ドバイ万博のサステナビリティプロジェクト「Terra(テラ)」の展望
異常気象による大雨、洪水、干ばつ、山火事による物理的被害が世界中で拡大しています。また、大量生産・大量消費による廃棄や、海洋プラスチック問題による大きな環境負荷も人類にとって大きな課題です。世界の気候変動や環境問題に対する意識は高まっています。
2021年10月から半年間に渡って開催されたドバイ万博では、サブテーマの一つに「サステナビリティ」を掲げています。
この記事では「サステナビリティ」を代表しているTerra(テラ)パビリオンと展示内容について紹介します。
テラパビリオンについて
まず中をご紹介する前にパビリオンについてご紹介します。
テラは全体が太陽光パネルに覆われており、建物で必要なエネルギーを発電しています。さらに、周辺にはエナジーツリーと呼ばれる太陽光に覆われたタワーが設置されており、ひまわりのように太陽の方向を向くようになっています。テラは必要なエネルギーを100%この太陽光発電で賄っており、余ったものは他の建物に供給しているそうです。また、エネルギーの使用量を減らす工夫として、建物全体が地下に建てられています。
テラの周辺には多くの植物が植えられており、気温が上昇しにくくなる工夫がされていました。これらの植物はドバイのような暑い地域、かつ塩分濃度の高い水でも育つことのできる植物です。葉っぱを触ってみると指に塩っぽさが残っていました。(スタッフの方は味見をしたそうですが、本当に塩っぱいそうです!)
最後に、テラはサステナブルな建物であることを表すLEEDプラチナ認証も取得しています。ドバイ万博の建物で最上級のプラチナ認証を取得しているのはテラとサウジアラビアパビリオンの2つだけです。
過去から未来へ向かう壮大なストーリー
テラの入り口は建物からではなく、外の入り口から始まっており、大きく過去、現在、そして未来の3つのゾーンに分けられています。過去がどのような姿だったのか、現在何が起こっているのか、そしてどのような未来になっていくのか。
テラとは「地球」や「大地」を意味しますが、最後は地球をより身近に感じることのできる壮大な物語になっています。
それでは早速、テラの展示内容についてご紹介していきます!
過去に実在した動物について
建物の外側が過去のゾーンになっており、現在は消滅してしまいましたが、過去にアラビア半島に実在した動物が実物大の置き物や足跡と一緒に展示されていました。
また、この地域の遊牧民であるベドウィン族についても紹介されていました。彼らはその地域にあるものを食べながら、また持ち物も少なくとてもサステナブルなライフスタイルを送っています。
私たちの人間活動によって起こっていること
建物の入口からが現在のゾーンになっています。1700年から始まり、全ての数値が上昇しています。グラフは上へ向かっており、良い方向に進んでいると感じるかもしれません。しかし、項目を見ると上から「農地の利用面積」「エネルギー消費量」「二酸化炭素の排出」「人口」「GDP(国内総生産)」を表しており、決して増加して良いものばかりではありません。実際に足元はスロープで下に向かっており、生活が豊かになる一方で私たちの生活基盤である地球環境は悪化していることが表現されています。
中へ進んでいくと、大人も子どもも楽しめるさまざまなゲームが設置されていました。これらのゲームは、地球の限界を意味するプラネタリー・バウンダリーの内容にも触れられています。
例えば、このハンマーを使用するゲームは海洋の酸性化に関するもので、ハンマーを叩くと地球が上昇します。しかし強く叩けば良いのではなく、中心にある「8.2pH」に止める必要があるので、少し弱めに叩く必要があります。
一方で生物多様性については、今後多くの努力を行う必要があります。WWFが2020年に発表したレポートによると、過去50年で生物多様性の68%が喪失しています。よってハンマーは思い切り強く叩き、回復させる必要があることがわかるようになっていました。
他にも、今私たちが直面している気候変動などの地球環境問題は、年齢や国籍関係なく全員で協力していく必要があるというメッセージが込められたバランスゲームもありました。
余談ですが、このゲームコーナーの周辺に使用されている鉄はリサイクルされたものが使用されています!
アート作品も
こちらはUAEのアーティストによる作品です。上から見るとハグしたような形になっており、UAEが世界に対してフレンドリーであることを象徴しています。黒地のものは女性のアバヤを表し、白地のものは男性のカンドゥーラを表しています。
まとめ
Terra(テラ)は、いかがでしたでしょうか?
本記事では、過去のゾーンと現在ゾーンを紹介しました。次の記事では、森林と海洋のゾーン、そして未来ゾーンの展示内容に触れます。