グローバル企業の持続可能性|環境負荷削減と動物愛護の最前線
皆さんはフットプリントという言葉を聞いたことがありますか?フットプリントとは、元々英語で「足跡」を意味する単語です。つまり、ファッション業界のフットプリントとは、私たちの生活が環境にどの程度影響を与えるかを表す指標です。この指標が高いほど環境へ負荷をかけた生活をしていることになるため、数値の削減が求められています。
また、併せて考えたいのがサーキュラーエコノミーの実現です。ものを作る際に、製品・部品・資源を最大限に活用し、永続的に再生・再利用し続ける動きです。このことはSDGs目標12と共に、目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさを守ろう」にも貢献します。
この記事では持続可能な世界のために、フットプリントの削減や、動物愛護に力を入れているグローバル企業の事例をご紹介します。
「2050年カーボンニュートラル宣言」に見る日本のCO2削減目標
フットプリントの削減には、CO2の削減が密接に関わっています。日本では2020年10月の臨時国会にて管総理大臣(当時)が「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と、カーボンニュートラル宣言をしました。これにより、大幅にCO2排出量を削減させるための動きが出ています。
また、CO2の削減と共にCO2の吸収量を増やす動きも出ており、植林やCO2を回収し貯留する技術の確立も進んでいます。
このカーボンニュートラルの動きは日本だけでなく、世界124カ国と1地域が実施を表明しています。
フットプリントの削減や、動物愛護に力を入れている企業3選
持続可能な資源の利用と保全は、今や全世界で急務となっています。ビジネスを展開させる上で、CO2排出量の削減、素材のリサイクル、環境・生態系保全への対策は意識しなければならない重要な問題です。
今回はCO2削減に具体的な施策を講じている企業allbirdsや、独自の技術で素材をリサイクルし、動物愛護にも力を入れているECOALFの例を見ていきましょう。
allbirds
allbirdsは世界8カ国と1地域でシューズ・アパレルなどを扱う企業で、天然素材を使用した商品を豊富に取り揃えています。
2025年までにフットプリントを半減させ、2030年までにゼロにすることを宣言しています。そのために商品ごとに出るCO2排出量を可視化し、削減するための具体的な施策を掲げています。
フットプリント削減のために、環境負荷の低いウール素材を積極的に使用。ウール調達先農場では、CO2排出量を0にする働きをしています。また、農場での羊の放牧は生物多様性や生態系の維持にも繋がります。
商品作りにおいては、石油を使わないことを推進。リサイクル素材と持続可能な天然素材を掛け合わせ、製品全体の75%以上を使用するようにしています。
また、CO2を排出しない新素材の開発にも力を入れています。サトウキビを素材としたスニーカーソールや、ユーカリの繊維を利用した生地などが代表的です。素材の原料となる植物がCO2削減を進めると共に、灌漑を必要としない農場の運営は環境に負荷をかけません。
それから、加工以外にまつわるフットプリント削減にも力を入れています。CO2排出量が少ない海上輸送を選択し、梱包や素材を無駄なく使い切る、商品の寿命を長くする商品開発などを行っています。
商品原料の生産から、商品が顧客の手に渡った先までを見据えたフットプリント削減への動きは、他の企業も見習うべき点が多くあります。
ECOALF
ECOALF はすべてのアイテムを再生素材や環境負荷の低い天然素材のみで作っている、ヨーロッパ発のサステナブルファッションブランドです。
ECOALFは、商品開発の際に使用する生地を、独自の技術で廃棄物をリサイクルして生み出しています。地球環境を無視した自然資源の活用をせず、リサイクルされていない製品と同等の品質・デザインの製品を製作しています。
ECOALF独自のリサイクル技術を活用し行っているのが、海洋プラスチックゴミを回収・分別・再生し、新たな製品を作るプロジェクトです。
スペインの40以上の漁港と協力し、2015年より地中海海底から500トン以上のゴミを回収・リサイクルして製品を作ってきました。この活動は2017年よりタイでも行われるようになり、日本へも活動の輪が広がっています。
リサイクルは、加工に関わるエネルギー節約にも繋がります。廃棄ナイロンのリサイクル製品は、新たに製品を作る場合と比べ作業工程・処理が半分になり、電力と水の消費量を削減することが可能です。
ウールなどの繊維もリサイクル素材を使用することで製品の耐久性が高くなり、尚且つ環境への負荷を最小限にしてくれます。
また、陸上生態系の保護も進めています。まだ日本では動きが弱いですが、豊かな生態系を維持するためには、動物愛護に対応することが必要です。特に、動物の毛や皮を原料に使うアパレルメーカーでは対策が重要になってきます。ECOALFは、そうした動物愛護の視点もしっかりとらえています。
ECOALFでは2015年以来、皮革は使用しないことを決定しています。それは皮革を仕入れる際に、そのルーツが明確にならないためです。皮革を製作するにあたり、動物虐待がなかったことを担保することが難しいため、現在は一切の皮革を使用しないことになっています。
また、同じく動物を原料とする毛皮製品についても使用を慎重にしています。寒いときに体を温かく包んでくれるダウン製品は、水鳥の羽毛を利用して作られています。一方で、羽毛を手に入れる際に、生きたまま毛をむしられるなどの虐待がなかったかを結論づけることは非常に難しいのです。
ECOALFでは動物愛護の観点から、羽毛の代替素材であるPrimaloft Silver Insulationを広く採用。羽毛を使用せず、高い断熱性能と伸縮性を確保した商品の製造を行っています。
まとめ
本記事でご紹介したのは、販売店や取り組みが日本国内にも及び、わたしたちにとって身近な存在の企業です。
環境資源の保全は意識するだけにとどめず、計画を持って具体的に取り組むことが重要です。今回紹介した3例は、どれも「なにをすべきか」を踏まえて、「いつまでにどうするか」がとても明確になっていました。具体的に落とし込んで行動につなげることは、環境保全に際してとても重要な視点といえるでしょう。
また、環境資源の保全にあたっては、一つの事象ばかりに気を取られず、俯瞰して物事を見ることも大切です。サスティナブルな素材を使うだけでなく、素材を生み出す際に使われるエネルギーや、物流にかかるCO2まで意識をするなど、全体を通して無駄な資源を使用していないか今一度考えることは参考にすべき点です。
企業の活動に比べ、わたしたち個人ができることのインパクトは小さいかもしれません。しかし、物事を俯瞰的に見て、自分には何ができるかを考えること、そしてそれを滞りなく実行していくことは、持続可能な世の中を作っていくにあたり、非常に意味のあることではないでしょうか。