Coolfood Meals認証とは?環境に優しい食事の特徴と意義
野菜には、たくさんの種類があります。野菜を食べることは健康的なイメージが強く、日本では旬の野菜を食べることで季節を感じることができます。実は、今国連を中心に野菜中心の食事へ切り替えることが強く推奨されています。人間の食料生産における環境負荷を低減する必要があるからです。本記事は、環境負荷の小さい食事メニューに対して与えられるCoolfood Meals認証や食料生産によって引き起こされている問題に焦点を当て解説します。
食料生産によって引き起こされる問題とは
食料生産によって引き起こされる問題とは何でしょうか?
地球温暖化
最初に、地球温暖化です。食料生産は、世界全体で排出されるGHGのうち24%を占めています。
中でも、飼料等を含む動物由来の食品の製造は、農業・畜産セクターから排出されるGHG排出量のうち3分の2を占めます。また、家畜を育てるためには、広大な土地や多くの水資源も必要とするなど、植物由来の食品よりも環境負荷が大きいです。そのため、植物由来の食品を中心とした食事へ切り替えることで、食肉に対する需要を減らし、食肉に関わるGHG排出量を減少させることで気候変動を抑制し、農業・畜産セクターにおける環境負荷の低減を実現することができます。
人口増加による飢餓
世界の人口は80億人を突破し、今後も人口増加が続くと予想されています。タンパク質は、人間が生きていく上で必要な三大栄養素の一つですが、人口が増加するとタンパク質の供給が需要を賄えなくなる「タンパク質危機」が起こると予想されています。また、現在の食料生産の体制は、環境負荷が大きく持続可能ではありません。グローバル全体で、環境負荷の小さい食事に転換することが求められています。
食品ロス(フードロス)
飢餓で苦しむ人が世界にいる一方、日本やアメリカといった先進国では、食品ロス(フードロス)問題が深刻です。食品ロスとは、まだ食べることができるのに捨てられてしまう食品や食材を指します。農林水産省によると、日本では年間で約522万トン、国民一人当たりに換算すると、お茶碗約一杯分(約150グラム)の食料や食材が廃棄されています。
そのため、食品ロスを出さない。あるいは、食品ロスを削減することで、有限な地球資源を守り、地球温暖化を抑制することにも貢献できます。
土壌汚染
世界の食料需要を満たすため、効率的にたくさんの穀物や野菜を生産するために多くの化学肥料や化学合成農薬が使用されています。国際環境NGOであるグリーンピースによると、化学肥料や農薬の使用量は年々増加傾向にあります。化学肥料や農薬の使用は、土壌汚染を引き起こすだけでなく、土壌に住む動物も一緒に殺してしまうなど、生物多様性の喪失にも大きな影響を与えています。
Coolfoodが行っていること
Coolfoodは、世界資源研究所(World Resource Institute:以下、WRI)によって運営されているイニシアチブです。そして、WRIは環境問題に対する解決策を提案する非営利団体です。Coolfoodは、企業や組織が提供しているメニューや食品の環境負荷を低減するための支援を行っており、具体的には、coolfood宣言(Coolfood Pledge)を行う方法と提供するメニューや食品に認証ラベル(Coolfood Meals)を表示するという2つの方法があります。それぞれ詳しく見ていきます。
Coolfood宣言(Coolfood Pledge)
イニシアティブであるCoolfoodが推奨しているCoolfood宣言は、企業や組織が提供する食品や食材の環境負荷を削減するため、科学的根拠に基づいた目標を設定し、達成することを目的としています。
企業や組織が、coolfood宣言を行う場合、まずは自社の提供する食品が気候変動に与える影響を削減するための科学的根拠に基づく目標を設定します。Coolfoodは、「Pledge(誓約)」「Plan(プラン)」「Promote(プロモーション)」の3つのステップを通じて、企業や組織が掲げた目標を達成できるよう支援します。
Pledge(誓約)
Coolfoodは、動物性食品と植物性タンパク質のデータを報告するよう求めています。宣言を行った企業や組織は、年に1度、購入した食品や食材を重量ベースでCoolfoodに報告します。Coolfood曰く、動物性商品と植物性たんぱく質のカーボンフットプリントに関するデータを合わせると、多くの場合、食材や食品関連で排出されるGHG排出量全体の80〜90%を占める傾向があるためです。
Coolfoodは、Coolfood Calculator(クールフード計算機)を使って食品の気候に対する影響を測定します。Coolfood宣言を行う企業や組織は、食品別のカーボンフットプリントや前年比の傾向を知ることのできるレポートを受け取ります。
Plan(プラン)
Coolfoodと同様に、WRIによって運営されているBetter Buying Labでは、一般消費者がより環境に配慮された食品を購入するために必要な戦略などを研究しています。Coolfoodは、Better Buying Laboの研究結果を参考にしながら、企業や組織が掲げた目標を達成できるよう戦略プロセスを通じてサポートします。
Promote(プロモーション)
Coolfoodは、企業や組織と協力しながら、消費者や従業員の感情を動かすメッセージを作成します。また、目標に対する企業の実績やパフォーマンスをマスコミやSNSで情報発信をします。Coolfood宣言を行う企業や組織のGHG排出量削減目標に対する実績は毎年発表され、またイベントでも表彰されます。
2023年8月現在、すでにCoolfood宣言を行っている企業には、大手家具ブランドであるIKEAやモルガン・スタンレーといった企業に加え、アメリカのニューヨーク市やイタリアのミラノ市といった地域もあります。
Coolfood宣言について詳しくはこちら
Coolfood Meals認証(Coolfood Meals)
Coolfood Meals認証は、一般消費者に対して地球温暖化対策に配慮したメニューであることを、シンプルかつ効果的に伝えることのできるラベルです。Coolfood Meals認証は、パリ協定で定められた2030年までに削減することが求められるとする食事あたりの炭素排出量の基準を満たしたメニューに対して与えられます。
認証を行っているWRIは、食材リストをもとに、農産物のサプライチェーンと農業・畜産のために使用された土地を分析し、料理のカーボンフットプリントを算出します。例えば、アメリカでは、朝食は3.81kg-CO2e/食、昼食と夕食は5.71kg-CO2e/食という基準が設けられています。一食あたりのカーボンフットプリントが基準値を下回り栄養基準を満たしていれば、クールフード・ミールとしてCoolfood Meals認証が与えられます。Coolfood Meals認証は、レストランだけでなく、病院や学校で提供されるメニューで見つけることができます。
Coolfood Mealsについて詳しくはこちら
最後に
一般消費者は、Coolfood Meals認証が社会に広く普及することで、自分たちの選んだ食事が環境に優しく、気候変動に対して貢献していることを知れるだけでなく、美味しい食事を通じて環境への負荷を減らすことが可能です。
ラベルを表示することで、消費者の行動が変わるかどうかは、もう少し時間が経ってみないと分かりません。しかし、私がオランダに滞在した際、卵やハムといった食品には、動物福祉にどの程度配慮しているかが分かるラベルが貼ってありました。ラベルは、問題を知るきっかけや意識するきっかけを与えてくれます。
Coolfood Meals認証の普及によって、消費者の意識が変化し、食事を通じて環境に配慮する人が増えることに期待したいと思います。