COP28開幕!石油大国UAEが挑む気候変動対策の未来
2023年11月30日から12月12日にアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイでCOP28が開催されます。UAEの主要産業の一つが石油・天然ガス産業です。UAEは、天然資源依存型経済からの脱却と更なる経済発展のために、製造業やサービス業等の産業多角化を積極的に推進していますが、石油・天然ガス産業は巨大であり、この産業が短期的に座礁資産化することを嫌がる傾向にあります。そのため、開催国であるUAEがどのような舵取りを行うのか注目されます。
アル・ジャベル議長の発言と化石燃料廃止への道筋
COP28 アル・ジャベル議長は、アブダビ国営石油会社(ADNOC)のCEOであり、他にもUAE産業・先端技術相やUAE気候変動担当特使を務めています。ADNOCのCEOという立場上、積極的な化石燃料からの脱却に対しては消極的ではないかという見方が一部のメディア等で報道されています。一方で、アル・ジャベル議長は、化石燃料の段階的な削減は避けられないと発言しており、UAEにおける再生可能エネルギー拡大やエネルギー効率対策等について対外的に発言をしています。COP28は、「エネルギーCOP」だと言われており、化石燃料の段階的廃止に関する文言が盛り込まれるかどうかに関心が集まります。
COP26(2021)及びCOP27(2022)について振り返ります。英国・グラスゴーで開催されたCOP26(2021)では、長期目標が2℃から1.5℃目標に事実上強化され、石炭火力の段階的削減に対して要請がされました。また、GFANZ(グラスゴー金融同盟)も発足されました。エジプト・シャルムエルシェイクで開催されたCOP27(2022)では、ロス&ダメージ基金の設立合意が発表され、COP開催期間中に国連がネットゼロ定義を発表しました。
COP28で注目すべき3つのポイント
1点目がパリ協定後、初のグローバルストックテイクが行われることです。グローバルストックテイクとは、パリ協定に基づいて各国が定めた温室効果ガス排出削減目標(NDC)の世界全体の進捗状況を評価する仕組みです。2023年に実施される第一回のGST(グローバルストックテイク)では、2030年までのNDCに対する進捗状況がレビューされます。
2点目がCOP27で発表されたロス&ダメージ基金の具体的な設立や資金メカニズムについてです。途上国はロス&ダメージに特化した資金支援を長年求めてきました。その背景には、GHGを大量に排出してきた先進国よりもGHG排出量が少ない途上国の方が気候変動による物理的ダメージを受けているという事実があります。UAEは、気候ファイナンスの包括的な修正という面でも重要視している点であり、ロス&ダメージ基金設立の具体的な道筋を描けるかどうか注目です。
最後が、2030年GHG排出量削減目標は強化され、化石燃料のフェーズアウトに関して触れられるかどうかという点です。各国が提出しているNDCを積み上げても1.5℃目標に遠く及んでいません。1.5℃目標達成には化石燃料からの脱却は必須であり、議長国UAEの采配に期待が集まります。