グリーンビルディング認証とは?取得するメリットや事例を紹介
世界には、さまざまな認証機関があります。
中でも、環境に対して配慮していることを証明するものは、企業のイメージアップにも繋がっており、今後はより多くの消費者が注目していく重要な要素になっていくと予想されます。
例えば、持続可能な農業・漁業を行っているかを認証するMSC認証、持続可能な観光を行っているかを認証するGSTC基準、持続可能な方法で調達されたバイオエネルギーであることを証明するISCC認証など、業界問わずさまざまなものがあります。
この記事では、建物に対するグリーンビルディング認証についてご紹介します。
グリーンビルディングとは
グリーンビルディングとは、直訳すると「緑の建物」となりますが、簡単に言うと環境に配慮された建物、ということになります。
国内では「環境配慮型建物」「持続可能な建物」と呼ばれ、海外では「Sustainable Building」「Green Architecture」と呼ばれることもあります。
その建物が建設される段階はもちろん、その後の運営においても、エネルギーや水の使用を減らしたり敷地内の緑化を行うなど、環境に配慮する建物を指します。
さらに、上記のような環境面だけでなく、人間への影響、健康面や居心地の良さという視点も最近は重視されるようになりました。
これらの認証制度については後ほどご紹介します。
注目される背景
グリーンビルディングが注目される背景には、建築及びその過程で排出される二酸化炭素の割合が世界の39%を占めるという背景があります。
そのうち11%は建物を立てる際に使用される材料などによる排出です。
今後2060年までに、世界の建物の面積は2倍になると予想されています。それはニューヨーク市の面積を40年間毎月世界のどこかで建設することに相当します。
パリ協定の1.5度目標を達成するためには、既存の建物と新しく建設する建物の両者が、エネルギー効率を良くし、化石燃料由来のエネルギーではなく再生可能エネルギーを使用するなどの取り組みが必要になります。
グリーンビルディング認証
建物による環境への影響を客観的に評価しようとする動きが世界各地で広がり、さまざまなグリーンビルディング認証が誕生しました。
その中で、国際的に普及し認知度が高い認証プログラムがLEEDです。
また、環境面だけでなく、人間への影響、健康面や居心地の良さを基準として評価しているのがWELL認証になります。
それぞれご紹介していきます。
LEED認証システムについて
Leadership in Energy and Environment Designの頭文字をとってLEED(リード)と呼ばれており、GBCI(Green Building Certification Inc.)が開発し、評価している認証制度です。
評価項目にはカテゴリー別に「必須項目」と「選択項目」があり、それぞれの基準を満たすことで認証を得ることができます。
その評価の結果に応じて、プラチナ、ゴールド、シルバー、サーティファイドの4つのレベルで評価されます。
LEED認証の種類
LEED認証は、建物の種類や段階などに応じて種類が分かれています。
LEED Building Design and Construction (BD+C)
新築または大規模改修を行う建物全体について評価します。BD+Cの中でもさらに、建物の用途・特性に合わせ、最適なシステムを選択します。
▶︎LEED New Construction(新築版)
新築または大規模改修を伴う工事の設計、および、施工を評価します。
▶︎LEED Core & Shell (コア&シェル版)
ビルオーナーがテナントビルを新築するにあたり、LEED認証の取得を目指す場合に選択する評価システムです。
LEED Interior Design and Construction(ID+C)
建物の内装の設計、および、施工の工程を評価します。
LEED Building Operation and Maintenance(O+M)
既存建物の管理・運用改善、および、小規模改築を評価します。
LEED Neighborhood Development(ND)
複合的なエリア開発の計画段階から設計・施工までを評価します。
LEED HOMES
戸建てと3階建て以下の集合住宅の設計、および、施工の工程を評価します。
WELL認証について
WELL認証はWell Building Standardのことを指し、2014年にアメリカで開発された認証システムで、認証はLEEDの認証も行っているGBCIが行っています。初めは主にビルやオフィスの空間が評価の対象でしたが、最近ではホテルや住宅でも認証を取得する企業が増えてきました。
WELL認証は空気、水、食べ物、光、運動、温度の快適性、音、材料、こころ、コミュニティの10個のコンセプトで構成されています。
WELLもそれぞれの項目の点数に応じてプラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズの順番で評価されます。
グリーンビルディング認証を取得するメリット
ここからは、企業がグリーンビルディング認証を取得する主な4つのメリットについてみていきましょう。
企業イメージの向上
企業イメージを向上させるためには、環境への配慮を積極的にアピールすることが不可欠です。グリーンビルディング認証を取得することによって、企業は環境に対する真摯な取り組みを示すことができ、消費者や投資家からの評価を高めることができます。企業の信頼性やブランド価値が飛躍的に向上するでしょう。
また、企業の社会的責任(CSR)を果たす一環として環境配慮を強化することで、社会からの信頼を得ることができます。環境意識が高まる中で、持続可能な活動への取り組みは企業の評価を一層高める要素となります。
コスト削減
コスト削減の観点からも、グリーンビルディングは非常に効果的です。省エネルギー設計により、エネルギー効率が向上し、光熱費の削減が期待できます。また、高効率の設備や材料を使用することで、長期的な維持管理費や修繕費用を大幅に削減することが可能です。
市場拡大の機会
市場拡大の機会も見逃せません。グリーンビルディングの需要が増加する中で、建設業者や関連産業にとっては新たなビジネスチャンスが広がっています。環境に配慮した建物の提供は、競争力の強化にもつながり、企業の市場でのポジションを確固たるものにします。
健康と快適性の向上
健康と快適性の向上という重要な要素もあります。グリーンビルディングは、室内環境を改善し良好な室内空気質や自然光の利用を促進します。これにより、入居者の健康や快適性が大幅に向上し、働きやすい環境を整えることができます。
このように、企業の成長と持続可能な未来を築くために、グリーンビルディング認証の取得が大いに役立つのです。
グリーンビルディングの事例
世界中でグリーンビルディング認証を取得する動きが広がっています。ここでは、その中でも特に有名な建物の事例をご紹介します。
日本郵政グループ本社
日本郵政は、大手町本社の移転に際して、世界基準の環境性能を備えたオフィススペースの導入を進めました。米国グリーンビルディング評議会(USGBC)の「LEED-CI(Commercial Interiors)」において、敷地、節水、エネルギー、材料、室内環境、革新性、地域の各カテゴリーで合計62ポイントを獲得し、ゴールド認証を取得。この認証は、日本における「LEED-CI」認証としては最大級のものです。
日本郵政は、オフィス全フロアに最先端のLED照明設備を導入し、エネルギー効率の最適化を図っています。このLED照明設備の導入により、米国空調衛生学会が定める省エネ基準に対して30%以上の省エネ性能を達成しています。
参照:日本郵政本社における LEED-CI(2009年版)ゴールド認証の取得‐日本郵政
ワン・ワールド・トレード・センター(ニューヨーク)
ワン・ワールド・トレード・センター(One World Trade Center)は、ニューヨークのウォール街近くに位置し、かつてのワールドトレードセンター跡地に建設された高層ビルで、環境に配慮した設計が特徴です。LEEDゴールド認証を取得しており、環境への取り組みが高く評価されています。
ワン・ワールド・トレード・センターでは、建物の資材の40%以上が工業廃材からリサイクルされたもので、建設廃棄物の87%が埋め立て処分を避けることができました。さらに、敷地内で集めた雨水は高効率の冷却塔で保存し、冷却、火災防護、植栽の灌漑に再利用されています。
また、自然光を最大限に活用する「デイライティング」技術が導入されており、窓からの自然光に応じて自動で照明が調整されることで、エネルギー消費が削減されています。高効率の配管システムも採用されており、水使用量が30%削減され、低流量のトイレや手洗い設備が導入されています。
さらに、高速エレベーターは再生ブレーキを使って、運転中に回収したエネルギーを再利用しています。これらの先進的な取り組みにより、One World Trade Centerは持続可能な建物として高く評価されているのです。
参照:NYC’s One World Trade Center Leads the Way in Green Architecture
マリーナベイ・サンズのアートサイエンス・ミュージアム(シンガポール)
シンガポールのランドマークであるマリーナベイ・サンズ(Marina Bay Sands)は環境に配慮した先進的な設計が特徴の大規模複合施設。ホテル、カジノ、ショッピングモールなどが入っていますが、その中のアートサイエンス・ミュージアムが2024年3月にLEEDプラチナ認証を取得しました。
アートサイエンス・ミュージアムには「レイン・オキュラス」という雨水貯留システムが組み込まれており、年間約40万リットルの雨水が再利用され、造園や水場のメンテナンス、浴室の洗浄に活用されています。
さらに、ロビーの窓にはソーラーフィルムが設置され、空調への依存を減らすことで年間26,000kWhのエネルギーを節約。
またアートサイエンス・ミュージアムは、マングローブ林の再生・保護プロジェクトなど、環境をテーマにしたプログラムを実施することで持続可能性へのコミットメントを強調しています。
参照:ArtScience Museum at Marina Bay Sands certified LEED Platinum
最後に
いかがでしたでしょうか?
より詳しくそれぞれの認証について知りたい方は以下の資料をご覧ください。
GREEN BUILDING JAPAN公式サイト▼(日本語サイト)
WELL認証について▼(英語サイト – ただし資料によっては日本語も)
WELL認証のコンセプト別 詳細▼(英語サイト)
参照:
グリーンビルディングジャパン
WELL – International WELL Building Institute | IWBI
Architecture 2030
Why The Built Environment – Architecture 2030