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「SDGs」と「ブランディング」|企業・事例

インターネットの普及によって、誰もが世間に対して発信ができるようになった時代、企業にはサステナブルなブランディングが求められます。SDGsに取り組む企業においても、自社のPR活動の一環としてホームページや各種メディアで発信することは必要なアクションです。

とはいえ、その取り組みに実態が伴っていなかったり、企業理念と合わせた齟齬(そご)があったりすれば、かえって消費者をはじめとしたステークホルダーの不信感を買ってしまうでしょう。この記事では、SDGsブランディングを行う企業の事例をいくつか紹介します。

SDGsウォッシュに陥らない企業ブランディング

SDGsに取り組むということは、社会貢献だけでなくSDGsに取り組む地球に優しい企業など、事業戦略上でもプラスのイメージを獲得でき、ビジネスの可能性を広げてくれます。そのため多くのSDGsに取り組む企業では、そのこと自体をメディアを通じて発信することを積極的に行い、消費者に好意的に受け入れられる企業ブランドの獲得を目指すのです。

しかし、SDGsへの取り組みをアピールしておきながら、中には実態が伴っていないケースもあり、そうした状態のことを「SDGsウォッシュ」と呼んで揶揄(やゆ)されることもあります。これは、環境に配慮したイメージを与えておきながら、実際にはエコではない製品で消費者に誤解を与える「グリーンウォッシュ」が語源となって生まれた造語です。

ブランディングを傷つけるSDGsウォッシュ

SDGsに取り組み地球環境や社会に優しい企業をアピールしておきながら、実際にはそれに反する企業活動を行っていたり、SDGs自体が絵に描いた餅状態でお題目としてしか機能していなかったりすると、消費者は期待した分その企業に対する不信感を強くするでしょう。

今や世界中の企業がSDGsへの取り組みを表明し、ステークホルダーがその理念に共感を寄せいています。そんな中、SDGsウォッシュだとステークホルダーに判断されてしまうことは、SDGsへの貢献をまったくしていない状態よりも、企業の評判を落としてしまうことになりかねません。企業ブランディングのためにSDGsをアピールするためには、SDGsウォッシュだと批判を受けないよう、実態のある取り組みやメディア活動を考える必要があります。

SDGsウォッシュを批判された事例

三菱東京フィナンシャルグループ、および三井住友フィナンシャルグループでは、CO2排出削減による地球温暖化の防止を目的に、2019年に石炭火力発電所向けの融資を原則として廃止すると公表しました。これ自体は環境保全につながる素晴らしい取り組みですが、残念ながらSDGsウォッシュとして批判を浴びています。

これは、現時点で投資中の発電所に対しての投融資は廃止しないという経営判断が、地球温暖化の防止を目指したパリ協定への取り組みとしては不十分で、さらに踏み込んだ決断でなければSDGsを推進しているとはいえないと、社会に判断されてしまったのです。

また、日本政府もSDGs推進本部を設置してSDGsへの取り組みを進めているものの、SDGsウォッシュだという批判を受けた事例があります。それは、SDGs14「海の豊かさを守ろう」ターゲット14.1の「2025年までに、海洋ゴミや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」に関する件です。

日本政府は2018年のG7サミットにおいて、プラスチックゴミによる海洋汚染問題への各国の対策を促す「海洋プラスチック憲章」に署名しませんでした。これは、「プラスチックゴミを減らしていく趣旨には当然賛成しているが、国内法が整備されておらず、社会にどの程度影響を与えるかが現段階ではわからないので署名できなかった」と、日本政府関係者が理由を説明しています。しかし、その後ろ向きともいえる政府の発言は、各国の活動団体などを中心に抗議活動が行われるなど、SDGsウォッシュとしての批判を受ける事になったのです。

SDGsでブランディングを成功させた企業の事例

さて、一方で企業をあげてSDGsに取り組み、それを外部にアピールすることでSDGsブランディングを成功させた企業もあります。ここでは3社の事例をご紹介します。

味の素「サステナブルブランディング」

味の素株式会社公式サイト
画像引用:味の素株式会社

日本の食品会社としても大手に属する味の素株式会社では、「Eat Well, Live Well.」をコーポレートスローガンとして、食と健康によるより良い未来を作るために企業活動を展開しています。食という人が生きる上で欠かせないものを扱う企業として、地球全体を意識したサステナブルな視点から、エコな製品づくりを目指す「バイオサイクル」を始めとして、SDGsに紐づくさまざまなマテリアリティ(重要課題)を設定。

その取組みの1つとして、ベトナムで学校給食を提供するプロジェクトを展開しています。これはベトナムの子どもたちの生活を助け、栄養バランスを改善するという取り組みを通じて、企業のブランドイメージを大きく向上させ、将来的な需要の創出へと貢献しているのです。

参考:味の素株式会社【社会課題を解決し、社会と価値を共創するASV(Ajinomoto Group Shared Value)】

ピープルポート「パソコン処分で子ども支援」

PEOPLE PORT公式サイト
引用:PEOPLE PORT

神奈川県横浜市に本社を構えるピープルポート株式会社では、一般企業で不要になったパソコンなどの電子機器を回収し、リーユース・リサイクルをして「ZERO PC」として販売しています。これは廃棄物やCO2の削減を通して環境問題に貢献するだけでなく、企業が無償・もしくは安価でユーズドの電子機器を手放した分の収益を、満足に教育を受けられない子どもたちの支援に寄付することで、1万社の協力を目指した「こども支援プロジェクト」の立ち上げへとつながりました。

さらに、同社のリユース・リサイクル工場では、母国での紛争や迫害を理由に日本に逃れてきたアフリカなど多くの難民たちを雇用。彼らが日本社会に馴染めるようなサポートをするなど、いくつものSDGs目標に貢献する取り組みが行われています。これらは認定NPO団体との提携を行いながら賛同企業の協力を得て活動していますが、本業への負担をかけずにSDGsへ取り組む社会貢献ができると、参加企業からも好意的に受け入れられています。

参考:PEOPLE PORT公式サイト

虎屋本店「和菓子の移動教室」

虎屋本店「和菓子の移動教室」
画像引用:虎屋本舗

広島県福山市にある株式会社虎屋本舗は、創業400年の老舗和菓子店舗です。同社では公式サイトにも「創業四〇〇年。和菓子を通じて子ども達に伝えたい事がある。」という企業コピーが掲げらているように、和菓子を通じてSDGsへ取り組んでいます。

SDGsに取り組む以前から、同社では社内の熟練の職人を離島や山間部へ派遣して、その地域の子どもたちだけでなく、障がい者支援学級や高齢者福祉施設などで菓子教室を実施していました。菓子作りを通じた地域社会との交流で、企業戦略としてもCSV(共有価値創造)戦略を推進し、外務省が主催する「第2回ジャパンSDGsアワード」において、「SDGsパートナーシップ賞」を受賞しています。

さらに和菓子文化の地域での浸透・継承に力を注ぎながら、高齢者の積極雇用も行うなど、人材のダイバーシティも進めるなど、SDGsのゴールと企業ブランディングを重ね合わせた活動を行う同社の取り組みは、地域創生のロールモデルとなり得ると注目を集めています。

参考:外務省PDF資料【第2回「ジャパンSDGsアワード」株式会社虎屋本舗】

まとめ

世界中の企業がSDGsに取り組み、それを外部に発信することにより企業ブランディングを行う現代。その中で的確な発信を行うことは、SDGsへの取り組みが自社やその地域において適したものであるかを精査する必要があります。根拠のない情報や誇張表現・曖昧な表現を避け、企業理念と乖離(かいり)のないSDGsゴールへ取り組むことによって、SDGsウォッシュを避けることは企業のブランディングを考える上では不可欠な考え方です。SDGsウォッシュによって企業価値を下げてしまうことがないように、SDGsの理念や仕組みをしっかりと理解して、企業理念にあった取り組みを試みてください。

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