食品メーカーの人権デューデリジェンス|味の素株式会社の取り組み事例
コーポレートガバナンス・コードの改定や、ESG(E=環境、S=社会、G=ガバナンス)という言葉の認知度が広がったことで、多くの企業が気候変動対策や人権に対する取り組みを強化しています。
今回は、味の素株式会社(味の素)の人権への取り組みをご紹介します。
人権へ配慮する必要性や人権デューデリジェンスについてはこちらをご覧ください。
人権尊重に関するグループポリシー
このポリシーは「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいており、国際的に認められた人権を尊重し、事業活動を行う国の国際的人権義務、そして関連する法令の順守を徹底するために定められています。
- 適用範囲
本ポリシーの適用範囲は、味の素株式会社およびその子会社ならびにこれらの役員(これに準ずる者を含む。)および従業員(嘱託、パート従業員、臨時従業員等、期間を定めて雇用される従業員を含む。)(以下併せて「役職員等」という)とします。 - 人権尊重の責任
味の素グループは、他者の人権を侵害せず、自らの事業活動上生じる人権への負の影響に対処するものとします。また、すべての取引先をビジネスパートナーとして認識し、味の素グループが直接には人権への負の影響を助長していない場合でも、味の素グループのビジネスパートナーおよびそのほかの関係者がサプライチェーンにおいて人権への負の影響につながっている場合、味の素グループは、当該関係者に対し、人権を侵害しないよう働きかけるものとします。 - 人権デュー・ディリジェンス
味の素グループは、人権尊重の責任を果たすため、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、これを継続的に実施するものとします。ここで「人権デュー・ディリジェンス」とは、味の素グループが社会に与えうる人権への負の影響を予防的に把握し、回避、緩和するために実施される継続的なプロセスを指すものとします。 - 是正
味の素グループが人権に対する負の影響を引き起こした、または負の影響を助長したことが明らかになった場合、適切な手段を通じて、その是正に取り組むものとします。 - 情報開示及び教育・訓練
味の素グループは、本ポリシーに基づく人権尊重の取り組みの推進状況について、味の素グループのウェブサイト等にて、情報開示を行うものとします。また、味の素グループは、本ポリシーの実効性を担保するため、役職員等に適切な教育・訓練を行うものとします。 - ステークホルダーとの対話・協議
味の素グループは、実際のまたは潜在的な人権への負の影響に関する対応について、関連するステークホルダーと対話の機会を確保しつつ、誠意をもってステークホルダーとの協議を行うものとします。 - 人権に関する重点課題
味の素グループは、人権に関する重点課題を別表「味の素グループ 人権に関する重点課題」のとおり設定し、本ポリシーに基づき人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築した上で適切に実施するものとします。
なお、当該重点課題については、社会の変化や事業の動向などを踏まえ、適宜見直しを図るものとします。
推進体制について
社会の企業に求める幅広い人権への対応と国連指導原則の実践を図るため、2017年に人権専門委員会の機能を強化しました。従来の国内人権課題に加え、グローバルな人権課題に対する検討や啓発を進めています。今後も人権デューデリジェンスによる人権マネジメントの推進機能を強化していきます。
味の素の人権デューデリジェンス
まずは全体のリスクの特定から始めています。
グループ全体のリスクを把握するため、国・地域別の一般的な人権リスクの基礎調査を実施しています。その後、食品業界特有の人権リスクを大まかに押さえながら、他社で顕在化した人権リスクの具体的な事例を100件以上リスト化し、バリューチェーンの各パートごとに整理・分析しました。
それらを味の素にとっても潜在的な人権リスクとしてまとめ、取り組むべき重要課題として明確にしました。バリューチェーンにそれぞれ落とし込むと以下のようになります。
サプライヤーとの取り組み
「サプライヤー取引に関するグループポリシー」に定めたサプライヤーに対するサステナビリティ観点での期待事項をお伝えし、サプライチェーンにおける社会・環境的側面の持続可能性確保に協働して取り組むべく、サプライヤーにご理解・ご協力をお願いしています。2018年度には企業倫理データのプラットフォームであるSedexに加入しています。
また、技能実習制度や特定技能の在留資格を持つ外国人労働者の受入れに関し、一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・ サプライチェーン(ASSC) が策定した「外国人労働者の責任ある受入れに関する東京宣言2020」への賛同を表明し、サプライヤーに対し、日本で働く外国人労働者がいきいきと働ける環境の整備を要請しました。今後はグループ内同一基準でのサプライチェーン管理体制を2025年度までに構築することを目指しています。
相談窓口の設置
「サプライヤーホットライン」を設置し、役員・従業員からの通報窓口のほか、取引先からの通報窓口を開設し、グループ役員・従業員の法令違反や「味の素グループポリシー」(AGP)逸脱の疑いのある行為の早期発見と是正を図っています。
またグループ会社3社の外国人労働者に対し、労働者の声をモニタリングする「ワーカーズボイス」システムを導入しました。生活する上で困っていることの相談を含め、NPOに多言語対応で受け付けてもらい、労働・人権関連の相談については味の素グループに通報が届くホットラインとして活用します。将来的にはサプライチェーンに展開し、労働・人権問題等を早期に発見する手段の一つとして活用していくそうです。
従業員に対する人権教育
あらゆる差別やハラスメントなどの人権問題への理解を促進するとともに、豊かな人権感覚を身につけた人財の育成を目的に、各社で人権啓発研修を行っています。2019年にはグローバルに人権eラーニングを実施しました。日本では全従業員、海外ではマネージャーを対象に、世界人権宣言と指導原則の内容をセットにした教材と、それが自社のビジネスとどのように関係するのかという点について具体的な理解につながる教材を二本立てで制作しています。
さらに、全従業員を対象としたハラスメントのアンケートを継続して実施しており、これまでのアンケートで寄せられた意見・事例等をハラスメント事例集としてまとめ、全従業員にフィードバック、全職場での職場点検を実施するなど、ハラスメントの防止に向けた取り組みを推進しています。
今後も、人権意識の高い企業人の育成を目指して取り組みを進めていきます。
事業における人権への配慮
製品の製造からお客様にお届けするまで、サプライチェーン全体で人権を尊重した取り組みを進めています。
新製品・新事業の立ち上げ時や新しい工場・事務所の建設には、品質・環境などさまざまなアセスメントを実施し、人や地域社会への影響評価を行うことで人権への配慮を進めています。
またサプライチェーン全体で、児童労働、不法就労等の人権侵害に関わるものでないことを確認するため、取引先に人権尊重の協力を要請しています。
障がい者雇用の拡大
グループ各社が障がい者雇用に積極的に取り組み、新たに業務を見出し、障がい者が活躍できる場を創出してきた結果、障がい者雇用率が増加しています。この取り組みが評価され「静岡県障害者雇用促進大会」において「静岡県知事褒賞」を受賞しました。
これまで毎年数名の身体障がい者を雇用し、ダイバーシティの推進に努めてきましたが、さらに障がい者の活躍の場の拡大を目指し、障がい者雇用に特化した味の素みらい(株)を2016年11月に設立し、2017年4月より業務を開始しています。
味の素グループは、障がい者雇用の取り組みをさらに進め、これからも障がい者雇用を積極的に拡大し、ダイバーシティを推進していきます。
シニア人財再雇用制度の運用
60歳で定年退職する一般職、および基幹職の再雇用希望者全員を対象としてシニア人財再雇用制度を運用しています。2016年度は、定年退職者の約59%が同制度を活用して活躍しています。
より詳しく知りたい方は、以下の資料・ページをご覧ください。
味の素グループポリシー▼
人権尊重に関するグループポリシー▼
サプライヤー取引に関するグループポリシー▼
味の素 – 人権▼
参照:
味の素株式会社 ~Eat Well, Live Well. ~AJINOMOTO
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