欧州のスーパーマーケットに学ぶ|サステナブルな取り組みを紹介
海外のスーパーマーケットには、日本では見かけないさまざまな野菜や食品が並んでいます。オランダやドイツのスーパーマーケットでは、商品の物珍しさだけでなく、「アニマルウェルフェア(動物福祉)」や「人権」「環境」などの視点でも興味深い発見があります。そこで、日本の小売業も取り入れることのできるのでは、と感じた4つのポイントを紹介します。
可視化して伝えることの大切さ
オランダのスーパーマーケットでは、冷蔵や冷凍商品が並んでいる扉に「環境を守ろう。商品を選んでから冷蔵庫や冷凍庫を開けて下さい。ありがとう!」というメッセージが書かれています。環境に配慮する地道な取り組みかもしれませんが、メッセージがあることで、扉を開けながら商品を選んでいる買い物客を目にすることはありませんでした。
また、アニマルウェルフェア(動物倫理)に対する意識が高い西洋らしい取り組みもあります。17世紀のイギリスで、宗教や思想を通じて動物にも感情があるという概念が生まれました。近年では、工業的だと指摘される集約型畜産による環境問題や食の安全性という面でもアニマルウェルフェアが注目されています。
鶏卵コーナーでは、鶏卵のブランドを問わず「The Better Life tag」によって、養鶏場のアニマルウェルフェアに対する取り組みのレベルが星のマークによって可視化されています。星マークの評価は、3段階に分かれています。
The Better Life tagについて、詳しくはこちら▼
オランダのスーパーマーケットでは、アニマルウェルフェアへの関心がある・ないに関わらず、買い物客がアニマルウェルフェアの取り組みについて一目で理解できるよう工夫されています。アニマルウェルフェアに関心がなくとも、商品にその取り組みが記載され可視化されることで、動物に優しく配慮された商品を選ぼうという気持ちが生まれます。
日本のスーパーマーケットでは、「国産」や「県産」など、地産地消を推進する取り組みをよく目にしますが、ドイツのスーパーマーケットも地産地消を強く推奨しています。地産地消の食材を消費者に勧めることは、サステナビリティを推進する上で基本的な行動です。
「あなたの地域から…」と情報発信されています。
地産地消は、消費者は安全かつ新鮮な食材が手に入り、生産者は流通経費の削減によって収益が増加するといったメリットがあります。さらに、地産地消が進むと、食材の輸送距離は短くなります。そのため、輸送に必要な燃料消費量の削減や輸送過程で排出される温室効果ガスの排出量の削減にも繋がります。
多様性が生む選択肢の多さ
消費者の多様なニーズに応えるための工夫が行われています。食の多様性と聞くと、イスラム教の「ハラール」やユダヤの「コシャー」を思い浮かべるかもしれません。また宗教だけでなく、思想の一つである「ヴィーガン(完全菜食主義)」もあるでしょう。
欧州のスーパーマーケットでは、置かれている商品の多くが原料特定や環境や人権配慮を証明する第三者認証を取得しています。例えば、オーガニック認証、ヴィーガン認証、ベジタリアン認証、サステナブルな海産物であることを証明するMSC認証などです。
野菜売り場には、オーガニック商品と従来の商品の両方が置かれています。また、動物性由来の食材を口にしない「ヴィーガン」や乳糖を除いた「ラクトースフリー」といった分類分けもラベルで分かりやすく行われています。
上の段には、オーガニック(BIO)と書かれた茄子やズッキーニが陳列され、下の段には農薬を使用したオーガニックではない野菜が陳列されています。
似た商品のため、混ざってしまうことも考えられますが、シールが貼ってあるのでオーガニック商品かどうかを見分けることができます。
バナナを購入する際、サステナビリティを考慮する情報源として「PRO – PLANET INFO」を活用してほしいと書かれています。PRO – PLANET INFOは、従来の商品と比較して、より環境や生産者、アニマルウェルフェア(動物倫理)に配慮していることを表しています。
また、商品だけではなく、商品の説明に使用されている紙の一部には、持続可能な森林の活用・保全を目的とした国際的な制度「FSC認証」を取得したプリント紙が使用されています。
第三者認証の取得は、環境や生物多様性、アニマルウェルフェアに配慮したい消費者が安心して商品を購入できるようにします。また、企業は第三者認証を取得することで、客観性を担保しグリーンウォッシュを避ける事にも繋がります。
量り売りやデポジット制度でプラスチック削減
野菜やフルーツなどを販売する生鮮食品コーナーでは、プラスチック削減のため、野菜やフルーツが包装なしで販売されています。私はりんごを購入しましたが、日本でよく目にする小分け用のポリ袋は置かれていませんでした。ナッツ類やチョコレートの量り売りコーナーもあります。そこに置かれている袋も、プラスチック製ではなく紙袋です。
また、多くの商品がプラスチック製の容器ではなく、瓶に詰められて販売されています。ドイツには、pfand(プファンド)と呼ばれるデポジット制度が存在します。pfandとは、プラスチックや瓶、缶の商品を購入する時に余分に支払いをし、返却することで返金される仕組みのことです。
こちらが返却を行う機械です。
ベルリンで街を散策していると、ゴミ箱の横や路上にビール瓶が置かれている光景を目にします。これは、ホームレスの方々が回収し、収入にするために置かれています。
ドイツのスーパーマーケットの野菜売り場には、日本と同様にバラ売りの玉ねぎやパプリカなどを入れるための半透明のプラスチック袋が置かれています。しかし、ドイツの野菜売り場では、半透明のプラスチック袋のすぐ隣で、繰り返し使うことのできる袋が販売されています。
「お気付きですか?今すぐ再利用可能な袋に変えて、ビニール袋削減に取り組みましょう」と消費者に訴えかけるメッセージが掲げられています。
日本では、2020年の7月からレジ袋が有料化されました。以来、多くの人がマイバッグを持参して買い物をするようになりました。しかし、万が一忘れた場合でもレジ袋を購入することができます。ドイツの場合は、プラスチック製のレジ袋ではなく、紙袋が販売されています。
最後に
環境やアニマルウェルフェアへの取り組みを可視化することは、消費者に対して店舗の実際の取り組みを知ってもらえるだけではありません。環境やアニマルウェルフェアに対する関心が低い消費者が、これらの問題を知り意識するきっかけにもなります。
日本では、2020年の7月からレジ袋が有料化されました。また、ヴィーガンやオーガニックの商品を扱う専門のスーパーマーケットも増えています。これらは、環境や多様性に関する小さな取り組みかもしれません。しかし、これらの取り組みが日本でもさらに広まっていくことで、日本の消費者の商品選びの基準が変わっていくのではないかと感じます。
ドイツのドラッグストアの取り組みについても紹介しているので、気になる方はこちらもご覧ください。