央アジアなど、水資源が乏しい地域で盛んに栽培されています。これらの地域での過剰な水利用は、川や湖の水位低下や生態系への影響を引き起こす可能性があります。綿花は特に「水リスク」の高いエリアで栽培される割合が高く、57%がこうした地域に該当するのです。
出典:Aqueduct | World Resources Institute
綿花の栽培に利用される農薬の問題
また、綿花の栽培では多量の農薬が使用されており、世界の耕作地面積の約2.5%に過ぎない綿花栽培地で、世界の殺虫剤の16%、農薬の6%以上が消費されています。
さらに、綿花栽培地域では多量の農薬の使用に加えて、児童労働や債務労働といった問題も発生しています。
サステナブルコットンとは
そこで現在注目されているのが、環境や人権に配慮された方法で栽培されるサステナブルコットンです。
サステナブルコットンとは、「環境への影響を最小限に抑えながら、生産レベルを維持できる方法で栽培され、長期的な環境の制約と社会・経済的な問題に対応しながら生産者の生計とコミュニティを支えることができるもの」と定義されています。欧州ではこれらを選び消費する人が増えており、わかりやすいよう認証を取得するアパレル会社が増えています。
日本でも企業や団体、消費者を巻き込み、サステナブルコットンの普及を進めるイニシアチブである「日本サステナブル・コットン・イニシアチブ」が昨年2021年の5月に設立されています。
サステナブルコットンの種類
サステナブルコットンにはさまざまな種類がありますが、ここでは主な3種類を紹介します。
オーガニックコットン
オーガニックコットンは、以下の条件を満たすサステナブルコットンの一種です。
栽培過程の条件
- 認証機関の認証を受けた農地で2~3年以上継続して生産される
- オーガニック農産物の生産基準を遵守する
- 使用する農薬や肥料について厳格な基準を守る
製造工程の条件
- 全製造工程においてオーガニック原料のトレーサビリティと含有率を確保する
- 化学薬品の使用による健康や環境への負荷を最小限に抑える
- 労働安全や児童労働に関する社会的基準を守る
水使用量の訂正と補足
2023年11月17日まで、オーガニックコットンの生産に必要な淡水量は従来のコットンに比べて91%少ないとされていました。しかし、この表現は次のように訂正されました。
テキスタイル・エクスチェンジの2014年の調査によれば、オーガニックコットンの生産で使用されるBlue Water(灌漑や地下水の汲み上げ等)は、従来型の生産方法に比べて91%少ないことが確認されました。しかし、この結果は特定の調査結果に基づくものであり、すべての農園で同様の結果が得られるとは限りません。
オーガニックコットンの生産は手間とコストがかかるため、全体の1%程度しか生産されていません。しかし、近年はSDGsの意識の高まりにより注目され、生産量も増加しています。無印良品など日本企業でも取り扱われています。
参照:
Life Cycle Assessment (LCA) of Organic Cotton (Textile Exchange 2014)
ベターコットン(BC)
ベターコットン、通称BC(Better Cotton)は、2005年に開始されたサステナブル・コットンの推進プログラムです。これは、次に紹介するオーガニック繊維の認証制度(GOTS、OCS)とは異なり、主にコットンを調達する企業がBCのクレジットを購入することで、持続可能な綿花栽培をサポートする仕組みです。
クレジットの仕組み
企業が購入したクレジットの費用は、BC事務局を通じて、環境や社会的な課題に取り組む農家のトレーニングなどに使用されます。これは、生産や流通の透明性確保よりも、現場の改善と農家の支援に重点を置いた取り組みです。
基準と参加の容易さ
BCの基準は、水や農薬・殺虫剤の効率的な利用、社会・経済的配慮など幅広い事項をカバーしていますが、オーガニックコットンとは異なり、農薬の使用が許可されています。また、「マス・バランス」という仕組みを通じて、トレーサビリティが完全には確保されなくても参加できるため、環境負荷を低減しながらも参加しやすいシステムになっています。
生産と普及状況
BCは世界のコットン生産量の約20%を占めており、多くの企業がその調達に取り組んでいます。トレーサビリティの強化が求められていましたが、2023年10月から新しいトレーサビリティ制度の運用が開始され、今後の発展が期待されています。ただし、GOTSのような加工時の環境配慮を示す仕組みではなく、マス・バランスでの流通も継続される点には注意が必要です。
リサイクルコットン
リサイクルコットンは、紡績工場や縫製工場で廃棄予定だった裁断くずや落ち綿を再利用したものです。これらの繊維を細かく裁断して新しい糸にすることで、新しいコットンの消費を抑え、環境に優しいコットンとなります。
オーガニックコットンの認証機関
オーガニックコットン認証には、農業分野(畑から原綿まで)のものと、テキスタイルの製造加工分野(紡績から製品まで)を認証する2種類があります。
農業分野の認証は、栽培する畑とそこで収穫される綿花が認証の対象となります。この基準は、それぞれの国や地域が定めた基準が使用されています。
テキスタイル分野の認証には、いくつか種類があります。
GOTS認証
GOTS(グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダード)は、テキスタイル(繊維製品)を加工するためのオーガニック基準です。糸、生地、衣類など広範な繊維製品が対象となります。この認証は、ウールやコットン、絹などの原料繊維がオーガニックであるだけでなく、原料の栽培から製品の製造、梱包、輸送、保管など、製品が消費者の手に届くまで環境に配慮された商品であることを証明します。
また、環境への配慮だけでなく、農園から加工段階の工場、販売までのサプライチェーンを追跡し、労働の安全性や児童労働が行われていないなど、人権に対してまで管理されています。
OCS認証
OCS(オーガニック・コンテント・スタンダード)認証は、トレーサビリティに加え、製品が95%以上オーガニックコットンを使用していること、また製品の製造、梱包、ラベリング、取引、販売過程が基準に沿っていることを証明します。
OCS認証は、オーガニック繊維を含む製品の生産・製造に対する認証であり、原料の収穫から認証製品ができるまでの全ての工程(工場、加工所、倉庫など)において、製品の混合や汚染がないように管理された体制を整え、製品のオーガニック繊維の含有率を最終消費者へ保証する基準になります。
認証を取得している企業
今回は、オーガニックコットン商品を扱っているイギリス発の企業3社と日本の企業2社をご紹介します。
Thought Fashion
まずは、イギリスのThought Fashion。女性・男性の衣類や靴などを扱うファッションブランドです。
製品で使用している綿花はGOTS認証を受けており、環境だけでなく人権への配慮も行っています。
実際に、世界中の労働者の権利を尊重するNGOであるEthical Trading Initiative(ETI)のメンバーになっています。
また、可能な限り飛行機での輸送は避け、環境にやさしい方法を採用するなど、環境負荷を減らすためさまざまな取り組みを行っています。
Beaumont Organic
こちらはイギリス発の女性向けアパレルブランドです。
扱う商品のうち76.5%にオーガニックコットンを使用しています。商品それぞれの項目で材料について、コットンの場合はCertificationの項目でGOTS認証がされていることなどを紹介しています。
しかしそれだけでなく、リサイクルされたものも活用するなど、環境への配慮も徹底しています。
&SISTERS
オーガニックコットンと聞くと、アパレルブランドを思い浮かべる方が多いと思いますが、女性の生理用品にも使用されており、日本の薬局でも目にする機会が増えました。
イギリス生まれの&SISTERSは、女性の生理関連の商品を扱っています。
ナプキンやタンポンだけでなく、生理用の下着にもオーガニックコットンを使用しており、GOTS認証を取得しています。
また、B-corpの認証や売上の一部を寄付するなど、環境、人権、企業の透明性などにも力を入れています。
無印良品
無印良品では、2018年より衣料品のすべてにオーガニックコットンを使用。2019年秋冬商品からは、生活雑貨に用いられるファブリックについても全てオーガニックコットンに切り替わっています。
2023年からは「社会と環境に配慮された綿を100%調達する」ことを目標とし、オーガニックコットンに限定せず、選択肢を増やすことで安定した原料調達を目指しています。
繊維長が35mmを超えるコットンは超長綿とよばれ、丈夫で手触りの良い理想のコットンです。商品開発者は超長綿の生産量を少しずつ増やすために、実際にコットン農場へ足を運び、農家との関係を深めています。
参照:株式会社良品計画
しまなみコットンファーム
しまなみコットンファームは、数少ない日本の綿花栽培農家です。その上、スーピマ綿やスビン綿を取り扱っており、これは世界の綿花の数%にしか流通していない最高級品種。
化学物質は一切使用せずひとつひとつ手で丁寧に収穫されたコットンは、タオルやストールの素材として使用されています。
参照:しまなみコットンファーム
最後に
サステナブル・コットンを推進する取り組みは、イギリスなど特にヨーロッパを中心に急速に進展すると予想されています。その背景には、環境や社会に配慮した製品を求める社会の意識と、新しい消費行動の「選択」があります。
こうした取り組みには、株主や投資家、金融機関からの注目が集まっており、実質的な効果があり、第三者を交えた主体的で明示的な取り組みが求められています。また、これらの取り組みが正しく情報開示されているかどうかも重要です。これらの要素が、企業の評価や投資判断の大きなポイントとなっています。
消費者の間でも、こうした意識と要望が高まっています。特に繊維産業において、アジア市場の消費者からサステナブルコットンを求める声が強まれば、現在のコットン製品生産に関連する多くの問題は解決に向かうでしょう。
企業にとって、環境保全や社会貢献は単なるイメージアップの手段ではなくなりました。環境破壊による異常気象や新型ウイルス感染症は、企業活動に直接影響を与える重大な問題です。
これに対応するためのサステナビリティの確立は、国際市場でビジネスを行う企業にとって必須条件となっています。特に、コットンを扱う繊維産業における水環境の保全と持続可能な利用は、重要な取り組みの一環です。
消費者の私たちも普段何気なく商品を選んでいますが、これからはオーガニックコットンと記載されているもの、可能であれば認証を取得しているものを購入することで、SDGsにも貢献し、未来に対してより良い選択ができるのではないでしょうか。
参照:
Home – GOTS – Global Organic Textile Standard
Home Page – Textile Exchange
Our members | Ethical Trading Initiative
Soil Association
British Sustainable And Ethical Fashion | Beaumont Organic
Sustainability Should be a Joy | Thought Clothing
The Original Silicone Menstrual Cup and Organic Period Care | Mooncup
JOCA(日本オーガニックコットン協会)