フラワーロスとは?SDGs・持続可能な取り組み事例を紹介
新型コロナウイルス感染予防によって、卒業式や冠婚葬祭の中止および縮小、またロックダウンにより飲食店が休業状態となりました。その影響もあって、式典や店舗ディスプレイの際に使う花が大量に余ってしまい、捨てられてしまうという「フラワーロス」が話題となりました。
最近では、これらの花を「捨てずに、活かす」というムーブメントが出始めています。こちらの記事では、フラワーロスの活用法と取り組み事例を解説。生花を楽しんだ後の使い道も紹介します。
「ロス」は色々なシーンで使われている
フラワーロスとは、まだ使えたり飾ったりすることができる花を破棄することです。最近では花だけでなく、あらゆる方面で「ロス(Loss)」というワードが使われています。フラワーロスと似ているニュアンスで使われている言葉が、「フードロス」です。フードロスとは、まだ食べられるにも関わらず破棄される食品のことです。最近では、コンビニの店頭でもフードロスを削減する目的として消費期限の早い食品を手前に陳列するなどの対策を取るようになりました。
フラワーロスの問題点
フラワーロス、花の廃棄問題は重要な課題です。花き業界では、仕入れた花の約30〜40%が無駄になっており、これが年間1500億円もの経済損失につながっています。また、花の生産や管理には多くの水と電力が必要であり、これらを無駄にすることはSDGs(持続可能な開発目標)に反しているのです。世界的に見ても、水やエネルギーが貴重な資源であることを考えると、フラワーロスの解決は急務といえます。
フラワーロスの原因
フラワーロスの主な原因は以下の3つが挙げられます。
- プロダクトアウト型の主流化
- 廃棄の出やすい販売過程の仕組み
- マーケット価格の変動
プロダクトアウト型の主流化
花き業界では、主に生産者が自分たちの好きな花を生産し、それを市場に供給する「プロダクトアウト型」が一般的です。しかし、この方法では消費者の実際のニーズとのズレが生じやすく、結果として需要に応じた供給が難しくなります。
これが、余剰となった花が廃棄される主な理由です。花は生ものであり、売れ残るとそのまま廃棄の対象になってしまいます。
廃棄の出やすい販売過程の仕組み
花は生ものですが、出荷後に生花店に届くまでには複数の過程があります。生産後はまず卸売市場に行き、その後生花店に運ばれます。この間に花が劣化してしまい、廃棄せざるを得ない場合があります。
また、生花店で陳列された花でも、すべてが消費者の手に届くわけではありません。通常、花は箱単位で取引され、店舗は需要に応じて仕入れますが、必要以上に仕入れることがあり、結果として一部の花が売れ残り、新鮮さを失って廃棄されることがあるのです。
このように、出荷から販売までの流通過程での廃棄も、フラワーロスの主な原因の一つです。
マーケット価格の変動
花の市場価格は季節、天候、特定のイベント(例えばバレンタインデーなど)、経済状況、そして需要と供給のバランスなど多くの要因によって左右されます。これらは予測が難しく、市場価格が急激に変動することがあるのです。
市場価格が急落すると、生産者や卸売業者は予定よりも低い価格で花を販売せざるを得ません。このため、生産者が生産した花が余剰となり、結果として余った花が廃棄されてしまいます。
花屋の現状について
農林水産省の「令和3年産花き生産出荷統計」によると、2021年は32億4900万本の切り花の出荷がありました。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、イベントが中止や縮小になったこともあり、2020年より前の年と比較しても出荷量と作付面積の両方で下がっています。
しかし最近は、ゴミ削減の取り組みが浸透している影響もあり、売れ残りの切り花や規格外の花をドライフラワーにして鑑賞用にしたり、定期便として提供するなど、安定して生産・販売するための動きが活発化しています。
フラワーロスの活用事例
フラワーロスはどのような形で活用されているのでしょうか。国内で展開されている活用事例について紹介します。
農林水産省「花いっぱいプロジェクト」
農林水産省では、新型コロナウイルスの影響によって花の需要が減少した花きの消費拡大の一環として、花を買って家庭や職場に花をたしなむ「花いっぱいプロジェクト」を立ち上げました。ほかにも花の飾り方や管理方法などのアドバイザーも募っており、活動の活性化にも力を注いでいます。
日本サステナブルフラワー協会
日本サステナブルフラワー協会は、破棄する花を減らし、花を別のモノとして活かす取り組みを提案・実施している協会です。moaniというブランドは、花の破棄をせず、彩り溢れた状態の花をキャンドルなどのデコレーションとして活用しています。結婚式で使った生花ブーケを思い出として残せる取り組みにも積極的です。
2020スマイルフラワープロジェクト
2020スマイルフラワープロジェクトとは、フラワーロスを1本でも多くなくしたいという想いで立ち上げたプロジェクトです。花農家で「規格外」などの理由によって破棄される花を販売し、消費者に届ける仕組みを創っています。この仕組みによって、生産者の支援だけに留まらず、より多くの消費者にフラワーロスについて知ってもらい、消費者に花のある空間で穏やかな日々を過ごしてもらいたいという想いで活動を行っています。
FLOVER
FLOVER (フラバー)では「1本でも多くのお花を救いたい」という想いで、フラワーロスゼロを目指しているフローリストセレクションの花の定期便です。自宅やオフィス向けに規格外の花の個性的な魅力の情報発信も行っています。
フラワーロスをなくすためにできること
企業や団体ができること
花き業界では、従来から消費者のニーズよりも生産者の意向を優先するプロダクトアウト型が主流でした。この方式では、生産者が自分たちが作りたい花を生産し、それを市場に持ち込みます。しかし、このプロダクトアウトの構造が、需要と供給のバランスを取りにくくし、結果としてフラワーロスを招く要因の一つとなっています。
近年では、この従来のアプローチに対して、「マーケットイン型」と呼ばれる新しいアプローチが提案されています。マーケットイン型では、市場からの注文を受けてから生産や流通を行うため、より需要に即した生産と販売が可能になります。これにより、余剰の発生を抑え、フラワーロスを減少させることが期待されます。
さらに、新たな販売モデルとして注目されているのが、サブスクリプション型の販売です。サブスクリプション型の販売では、定期的に花を提供することで消費者の需要に応え、無駄を最小限に抑える取り組みが行われています。
業界全体の常識や構造を変えることは容易ではありませんが、他の団体や企業の成功事例を参考にし、新しい販売モデルの導入を検討することは、フラワーロス削減につながるのではないでしょうか。
個人でもできること
贈られたり購入した花は、最大限に活用することが重要です。生花で楽しんだ後の使い道としては、ドライフラワーに加工してインテリアとして飾るなどがあります。
また、花が余ってしまった場合は、学校や地域の福祉施設、病院などの施設に寄付することができます。
最後に
フラワーロスは、フードロスに比べると認知度は低いかもしれません。一方でゴミ削減や破棄の際のCO2排出量削減の取り組みの一つとして徐々に認知度も高まっています。「ロス」を失くす意識と作り手のことを常日頃から考えておくと、ロス削減にどのようなことをしたら最適なのかが自身の生活の中で考えられるようになります。