ESG投資家必見!CDP(Carbon Disclosure Project)の評価基準とは?
環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)に配慮している企業を選んで投資を行うESG投資がここ数年注目されており、企業はそれらの非財務情報を開示することが求められています。本記事では、ESG投資をする際の基準の一つとして注目されるようになったCDPについてご紹介します。
CDPとは?
CDP(Carbon Disclosure Project)はロンドンに本拠を置くNPO団体で、企業や自治体による環境への影響を把握するため、世界の企業に対して二酸化炭素の排出量や気候変動への取り組みに関する質問書を送り、集めた情報を開示しています。これらの開示情報は気候変動に関心のある機関投資家らの支持を受け年々拡大しており、企業に投資する際の基準の一つとして重視されるようになりました。
質問書は企業、国家、地域、都市を対象としており、日本では2005年から活動を行っています。
現在、企業に対する質問書には、気候変動・水セキュリティ・フォレスト(森林)の3種類があります。これらに加えて、自社のサプライチェーンの取り組みについても把握したい場合は、サプライチェーンに関する質問書もあります。これらの内容は毎年投資家や企業、政府関係者などからのフィードバックを元に改訂されています。
2003年に開始したCDPですが、2021年現在13,189社が情報を公開しており、その数は年々増加傾向にあります。
CDPの3つの質問書
企業に対する質問書には、気候変動・水セキュリティ・フォレスト(森林)の3種類があり、それぞれの質問書には全体に対する質問+自社が所属している業界専門の質問内容があります。
気候変動質問書
現在の温室効果ガスの排出量や削減目標についての情報開示、気候変動によって企業が直面するリスクと機会に対する理解促進を目的としており、TCFD賛同にも対応する質問構成となっています。以下の内容が含まれています。
- ガバナンス
- リスクと機会
- 事業戦略
- 目標と実績
- 排出量算定方法
- 排出量データ
- エネルギー
- 追加指標
- 検証
- カーボン プライシング
- エンゲージメント
水セキュリティ質問書
2030年までに世界は深刻な水不足になると言われており、水資源に関する現状やビジネスへの影響に関して、企業や投資家に対する理解促進を目的としています。またCEOウォーターマンデート・ガイドラインに沿う形となっています。主な質問はそれらに対する取り組みの手順、ビジネス戦略、今後の目標に関する質問になっており、以下の内容が含まれています。
- 水への依存性と水会計尺度の報告方法
- バリューチェーンとのエンゲージメント活動
- 事業への影響
- リスク評価手続き
- リスク、機会、およびそれへの対応
- 施設レベルの水会計データ
- 水ガバナンスと事業戦略
フォレスト質問書
こちらは森林に関する質問書ですが、森林そのものに関してではなく、大豆やパーム油、木材、畜産などの原材料が森林破壊をもたらしていないかについて問われます。その中で、自社の事業に関連するもののみに対して回答します。これらの原材料に関わる商品は森林リスク商品と呼ばれており、多くの商品が依存しているので、森林減少に対する取り組みは投資家が注目している分野でもあり、以下の内容が問われます。
- 持続可能な生産および消費に関する目標
- 事業への影響
- リスク、機会、およびそれへの対応
- モニタリングおよびトレーサビリティシステム
- 検証
- ステークホルダーイニシアチブとの協働
CDPスコアとは
CDPは企業から回収した情報を精査し、各企業にスコアをつけます。これらはA~Fの5段階で評価されます。
A | 自社の現状をよく分かっており、最善策を講じている。また、その対策についても十分な説明をすることができると判断され、最も優秀と判断された企業に与えられる評価。 |
B | 環境リスクやその影響に対して対策を講じており、気候変動によって起こるリスクをなくそうとしている |
C | 事業で環境課題への影響を考慮し、環境問題に関する認識を深めている段階 |
D | 質問書に解答しており、データの信頼性と品質の向上を進められている一方で、スチュワードシップに向けた努力が未成熟 |
F | CDPの質問書へ未回答 |
これらのスコアは、3つの質問書それぞれに対して行われます。2021年に気候変動質問書でAランクに選ばれた企業は世界全体では201社、そのうち日本企業は55社、水セキュリティ質問書では全体で118社、日本企業は37社。フォレスト質問書はまだまだ少ないのが現状です。
企業スコア一覧はこちら(CDP英語サイトへ)
また、このCDPスコアは、Googleで企業の株価を調べると表示されるようになっています。
プライム市場へ上場する企業を対象に
また、CDPの情報開示は、今年4月以降にプライム市場へ上場する企業1841社全てを対象に情報開示を促しています。対象となる企業はこちらのリストに記載されています。
また、現在の気候変動・水セキュリティ・フォレスト(森林)の3種類の質問書に加えて、今年から「生物多様性」を加えた1つの統合報告書を企業に送付すると発表しました。2025年にかけて徐々に深掘りしていくそうです。
この生物多様性の質問書は、TCFDの生物多様性版とも言われている「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」や、科学に基づき目標設定を行う組織であるSBNTが定める「自然SBTs(SBTs for Nature)」などに沿った形になるそうです。
CDPへの回答は強制ではなく任意ではありますが、企業に対する情報開示の圧力は今後さらに強まると考えられます。
最後に
いかがでしたでしょうか?
CDPでAにランキングされることはもちろん大切で、目指すべきゴールだと思います。しかし、はじめからAを目指すのではなく、まずはDを目指す、回答してみることで自社の現状を把握することが持続可能な社会に向けてできる最初の一歩なのではないかと感じました。
参照:
Home – CDP
Companies scores – CDP
Home – CDPジャパン
グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン
Corporate Water Disclosure Guidelines (2014) – Corporate Water Disclosure Guidelines