与論島とニセコが持続可能な観光地トップ100に選出|選ばれた理由とは?
国際的な認証団体である Green Destinations(以下、GD)は、毎年、持続可能な取り組みをしている観光地のうち、トップ100選を発表しています。日本でもトップ100選に入る地域があり、地域の問題を解決する取り組みが国内外で高い評価を受けています。
本記事ではサステナブルツーリズムの視点から、トップ100選に選ばれた与論島とニセコの2つの事例をご紹介します。
サステナブルツーリズムとは
サステナブルツーリズムとは、直訳すると「持続可能な観光」であり、観光地の地域文化と環境保全を第一に考えた観光スタイルです。観光客が楽しむことだけを追求するのではなく、その地域の経済と居住者の生活をより豊かにし、文化や伝統を守ることを軸とした取り組みです。
また、サステナブルツーリズムは、国際自然保護連合(IUCN)が定める持続可能な観光の基準「世界規模サステナブルツーリズム(GSTC)クライテリア」という国際的な認証制度によって認証を受ける流れとなります。
サステナブルツーリズムが注目される理由
近年、日本でもサステナブルツーリズムが注目されています。主な理由は次の2点です。
飛行機による環境負荷
飛行機を使う旅行も非日常を味わえる点ではリフレッシュになります。しかしながら、観光業界における二酸化炭素排出量のうち49%は「輸送」というデータも出ているので、旅行先での行動を見直す必要があるかもしれません。
以下の輸送の内訳のグラフでもわかるように、飛行機と自動車による移動はCO2排出量の割合がかなり多くを占めています。世界各地で水際対策が緩和されているため、再び飛行機を使ったツアー件数が増える見込みです。サステナブルツーリズムの観点から考えると、今まで飛行機を使っていた観光地の移動手段を、電車でアクセスできる場所であれば電車に切り替えるという選択肢を検討する必要があるかもしれません。
人が集まったことによる環境汚染と自然破壊
観光地に人が集中する場合、現地の雰囲気は活気づき、そこで働く人たちの収入も安定するメリットがあります。その一方で懸念されているのが、多くの人が訪れることによって地域の環境を乱してしまうことです。実際のところ、ゴミを所定の場所に捨てないといったポイ捨てなどがあります。このような現状を踏まえて、環境保全を考えたサステナブルツーリズムを推す流れになっています。
与論島とニセコの2地域が Green Destinationに選ばれた理由と取り組み
2021年に与論島とニセコの2地域がGreen Destination(以下、GD)に選ばれました。どのような観点から選ばれたかという理由について解説します。
与論島
与論島では観光客が減ったことをきっかけに、島の自然環境や伝統文化、島民の暮らしを守りつつ、地域をより豊かにする活動を進めました。島民が美しい海を守るために砂浜清掃などといった海洋保全に注力したことで、島内60カ所の海岸のゴミがなくなり、その功績が評価されGDに選ばれました。ほかにもボランティアダイバーが年に2回のペースでサンゴ礁の増減や状態を確認し、海底全体の保全にもつなげています。
また、次世代に向けた環境教育も盛んであり、地域連携型の探究学習として地元の小中高で海洋教育を実施しています。海の実態や歴史、伝統文化を愛でる心や保全のレクチャーをしています。このようなカリキュラムによって、子どもたちが主体的に探究する姿勢を獲得できるよう促しています。
ニセコ
ニセコは国内外の旅行者が多い人気の観光地として知られています。ニセコでは、生ゴミの堆肥化や再生可能エネルギーの導入などを積極的に行い、「環境モデル都市」「SDGs未来都市」のポジションとして環境負荷の低減を目指しつつ、地域のさらなる活性化に力を入れています。冬場は化石燃料のCO2削減を促進するため、地中熱や地熱・温泉熱などを利用できるよう産学と連携を進めています。
地域との関係性がサステナブルツーリズムを定着させるポイント
サステナブルツーリズムを定着させるためには、意義や目的を理解するとともに、地域全体の協力を得ながらコミュニケーションを取ることが必要不可欠です。また、地域住民やこれからを担う若者、産官学が連携することで、GSTCの世界基準に合わせたサステナブルツーリズムが実現します。サステナブルツーリズムによって、これら全ての人たちの豊かな生活を叶えられるよう、今私たちにできることを考えていきましょう。