出張もサステナブルに!次回から実践できる取り組みを紹介
国際エネルギー機関IEAのTransport(輸送)に関する分析データによると、2021年に世界で排出された二酸化炭素のうち、「移動や輸送」部門は全体の37%を占めています。移動や輸送には、貨物の輸送、旅行や出張による移動も含まれています。出張の場合、移動を伴う場合がほとんどです。欧米では、出張もサステナブルに変えようという動きが活発化しています。
脱炭素に向けた世界の流れ
政府による移動制限が緩和され、ビジネス出張が増えてきました。しかし、出張の回数が新型コロナウイルスの感染拡大以前と同じ水準まで戻ることはないと予想されています。
Morning Consultのデータによると、新型コロナウイルスの感染拡大前に頻繁に出張していたビジネスマン・ウーマンで、「今後は出張したくない」と回答した人の割合は、2021年10月の時点で39%。2022年2月には42%と上がっています。
zoomやGoogle Meetなどのオンラインコミュニケーションツールは便利ですが、対面で話し合うことはミスコミュニケーションをなくし、個人的な交流を深めることにも繋がります。出張で現地へ出向き、対面でコミュニケーションを行うことは、企業が取引先やビジネスパートナーと長期的なパートナーシップを築き、信頼関係を構築する上で重要でしょう。対面のミーティングの価値が再認識されていますが、企業は脱炭素推進を行う場合、中・長距離の移動がある出張回数をどのように管理していくか、悩ましいところです。
出張時にできるサステナブルなアクションとは
出張によって、滞在期間や移動距離はさまざまです。出張時に共通して取り組めるサステナブルなアクションとは何でしょうか?
私が出張時に取り組んでいることをいくつか紹介します。
個人でできること
マイボトルを持参
旅行や出張時は、使い捨てのペットボトルを利用した方が便利です。マイボトルを持参しても給水スポットがない場合、荷物になってしまうからです。しかし、最近は日本国内であれば、mymizuアプリを利用することで、給水スポットを簡単に探すことができます。
また、ミーティングや会議の際に、ペットボトルの水やお茶が配られる場合があります。マイボトルを持参し断ることでゴミの削減にも繋がります。
シェアやレンタルを通じて荷物を軽減
飛行機に限らず、電車やバスを利用する際は、荷物を軽くすることで燃費が改善し、温室効果ガスの排出削減に繋がります。必要最低限の荷物だけを持参し、嵩張る衣類などは現地でレンタルすることもおすすめです。また、歯ブラシや櫛といったアメニティは、一度使用すると捨てられてしまうため、そもそも使用しないことが重要です。自分自身が必要なアメニティを持参することで、ゴミを削減することができます。レンタルできる商品を事前に把握し、不要なものを持参しないことで、荷物の重さ軽減にも繋がります。
部屋の清掃を断る
連泊の場合、部屋の清掃を断りましょう。一部のビジネスホテルは、お部屋の清掃が連泊期間中に一度のみ対応しています。あるホテルに宿泊した際、一度しか使用していないアメニティが全て新品になっていたことがあります。私は、それを防ぐために部屋のメモを活用します。「水は要りません」や「バスタオルだけ交換をお願いします」とメモに書いておくことで、必要最低限の清掃をお願いしています。
企業として取り組めること
出張には、移動や宿泊、現地での移動といった、温室効果ガスの排出ポイントがいくつかあります。役員と従業員がビジネス出張に行く場合、企業はどのような取り組みができるのでしょうか?
移動手段
欧州には、「飛び恥(Flight Shame)」という言葉があります。「飛び恥」とは、「多くの二酸化炭素を排出する飛行機に乗ることは、恥ずかしい」という意味です。最近は、フライトを検索すると、スマートフォンやパソコンの画面に複数のフライトを比較して、二酸化炭素を何%削減できるかが表示されます。環境負荷の小さいフライトを選ぶことも重要です。また、温室効果ガスの排出量が多いフライトではなく、鉄道の利用を促すこともできるでしょう。企業は、役員や従業員が出張する際、環境に配慮した行動を促すインセンティブを設計することで、企業全体の行動変容を実現できる可能性があります。
宿泊先
大手宿泊予約サイトBooking.comは、再生可能エネルギーを導入している宿泊施設や使い捨てのプラスチックを使用していない宿泊施設に対して、「Travel Sustainable」の認証を与えています。Booking.com経由で宿泊を予約しない場合、企業は出張する役員と従業員に対し、Green Keyなどのサステナブルトラベルの第三者認証を取得した宿泊施設を選ぶよう伝えることで、環境負荷を低減を実施することができます。
基準づくり
リモート会議は、場所を選ばないため長距離の移動を伴いません。つまり、移動で排出される温室効果ガスの排出を削減することができます。出張には移動が伴います。しかし、直接会うことで意識やビジョンをより詳細に伝えることができ、コミュニケーションの誤解を防ぐことができます。企業は、出張による環境負荷を評価し、出張の必要性やリモートでの会議を選択する基準を設けることで、従業員が判断しやすくなります。
社会全体の取り組みが必要
2023年3月、東京のビジネスホテルに宿泊した際、このようなメッセージが貼られていました。
環境に配慮しようと訴えるメッセージは、環境への意識が高いオランダやドイツのホテルでも発見することができます。
役員と従業員一人一人が、環境に対する意識を変えることが重要です。だからこそ、企業は彼ら、彼女らが環境に配慮するインセンティブを設けるなど、社内制度を整えることで、出張を環境負荷が小さいものに変えていけるでしょう。
ただし、企業が役員と従業員に環境に配慮するよう求めても、サステナブルな選択肢がなければ、検討、実践することができません。宿泊施設や航空会社が環境へより配慮し、温室効果ガスの排出量が比較的少ない移動方法や宿泊施設の選択肢を増やすことが重要です。
最後に
サステナブルツーリズムやサステナブルファッションなど、「サステナブルな〇〇」という言葉を耳にする機会が増えています。出張は企業活動の一部であり、サステナブルな出張を実践することは、事業全体で排出される温室効果ガスの排出量削減にも繋がります。
私も出張へ行くことが多いですが、個人でできることを引き続き実践していきます。また、出張だけでなく、観光をする際にも、サステナブルなホテルや移動手段を事前にリサーチし、積極的に利用していきます。