ドイツ・ベルリンで大人気!ヴィーガンドーナツ専門店「Brammibal’s Doughnut」
日本でも耳にする機会が増えた「ヴィーガン」は、完全菜食主義と訳され、「健康に良い」というポジティブなイメージがある一方、動物性のものを一切口にしない「過激な思想」といったマイナスなイメージもあります。
日本では、従来の食品と「ヴィーガン」は区別されています。しかし、ヴィーガン実践者に人気の国であるドイツでは、ベルリンやハンブルクといった都市を歩くと、あちこちでヴィーガンレストランを見かけます。また、これらのレストランやカフェでは、ヴィーガン実践者であろうとなかろうと、美味しく食べられる商品が多くあります。本記事では、ベルリンで大人気のヴィーガンドーナツ専門店Brammibal’s Doughnutについて紹介します。
ヴィーガンについて詳しくはこちら▼
ヴィーガンフレンドリーな街ベルリン
オンライン料理サイト「Chef’s Pencil」が発表した、2022年版ヴィーガン実践者に人気の国別ランキングで、ドイツは2位を獲得しています。都市別ランキングでは、ハンブルクが4位、ベルリンが5位にランクインしています。
ベルリンやハンブルクでは、多くのヴィーガンレストランを見つけることができます。また、ヴィーガンレストランでなくても、ヴィーガンオプションが用意されています。
では、なぜベルリンではヴィーガンが普及しているのでしょうか?考えられる理由は2つあります。1つ目の理由は、ベルリンの壁が崩壊した際、東ベルリンの地価が一気に下がったことで多くのアーティストが安い賃金と自由なライフスタイルを求めて集まったためです。彼らは、ベジタリアンやヴィーガンといった食のトレンドも持ち込んだと言われています。その結果、ヴィーガン商品だけを扱うスーパーマーケットや人気のヴィーガンレストランは、旧東ベルリン地域に多く見られます。
2つ目の理由に、移民が多いことが考えられます。2022年6月時点で、ドイツはヨーロッパ最大の難民受け入れ国であり、中でもベルリンは多くの難民を受け入れている都市の一つです。ベルリン市内では、宗教上お肉を食べられない移民も増えたことで、ヴィーガンレストランやヴィーガンの食事やドリンクのオプションが増えたと考えられます。
Brammibal’s Doughnutへ行ってきました!
Brammibal’s Doughnutは、ベルリン市内に7店舗あり、2023年の4月にはドイツ第2の都市ハンブルクでもオープン予定です。中心部にあるアレクサンダープラッツ店は、大人気で外まで列ができていました。環境に対する意識が高く、ヴィーガン実践者は10代・20代の若者が多いと言われています。しかし、店内を見渡すと、高校生から50代・60代まで幅広い年代の方々がBrammibal`s Doughnutを訪れているようです。
販売されているドーナツは、ヴィーガンに対応しており、動物性の食材を使用していません。提供されるドリンクもヴィーガンに対応しており、従来のミルクではなく植物性のオーツミルクが使用されています。
ドーナツは、クリームがたっぷり入った濃厚なものから、シンプルなものまで種類が豊富です。海外のスイーツはとても甘いイメージがあるかもしれませんが、Brammibal’s Doughnutのドーナツはミスタードーナツよりも少し甘いですが、アメリカのdunkin donutsほどではなく、日本人の口にも合う控えめな甘さです。私は、ベルリンに10日滞在しましたが、2回の訪問で合計5個のドーナッツを食べました。
ドーナツのメニューは、固定で決まっているものが6種類。加えて月替わりやイベント限定のドーナツがあります。私がベルリンを訪問した際は、バレンタインデーが近かったため、バレンタイン限定のドーナツが提供されていました。
美味しさだけでなく、サステナビリティにも取り組む
Brammibal’s Doughnutは、当初は店舗を持たず、ベルリンで開催されるイベントやマーケットなどに出店し販売をしていました。しかし、美味しいことから人気を得て、2015年にヨーロッパ初のヴィーガンドーナツ専門店をオープンしました。同店は、ヴィーガンが美味しいということを知ってほしいという想いから、ドーナツは毎朝生地から作っており、保存料なども一切使用していません。
Brammibal’s Doughnutは、フードロスの削減にも取り組んでいます。お店で売れ残ったドーナツをホームレスシェルターや地元の非営利団体に寄付し、生ゴミの削減に取り組んでいます。さらに、ベーカリーで発生する廃棄物を活用し、バイオガスを生成し熱源として利用しています。
同店は、持ち帰り用のパッケージといった使い捨てのゴミを削減するため、デポジット制度による再利用可能なパッケージの利用を促しています。また、テイクアウトのドリンクも再利用可能なものへと切り替えました。ドイツ最大のリユースサービスを展開しているRecup社と提携し、2021年には16,000杯以上の飲み物をRecupで提供しています。
また、写真1番奥の「Strawberry Sprinkles」ドーナツは、チャリティードーナツです。消費者が、Strawberry Sprinklesを購入すると、ドーナツ1個の売上に対して1ユーロを慈善団体やNPOに寄付する仕組みです。
さらに、Brammibal’s Doughnutは、Climate Partner社により、クライメートニュートラル商品として登録されています。Brammibal’s Doughnutは、コンゴ民主共和国のヴィルンガ国立公園で水力発電プロジェクトを通じて、排出量をオフセットしています。
Brammibal’s Doughnutのオフセット状況について▼
Climate Partner社によるレポート(2021年度)はこちら▼
最後に
ヴィーガンを実践することは、アニマルウェルフェアの視点で見ると正しい取り組みです。しかし、動物性の食材を一切食べない食事がサステナブルかと問われると、必ずしもそうではないでしょう。一方で、IPCCが発表した「Climate Change 2022: Mitigation of Climate Change」によると、野菜中心の食事を増やすことは、二酸化炭素排出量の削減と気候変動の緩和、さらに人間の健康増進につながる高い可能性を持っていることが明らかになりました。
日本でも、ヴィーガンメニューを提供するレストランやカフェが増えています。しかし、ヴィーガンメニューに対して、「美味しくなさそう」「栄養が偏りそう」といったイメージがあることも事実です。
ベルリンは、ドイツの中でも移民が多く、柔軟に多様な文化を受け入れるマインドを持っている住民が多い地域です。そのため、ヴィーガンが馴染みやすい条件が整っており、日本とは状況が異なります。
しかし、Brammibal’s Doughnutのドーナツは、ヴィーガンを実践していてもしていなくても「美味しいから」という理由でまた来たくなるお店です。日本国内でも、Brammibal’s Doughnutのように、美味しい料理を通じてヴィーガンのイメージを覆すことができれば、人々の選択肢に自然と馴染む社会を実現できるのではないでしょうか?
私がすぐにできるアクションとしては、野菜中心の食事を意識することです。また、今後レストランやカフェでヴィーガンメニューを見つけた際は、偏見を持たずに食べてみることだと考えます。自分自身を含めて周りの人には、「ヴィーガンは難しく捉えるのではなく、食事の幅が広がるもの!」と、楽しみながら実践していきたいと思います。