脱炭素社会の実現へ|断熱性能義務化と建築物省エネ法の影響
建築物省エネ法とは
「建築物省エネ法」の正式名称は、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」と言います。2015年7月8日に公布され、建築物のエネルギー消費量の性能を向上させるため、住宅以外の一定規模以上の建物に対し、消費性能向上計画の認定制度の創設といった措置が求められるようになりました。
2022年6月13日、国内の建築物の断熱性能を義務化し木材利用を促進するため、建築物省エネ法が改正されました。
改正された背景
改正された背景には、2050年カーボンニュートラルの実現という目標があります。2030年までに温室効果ガスを2013年と比較して46%削減し、国内のエネルギー消費量の約3割を占める建築物分野での取り組みが急がれています。
今回の改定は、省エネ対策を行いつつ、国内の木材需要の約4割を占める建築物分野における取り組みも求められています。
改定後の変化
今後建設される新築住宅・被住宅には、省エネ基準「断熱等級4」の適合が義務付けられ、2025年以降はこれを下回る建物は新たに建てられなくなります。「断熱等級4」とは、壁や天井、開口部も断熱を行うことが求められます。具体的には、グラスウールなどの断熱材を屋根裏に20㎝、壁に10cm程度、サッシはアルミサッシのペアガラスを使うことで実現できます。
この基準は海外と比較するとまだ緩いそうです。しかし、冷暖房のためのエネルギー使用量の削減はもちろん、ヒートショックなどの健康被害の低減にも繋がると言われています。また、木材を利用することで建築時の二酸化炭素の排出量削減、そして炭素が固定されるといったメリットがあります。
今後の動き
2022年4月1日より「断熱等性能等級5」および「一次エネルギー消費量等級6」が施行されました。2022年10月からは断熱等性能等級6・7の施行が決まっています。2025年には、一次エネルギー消費量、「断熱等級4」への適合義務化される予定です。
カーボンニュートラル実現に向けて
専門家によると、2050年までにカーボンニュートラルを実現するためには、断熱等級6にソーラーパネルを載せるレベルでないと難しいそうです。しかしその一方で、等級4の基準を満たしていない既存の建物は8割に上ります。これらの断熱改修も急がれます。
欧州に目を向けてみると、例えばドイツでは、2008年から建物の年間のエネルギー消費量とCO2排出量の表示を義務付ける「エネルギーパス制度」と呼ばれるものがあり、不動産売買でも指標の一つとなっています。欧州は、使用する電力を再生可能エネルギーに変換しただけでなく、建築物の断熱化も同時に行ったことで成果を上げています。
日本では、住宅性能を評価する制度はありますが、エネルギー消費に特化したものはありません。今後どのような方針が出されるのか注目が集まっています。今回の改正により、消費者の関心が高まり、脱炭素社会実現に向けた一歩になることを期待します。