化学メーカーの人権デューデリジェンス|積水化学工業の取り組み事例
コーポレートガバナンス・コードの改定や、ESG(E=環境、S=社会、G=ガバナンス)という言葉の認知度が広がったことで、多くの企業が気候変動対策や人権に対する取り組みを強化しています。
今回は積水化学工業株式会社(以下、積水化学)の人権への取り組みについてご紹介していきます。
積水化学グループ「人権方針」
積水化学グループは、自らの事業活動において影響を受けるすべての人々の人権を尊重し、取り組みを推進するため、「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく、積水化学グループ「人権方針」を以下のように定めています。
1. 人権に対する基本的な考え方
この人権方針は、すべてのステークホルダーに対する責任を果たすため、人権尊重の取り組みを約束するものです。そのため、我々はすべての人びとの基本的人権について規定した国連「国際人権章典」や、労働における基本的権利を規定した国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」に加え、「賃金や労働時間など労働者の人権に関する条約」、国連「先住民族の権利に関する国際連合宣言」などの人権に関わる国際規範を支持し尊重します。さらに、国連グローバル・コンパクト(以下、GC)署名企業としてGC10原則を支持し尊重しています。
2. 適用範囲
積水化学グループのすべての役員と従業員に適用します。加えて、自社の製品・サービスに関係するすべての取引関係者(ビジネス・パートナー)に対しても、本方針の遵守を求めます。
3. 人権尊重の責任
事業活動において、負の影響を完全には排除することは難しいと考えており、事業活動において影響を受ける人々の人権を侵害しないこと、また自らの事業活動において人権への負の影響が生じた場合は是正に向けて適切な対応をとることにより、人権尊重の責任を果たし、責任あるサプライ・チェーンを築いていきます。
4. 人権デューデリジェンス
人権デューデリジェンスの仕組みを構築し、社会に与える人権に対する負の影響を特定し、その未然防止および軽減を図ります。
5. 対話・協議
人権方針を実行する過程において、独立した外部からの人権に関する専門知識を活用し、ステークホルダーとの対話と協議を真摯に行います。
6. 教育・研修
人権方針がすべての事業活動に組み込まれ、効果的に実行されるよう、適切な教育・研修を行います。
7. 救済
事業活動が、人権に対する負の影響を引き起こしたことが明らかとなった場合、あるいは取引関係者等を通じた関与が明らかとなった、または関与が疑われる場合には、国際基準に基づいた対話と適切な手続きを通じてその救済に取り組みます。
8. 責任者
人権方針の実行に責任を持つ担当役員を明確にし、実施状況を監督します。
9. 情報開示
人権尊重の取り組みの進捗状況およびその結果を、ウェブサイトなどで開示します。
10. 適用法令
事業活動を行うそれぞれの国または地域における法と規制を遵守します。国際的に認められた人権と各国の法令に矛盾がある場合には、国際的な人権原則を最大限に尊重するための方法を追求します。
2020年度は、人権デューデリジェンスや教育に関する取り組みを開始しており、今後もグループの全従業員およびサプライヤーなどビジネスパートナーに対して、本方針の理解・浸透を図っていきます。
人権デューデリジェンスの仕組み構築み向けた取り組み
人権デューデリジェンスに取り組むにあたり、最初の取り組みとして行なったのが、グループ内における潜在的な人権リスクの特定でした。
専門機関に依頼し、主要事業における人権リスクアセスメントを実施。その結果に基づいた社内ヒアリングをグループ会社駐在経験者および社内関連部署に対して実施しています。
- 児童労働
- 適正賃金
- 適正な労働時間
- 職場における差別
- 現代奴隷
- 結社の自由と団体交渉権
- 先住民族の権利
- 土地、財産および住宅に関する権利
- 労働安全衛生
- プライバシーの権利
上記の10の人権課題について「住宅」「自動車部品」「産業別機械および製品」「製薬」という4つの産業ごとの人権リスクスコアを算出し、グループ会社が所在する国ごとのリスクを加味した結果、積水化学グループの事業活動では主に海外(中国・インド・タイ・ブラジル)において労働安全衛生等の潜在的な人権リスクが高いことが確認されました。
社内ヒアリングを実施
人権リスクアセスメントを通じて潜在的リスクが高いと提起された国および人権課題についてのヒアリングを、タイ・中国・インドのグループ会社駐在経験者および社内関連部署に対して行い、アセスメント結果と実際の弊社事業との間にギャップが生じていないかどうかを確認しました。
生の声を通じてポジティブな状況、さらなる状況確認が必要とされる事案どちら要素も把握することができました。
また、国内でも外国人労働者に対するインタビューやヒアリングを行いました。その結果、大きな人権リスクはありませんでしたが、工場内での案内、告知文の多言語化の必要性など、改善すべき課題が見つかりました。
今後は、課題の対処に関する追跡評価などを行うとともに、海外においても同様の人権インタビューを実施することで、人権デューデリジェンスの仕組みを構築していきます。
全体で人権を尊重していくために
全グループ従業員に対して「コンプライアンス・マニュアル」を提供し、人権尊重と差別の禁止、ハラスメントの防止、個人情報の保護などを厳格に求めており、ハラスメントの防止については、研修やe-ラーニングを併せて実施。従業員の理解促進に努めています。
また、取引先に対しては日本語のほか英語と中国語の翻訳版を作成、日本語版と英語版をWebサイトに掲載するなど調達方針の多言語化を進めています。
人権デューデリジェンスの質をさらに向上していくため、認定されたサプライチェーン関連のイニシアチブへの署名、参加を検討していきます。
最後に
積水化学工業株式会社の人権への取り組みについてより詳しく知りたい方は以下の資料をご覧ください。