サステナブル旅行推進団体「Travalyst」が掲げるビジョン
非営利団体Travalystが、 2024年9月24日にニューヨーク市で開催されたClimate Week NYC* で設立5周年を祝い、今後5年間のビジョンを発表しました。
そのビジョンとは、旅行と観光に関する持続可能性データの収集と配信を一元化し、旅行者が旅行方法と旅行先について十分な情報に基づいた決定を下せるようにするという革新的な取り組みです。
本記事では、サステナブル旅行推進団体Travalystについてや、Travalystの掲げるビジョンについてご紹介します。
*Climate Week NYC:毎年ニューヨーク市で開催される世界最大級の気候変動イベント。ビジネス、政府関係、金融、国際機関など各方面から、気候変動対策に影響力のある代表者がプログラムに参加し、脱炭素ビジネスの最新情報や意見の交換を行う。
サステナブル旅行推進団体「Travalyst」
2019年にサセックス公爵ハリー王子によって設立されたTravalystは、下記のような観光業とテクノロジーの大手企業が数多く加盟する非営利団体です。
- アマデウス
- ブッキング・ドットコム
- エクスペディア・グループ
- グーグル
- マスターカード
- セーバー
- スカイスキャナー
- トラベルポート
- トリップ・ドットコム
- トリップアドバイザー
業界をリードする企業を集め、信頼性が高く一貫性のある持続可能性に関する情報を収集・提供することで、観光産業の発展を加速させる取り組みをおこなっています。
観光産業全体のパートナー企業、および世界をリードする学者と持続可能性の専門家からなる独立諮問グループと緊密に連携し、持続可能性情報の提供を合理化・拡大。個人旅行者とビジネス旅行の両方から高まる需要に対応しています。
サステナブル旅行における課題
観光産業は、世界の温室効果ガス排出量の約8.8%を占めており、地域コミュニティ、生物多様性などに広範な影響を及ぼしています。また、サステナブルな旅行を望む消費者は存在するものの、正確な情報を得られずに実現に至らないという課題があります。
現在、観光産業の持続可能性データに関する唯一で信頼性の高い情報源はありません。存在している情報は、断片的で不完全であり、有料の場合もあります。この状況により、旅行者は情報を収集しようとしても混乱し、ストレスを感じ、次第に関心を失ってしまいます。
Travalystはこの現状を改善しようとしています。
Travalystの掲げるビジョン
Travalystでは、設立当初から、旅行を計画および予約する時点で持続可能性に関する情報を旅行者に提供することを目的としてきました。宿泊施設プロバイダーに観光産業全体で同じESGデータを共有し、当該情報を拡張して、旅行者が料金やレビューなどの情報だけではなく、宿泊先の全体像を把握することが可能になるように取り組んでいます。
情報へのアクセスを合理化することにより、旅行者は重要なESGデータを素早く確認でき、親和性・信頼性の高いプラットフォームですべての人が無料で情報共有できるようになります。取り扱う情報に関しては、各宿泊施設の事業内容からフライトのルートベースのCO2排出量の推定まで、あらゆる項目を網羅することを目標としています。
2024年9月、Travalystは主要なOTA*において、フライトのCO2排出量推定値を確認できるように機能を拡張したことを発表しました。これは、旅行者がよりCO2排出量の少ない選択肢を見つけられるようにするための第一歩です。
Travalystは現在、この成功を基に、同様の機能拡張を鉄道、アクティビティ、目的地などの他分野でも推進することを目指しています。
*OTA(Online Travel Agent、インターネット上だけで取引を行う旅行会社)
この目的を達成するため、 Travalystは、同社と同じビジョンを共有する組織である Weevaプラットフォームの買収も発表しました。Weevaチームは観光事業の持続可能性の管理を簡素化できるように設計されたデジタル・プラットフォームを構築し、高く評価されています。Travalyst はWeevaを買収して次の段階の作業に統合することを策定しています。
参考:Weeva Sustainability Management Standard gains GSTC-Recognized Standard Status
最後に
今回は、サステナブル旅行推進団体「Travalyst」の画期的な取り組みを紹介しました。宿泊先を選ぶとき、料金やレビューなどの情報がまず目に入りますが、フライトの排出量などの情報が一気に確認できるようになると、宿泊先の選び方が変わってくるかもしれません。
Travalystの取り組みにより、より正確な情報に基づいた真の「サステナブルな旅行」の選択をおこなえる日が近づいています。
参照