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IPCCとは? 科学的根拠を基に気候変動を語る

IPCCとは?活動内容やおすすめ動画もご紹介!

IPCCとは、Intergovernmental Panel on Climate Changeの頭文字をとったもので、日本語では「気候変動に関する政府間パネル」と訳されます。世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により1988年に設立された政府間組織で、シンプルにいうと国連の下部組織です。IPCCが設立された背景としては、人間の活動により引き起こされる地球温暖化(気候変動)が、1980年代に国際政治上の課題として認識されるようになったからです。2021年8月現在、195の国と地域が参加しています。

IPCCは、世界各国から気候変動に関する専門家が集まった集団で、気候変動の原因を探るための研究や情報収集し、科学的な根拠などの提供を目的としています。また、気候変動によって今後どのような影響があり、その際の被害なども想定して適応策と緩和策を示すことも重要な役割の一つになっています。

IPCCの活動内容

IPCC 報告書
引用:IPCC 報告書

では、IPCCは具体的に行っていることですが、数年おきに「評価報告書」を発行することが主な活動です。

「気候変動」と聞くと一つの問題のようにも感じますが、さまざまな分野に関連し、また影響も多くの分野に及ぶことから、正しく評価するために専門分野の異なる3つ作業部会(WG = Working Group)に分かれて作業が行われています。

第1作業部会(WG1)
自然科学的根拠の評価を担当しています。

平均気温がこれまでどれほど上昇したのか。今後どれくらい上昇すると予測されるか。あるいは海水面上昇についてはどうか、などについて科学的知見をまとめています。

第2作業部会(WG2)
気候変動の影響と変化に対する適応策、そして脆弱性評価を担当しています。

気候変動によって水資源や生態系はどのような影響を受けるのか。健康被害や災害発生などによる経済的損失はどれくらいか。また、そのような影響・被害を抑えるためにどのような対策をすることができるのか、などについてまとめています。

第3作業部会(WG3)
気候変動の緩和策についての評価を担当しています。第2作業部会が気候変動による影響とそれに対する対処方法を評価しているのに対して、この部会は気候変動そのものを抑えるための方策について科学的な評価をまとめています。

そして、3つの作業部会とは別にTFI(Task Force on National Greenhouse Gas Inventories)という組織があります。各国の温室効果ガスの排出量を算定し、より適切な排出量の算出方法の開発や改善、排出量の目録作成などが主な役割です。

IPCCによる報告書の種類

IPCCの報告書には3つの種類があります。

(1)評価報告書
気候変動問題全般に関して、最新の科学的知見をまとめたものになります。3つの作業部会がそれぞれ担当分野の報告書を作成します。

(2)統合報告書
上記(1)の3つの評価報告書の知見をまとめた報告書です。

(3)特別報告書
こちらは特定のテーマに関してまとめられた報告書です。

2021年発表「IPCC第6次評価報告書(AR6)」

第6次評価報告書はこちら(日本語訳:政策決定者向け要約)

報告書全体に目を通そうと思うと、4,000ページほどあります。企業のサステナビリティ担当者は、37ページに要約されている「政策決定者向け要約(Summary for policymakers)」だけでもいいので目を通しておくことをおすすめします。

報告書の要点や主張が凝縮されたもので、以下の4つのカテゴリーに分けて構成されています。

A. 気候の現状
これまでの気候変動の状況がまとめられており、IPCC 第6次評価報告書 第1作業部会報告書の冒頭には、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない。大気、海洋、雪氷圏及び生 物圏において、広範囲かつ急速な変化が現れている」と記載されており、言い切ったことで大きな話題となりました。

B.あり得る将来の気候
今後の気温上昇や異常気象などの極端な気候の変化を含めた将来予測を示しています。

C. リスク評価と地域適応のための気候情報
世界の各地域における気候変動がもたらすリスクを科学的に評価し、それぞれの地域での適切な取組を推進するための情報が載っています。

D. 将来の気候変動の抑制
人間の活動によって引き起こされる地球温暖化を、どのように抑制するのかが示されており、大きな要因を占めるメタンガスについても触れられています。

報告書の前にみるべきおすすめ動画

テレビや講演会などで気候変動の状況を分かりやすく解説している、国立環境研究所の江守氏が最新のIPCC報告書を動画で解説しています!

そして私たちに何ができるのか、についても20分で解説してくださっています!

どちらの動画も要点をまとめて分かりやすいので、お時間がありましたら是非ご覧ください!

最後に、特別報告書には以下のものがあり、IGESが翻訳した物を共有させていただきます。

「1.5℃特別報告書」(2018年)

「土地関係特別報告書」(2019年)

「海洋・雪氷圏特別報告書」(2019年)

報告書の原文はこちら(IPCCの英語サイトへ飛びます)

最後に

いかがでしたでしょうか?

2021年は気候変動というトピックがたくさん現れましたが、その一つは間違いなくこのIPCC報告書だったのではないでしょうか?

全てに目を通す必要はありませんが、気になる箇所だけでも知っておくことで、TCFDに賛同する際により広い視点で捉えることに繋がるのではないかと思います。

参照・引用:
https://www.iges.or.jp/jp/publication_documents/pub/policyreport/jp/10449/IPCC_ocean+and+cryosphere_1219_rev.pdf
https://www.iges.or.jp/jp/publication_documents/pub/policyreport/jp/10450/IPCC+land_1221.pdf
https://www.iges.or.jp/jp/publication_documents/pub/policyreport/jp/6693/IGES+IPCC+report_FINAL_20200408.pdf
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar6/IPCC_AR6_WG1_SPM_JP_20210901.pdf
https://www.ipcc.ch/sr15/mulitimedia/photo-library/
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar6/index.html
http://www.env.go.jp/earth/ipcc/6th/index.html

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丸末彩加

丸末 彩加(まるすえ あやか)。幼少期をアメリカで過ごし、日本と海外どちらの視点も入れながら、楽しく社会問題を解決したいと思っています。趣味は旅行と音楽と食べることです。linkedinでも情報発信しています!

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