2023年5月24日に、自然環境への負荷や生物多様性への影響を考慮に入れた科学的に自然に対する科学に基づく目標であるSBTN(Science Based Targets for Nature )第一版が正式にリリースされました。2020年9月にSBTNイニシャルガイダンス が公開されていましたが、イニシャルガイダンスから第一般へアップデートが行われたことで、市場より大きな注目を浴びています。
SBTNは、気候を対象としたSBTiに倣い、新たにLand(土地)、Freshwater(淡水)、Biodiversity(生物多様性)、Oceans(海洋)を対象に目標を行うことを促します。近年、気候変動だけでなく、自然環境や生物多様性に対しても、企業の積極的なアクションが求められています。その背景には、パリ協定が求める世界の平均気温上昇を1.5度に抑えるためには、自然破壊を食い止め、回復させることが必要だという科学的コンセンサスがあったためです。
これまでと変わらない企業のビジネスモデルは、持続可能ではありません。毎年発生している山火事やブラジルでの干ばつなど、生態系のバランスが崩れ、すでに世界全体で自然破壊による影響が出始めていることが明確です。世界全体で、2,600社以上の企業が、既にSBTi(Science Based Targets initiative)を通じて、気候に関する目標を設定しています。2050年までにネットゼロを達成する目標を掲げて、多くの成果を出している一方、課題も残っています。例えば、カーボンオフセット制度のために、急成長する樹木を植えるケースです。これは、地域の生態系や地域社会に対し、悪影響を及ぼす可能性があります。
気候変動と自然環境、生態系は相互に複雑に関係し合っています。だからこそ、気候変動だけでなく、自然という側面からも同時に対策を行うことが求められています。今回発表されたターゲットは、既存のターゲットを補完する設計となっています。そのため、企業は新たな目標設定を通じ、気候変動と自然環境の両方に対処するための総合的な行動をとることが可能となります。
サントリーホールディングスやL’OCCITANEグループ、Nestléを含む17のグローバル企業が、検証用のターゲット提出に向けて、準備を行っています。
安定した惑星のための世界的および地域的な科学的目標を確立することを目指す地球委員会(Earth Commission)の共同議長であるJohan Rockström(ヨハン・ロックストロム)氏は、次のように述べています。
「企業は、気候と自然環境に対して、科学的根拠に基づく目標を設定するための明確な指針と方法論を手に入れることが出来た。最初にターゲットを提出する17のパイロット企業の勇気に拍手を送りたい。なぜなら、それは簡単なことではないからだ。」
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