COP28で日本が「化石賞」を受賞|気候変動対策の足を引っ張る国に
COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)28のDAY4 12月3日に、環境NGO「Climate Action Network(CAN)」が、「化石賞」の授賞式を開催しました。COP28のDAY1はオープニングセレモニーが開催され、DAY2と3は首脳級会合が開催されました。首脳級会合を終えたDAY4からCOP最終日のDAY13まで「化石賞」の授賞式がほぼ毎日開催されます。
首脳級会合での各国の首脳の発言やその国の脱炭素対策に焦点をあて、130か国の1800以上の団体からなるCANを通じ、世界各地のNGOが受賞者を議論し決定します。世界の気候変動対策に対して足を引っ張っていると考える国に与えられる賞が、「化石賞」です。COP28の最初の授賞式で、日本は「化石賞」を受賞しました。
日本の化石賞受賞理由
日本は、COP25から4回連続で「化石賞」を受賞しています。
COP28 DAY4の授賞式で述べられた受賞理由は、以下の通りです。
- 日本は環境配慮をアピールしているが、脱炭素の取組内容は消極的である。日本国内、そしてアジア全体で日本政府は、火力発電所で化石燃料に水素やアンモニアを混ぜて、温室効果ガスの排出量を削減し、石炭火力の発電比率を下げていく方針を示している。しかし、これらの政策方針は化石燃料使用の延命につながっており、有意義なGHG排出量削減方法とは言えない。また、化石燃料を使用する発電所の延命措置となっている。世界で化石燃料の段階的廃止が叫ばれるなか、日本のエネルギーの脱炭素化の可能性を危険にさらしている。
- 日本は、アジア・ゼロエミッションコミュニティ(AZEC)イニシアティブを通じて、東南アジアに対して水素およびアンモニア混焼技術を活用し、石炭や天然ガスを使用した発電所を維持するように説得している。これは、アジア全体で化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を遅らせ、再生エネルギー3倍の世界目標に障害を与えうる。
- 日本政府は、化石燃料への投資を止める必要があるのに、ガソリン等に対する補助金を通じ、化石燃料の使用を支援し続けている。
尚、COP28 DAY6 12月5日にも、日本は「化石賞」を受賞しています。
詳しい内容は、CANのFOSSIL OF THE DAY AT COP28のウェブサイトをご確認下さい。
CANのFOSSIL OF THE DAY AT COP28のウェブサイト:Fossil of The Day 3 December New Zealand, Japan, USA, – Climate Action Network
みんなで考えたいこれからの日本
私は、日本が「化石賞」を受賞した授賞式の現場にいました。初めてCOPに参加し、気候変動に関わる意識決定のメカニズムを目の当たりにしました。確かにどの国もその国の立場を考慮したポジショントークを展開しています。各国は自分の国の経済やビジネスの強みを活かし、気候変動のビジネス機会を掴み取る努力をしています。日本産業の強みの一つは、高効率な燃焼や内燃機関に関わる技術の高さです。この強みを活かして、世界の脱炭素化に貢献したいという気持ちが日本にはあります。しかし、日本の一部のステークホルダーの意見が強く反映されすぎていると感じる方もいるのではないでしょうか。
一方で、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)等が発表する科学的根拠に基づいた脱炭素政策及びアクションと日本の現政策を比較した場合、大きな乖離があることは確かです。日本が独自路線を進む場合、アジアの高い化石燃料依存を例に挙げるのではなく、日本の政策が科学的根拠に基づいており、水素やアンモニア混焼の場合も火力発電所の経済合理性が成り立ち、2050年にはネットゼロを実現できることを立証する必要があります。
COPでは各国の思惑の違いもあり、本質的に世界全体のGHG排出量を削減させるという議論がスピーディーに進んでいないことも事実です。COP28の交渉で、各国が対策が足りないと合意するのは良いですが、誰が行動を強化すべきかは常に意見が分かれます。特にグローバルノースとグローバルサウスで大きな認識ギャップがあると感じます。
日本国民は気候変動に対して、もっと大きな関心を寄せ、自らの意見を積極的に発しても良いと思います。国民の声が企業を動かし、国や自治体を大きく動かします。日本がもっとも足りていないことは、環境的・社会的課題に対する多様なステークホルダーの参加とエンゲージメントです。日本が「化石賞」を受賞した本当の意味は何か、各個人が考え、行動を起こすことが、日本を正しい方向に導くのではないでしょうか。