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観光大国・トルコが取り組むサステナブル・ツーリズム

観光大国・トルコが取り組むサステナブル・ツーリズム

アジアとヨーロッパの境界に位置し、東と西を繋ぐ交易の都市として繁栄した歴史を持つトルコ。温暖な気候、穏やかなターコイズブルーの海、美しい山々、壮大な遺跡と世界三大料理の一つであるトルコ料理で多くの観光客を惹きつけています。トルコは、地域によって異なる気候帯と変化に富んだ地形に恵まれており、豊かな生物多様性を保有しています。アンティークな街並みや芸術的で高品質な工芸品など、独自の文化も魅力的です。2023年には、トルコへの外国人観光客数は過去最高値となる5,670万人を記録しました。(2024年2月5日時点)

さらに、トルコは国を挙げてサステナブルツーリズムを推進し、世界で最もサステナブルな旅行先の一つとなりました。6000軒以上のホテルが持続可能性の基準を満たしており、エコツアーも充実しています。太陽光発電を活用し、二酸化炭素排出ゼロを目指して運営するキャンプ場でのエコロジカル・キャンプや、泥や石など自然の材料で建てられた住居があり、動物を自然飼料で飼育している農場で農業技術や工芸を学ぶエコロジカル・ファームなどが楽しめます。

本記事では、世界的な観光大国であるトルコがどのような取り組みによって世界の模範となる持続可能な観光地となったのかを解説します。

世界初のGSTC協定締結国

トルコの国旗

トルコは、COVID-19感染症の拡大により大きな打撃を受けた観光業の業績を改善するため、さまざまな取り組みを行ってきました。旅行者の間に「今年はサステナブルなホテルに泊まりたい」「旅行先でのオプションを検討することで現地に住む人々や経済の助けになりたい」などの要望があり、環境への意識が高まっていることを受けて、持続可能性と観光を共存する方法を模索していました。

トルコは、2022年に世界で初めてグローバル・サステナブル・ツーリズム協議会*(GSTC:The Global Sustainable Tourism Council)と政府レベルで連携協定を結んだ国です。この3年間の協定により、トルコの観光業を持続可能な観光として再構築するための「国家的サステナブル・ツーリズムプログラム」が設立されました。観光地、ツアーオペレーター、宿泊施設を含むすべての観光事業を対象として基準が取り入れられています。このプログラムは、宿泊施設が世界的に認められた42の基準からなる「サステナブル・ツーリズム認証」を取得することを目的としています。認証取得までの過程において、宿泊施設は毎年行われる第三者による評価を受けます。このような基準の設定、評価、認証制度を通じて、施設は継続してサステナビリティに取り組み、改善することができます。GSTCは、サステナブル・ツーリズムの国際市場においてトルコが「最強のライバル」であると世界中にアピールすることで、トルコの持続可能性への取り組みを加速させています。

GSTCとの協定では全ての宿泊施設に対して2023年から2030年末までに3段階の計画が義務付けられており、2030年末には全ての宿泊施設が完全なサステナブル・ツーリズム認証を得る予定です。

第1段階:2023年末までにGSTC基準14項目を満たす
第2段階:2025年末までにGSTC基準28項目を満たす
第3段階:2030年末までに完全な認証を得る

*グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会:持続可能な旅行と観光のためのグローバルな基準を設定し、管理する国際非営利団体

100万台以上のホテルベッドが持続可能

ホテルベッド

2023年11月にロンドンで開催された「ワールド・トラベル・マーケット*(WTM:World Travel Market)」と同時期に発表された数字によると、トルコではすでに100万台以上のホテルベッド(1,044,189のベッドを有する7,500以上のホテル)がサステナブル・ツーリズムの認証を受けています。トルコでは、宿泊施設が環境や社会に配慮することが法律で義務付けられており、サステナブル・ツーリズムの推進を必須としている世界でも数少ない観光先進国の一つです。トルコの人気観光地であるアンタルヤで1,144、イスタンブルで966、ムーラで639、イズミルで488の宿泊施設が認証を受けています。(2023年11月6日時点)

 *ワールド・トラベル・マーケット:英国ロンドンで毎年11月頃に開催されるヨーロッパ最大級の旅行観光関連の見本市。世界158カ国が参加している。

トルコのサステナブル・ツーリズムの評価基準

トルコのサステナブル・ツーリズム

トルコでは、宿泊施設の評価は以下の4つの基準に沿って行われています。

宿泊施設としてどのようなサステナブルな活動をして、長期的な価値を創造できるかを評価します。

  1. 持続可能な経営
    サステナビリティ認証取得に向けて第一に施設が行うことは、効果的な持続可能性の方針を打ち出し、具体的な行動を計画することです。事業を促進するためのプロモーション等の企画、ステークホルダーとの情報共有、従業員への研修実施など多方面での作業が必要になります。
  2. 文化的影響
  3. 社会経済的影響
    宿泊施設の文化的・社会経済的影響についても評価されます。宿泊施設本来の役割を果たしながら、文化遺産を保護し、宿泊客と周辺地域文化との交流を深めることが求められています。また、実践的な働き手を採用すること、観光客の購買意欲を促進させること、起業家支援などで地域経済を支えて地域の繁栄に貢献することが期待されています。
  4. 環境影響
    施設周辺の環境への悪影響を最小限に抑えつつ、利益を最大化することを目指しています。
    さらに、地元やフェアトレード認証の商品や食材を優先的に使用すること、省エネルギーと節水に努めること、リサイクルの実施などの要件を満たすことも求められています。

トルコのサステナブル・ツーリズムの目的

トルコのサステナブル・ツーリズム

トルコのサステナブル・ツーリズムプログラムは、文化遺産の保護と生態系や自然を安全に保全しながら、地域住民の社会的・経済的利益を最大化し、中長期的にツーリズム事業を継続できることを目的としています。さらに、大気や土壌汚染、水質汚濁などの環境負荷を減らすための取り組みを行い、限りある資源の使用を最小限とし、環境に配慮する事業モデルを実現しようとしています。

トルコは、観光産業の成長に尽力するのと同時に次世代のために国の資源を保護することにも努めています。

トルコは観光大国としての先駆的なプロモーションと独自のブランディング活動を年々拡大しており、その観光と文化の影響力は世界中に及んでいます。

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眞鍋奈穂子

眞鍋 奈穂子(まなべ なおこ)ライター/翻訳者、 企業や研究機関で技術翻訳等に従事したのち、趣味のピラティスがきっかけでライターとして活動を始める。温泉旅館とクサガメが好き。

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