宇部市・山陽ニットが目指すサステナブルファッションを紹介
近年、社会課題に注目が集まっていますが、都市部と地方では課題の内容も大きさも異なります。山口県宇部市にある一般社団法人SDGsてらすでは、宇部市の地域課題解決に向けて、さまざまなプロジェクトを立ち上げています。今回は株式会社山陽ニットと一緒に行っているサステナブルファッションに関する「あみそんじプロジェクト」についてご紹介します。
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日本のファッション業界の抱える問題
具体的な取り組みについてご紹介する前に、日本のファッション業界が抱えている課題を整理します。
ファッションには流行があるため、昨年のものは着たくない、あるいは安いので毎年服を購入している方も多いかもしれません。しかし、大量生産・大量消費の結果、日本の家庭から焼却・埋め立てられる服というのは年間48万トンに上ります。これは1日に平均すると、大型トラック約130台分に相当します。しかも、日本は利用できる土地に限りがあるため、埋立地は残り20年でほとんどなくなってしまうという懸念があります。
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また、私たちが着ている衣類の98%は海外から輸入されています。日本のファッション産業による二酸化炭素の排出割合のうち、90%以上は原料の調達や製造段階からです。海外への依存をゼロにすることは難しいかもしれません。しかし、国内に既にあるものを循環させ、利用することは環境負荷を減らす方法の一つです。
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山陽ニットの現状と代表の想い
今回ご紹介する「あみそんじプロジェクト」は、一般社団法人SDGsてらすと株式会社山陽ニット(以下、山陽ニット)が共同で取り組みを行っています。
山陽ニットは山口県宇部市に本社を置く、ニットの製造会社です。オーダーメイドで高級ニット婦人服を作っています。素材には綿やウール、シルクウール、ポリエステル、アクリルなど、国産からイタリア産までさまざまな種類の糸を扱っています。素材によって、糸の伸縮具合や重さ、太さが異なります。その結果、同じ型を使用していても、素材の種類によって生地の長さが変わってしまうそうです。
山陽ニットでは、オーダーメイドでジャストサイズの商品を作る過程で、活用することのできない編み損じの生地が毎月40kg、年間おおよそ500kgが廃棄されていました。
しかし、これらは新品の糸から作られたものです。山陽ニットの代表である原田真由美さんは、これらを何とかできないかと模索していたそうです。そこで、一般社団法人SDGsてらすと共同で、これらの生地を活用した「あみそんじプロジェクト」が誕生しました。
AMISONJIブランドの誕生
編み損じた生地は、新品ではありますが、大きさや形がバラバラです。プロジェクトメンバーで何度も話し合いを重ね、試行錯誤の末にオリジナル商品が完成しました。現在では、AMISONJIブランドを立ち上げ、商標登録も取得しています。
AMISONJIの商品は、どれも本来廃棄されてしまう生地や糸を使用したものばかりです。廃棄するということは、糸の生産から輸送過程で消費された資源・エネルギーも無駄にしていると言えます。年齢や性別を問わないデザインで、どれも編み損じた、限られた生地から作られているので、世界に一つしかありません。
最近はサステナブルファッションを謳う商品が多く誕生しています。プラスチックを一度溶かして糸にした商品なども見受けられますが、その過程では多くのエネルギーを消費しています。一方、AMISONJIは本来廃棄されているものを、そのまま利用して価値を生み出しているため、本当の意味で環境負荷が少ないサステナブルファッションとなっています。
最後に
山口県宇部市のサステナブルファッションの取り組み事例をご紹介させていただきました。AMISONJIの商品については、別の記事で完成までの過程をご紹介します。
私たちが普段身につけている衣類の98%が海外から輸入されています。今の円安、資源高による物価上昇は、モノの消費のあり方を考え直す良いきっかけを与えてくれています。これはファッション業界に限った話ではありません。あみそんじプロジェクトが示してくれたように、地域の人々を巻き込みながら知恵を絞り、資源を循環させていく仕組みをさまざまな分野で広げていく必要があるように感じました。
あみそんじプロジェクトについて詳しくはこちらをご覧ください▼