ドイツのエシカルファッションブランド3選|持続可能な未来を築く
ファッションの世界では、デザインから原料の生産、縫製、輸送、販売というサプライチェーンにおいて、実にさまざまな国の企業が関与しています。素材が生産される国とアパレル製品が消費される国との間に大きな距離がある、ということも珍しくありません。エシカルなファッションブランドとして企業活動をしていくためには、製品はもちろんのこと、原材料調達や生産プロセスに対しても責任を持つ必要があります。
本記事では、サステナビリティ先進国であるドイツ発のサプライチェーンマネジメント(SCM)を大切にするファッションブランドを3社ご紹介します。
ファッションブランドのSCM
ファッション業界の大きな課題の1つに、製品サイクルの短さがあります。安かろう悪かろうではありませんが、低価格で低品質なものや、流行の影響からワンシーズンで廃棄されてしまうものなどには、当然ながらコストがあまりかけられません。
そうなると、綿花など素材の生産に従事する人や縫製工場で働く人など、ファッションのサプライチェーンで立場の弱い人に、劣悪な環境での労働や不当な労働が強いられるというしわ寄せが及びます。また、大量生産や大量消費、大量廃棄が地球環境に与える影響は決して少なくありません。
そのようなサイクルを断ち切るために重要なのが、素材のリサイクルや生産プロセスの透明性の確保です。
生産プロセスの可視化に取り組む
購入するアパレル製品にどのような原材料が使われているかはタグを見れば分かりますが、その製品がどのように作られてきたのかまでは分かりません。
ご紹介する3つのアパレルブランドは、その「どのように作られてきたのか」を可視化しています。
Armedangels
Armedangelsは、2007年にドイツ西部を代表する古都ケルンで創業されたブランドです。
世界中で愛されるデニムに着目し、オーガニックコットンの栽培やデニムの生産過程で使われる水や有害な化学物質の削減に取り組んでいます。
オーガニックコットンの栽培では、通常の綿花栽培で農薬や化学肥料に苦しむインドの小規模農家がオーガニック栽培に転換できるよう、2018年にArmedangels Organic Farmers Associationを設立し現地のパートナー企業とともにサポートしています。それだけではなく、そのオーガニックコットンを使ったシャツが出来上がるまでのサプライチェーンを公開していることも注目すべき点だといえるでしょう。
デニムの製造過程で行われる染色と洗浄の工程では、大量の水と薬品が必要です。
薬品に含まれる有害な化学物質によって引き起こされる水質汚染を避けるため、同社はGOTS認証(オーガニックテキスタイル世界基準)を満たすパートナー企業を見つけ、水の量を大幅に削減しただけでなく化学物質を無害なものに置き換えることに成功しました。また、自社製品を引き取り、新しいデニムの製造に利用することで廃棄物を削減しています。
このような取り組みをしながらも、製品では手ごろな値段を実現しているため、持続可能な生産と消費は可能だと教えてくれる好例です。
Infantium Victoria
Infantium Victoriaは、2014年に設立された子ども向けのハイエンド・ファッションブランドで、ビーガン(アニマルフリー)かつオーガニックが特徴です。
製品に使われる生地はすべてオーガニックコットンです。2015年にはアメリカの動物愛護団体によるPETA認証(People for the Ethical Treatment of Animals)を取得し、2019年にはGOTS認証を取得しました。また、自社製品に対するサプライチェーンの透明性にこだわり、ホームページに掲載されているすべての製品に原材料の詳細や製造プロセスが書かれています。
原材料のオーガニックコットンについては、どれくらいの量を使用したのか、仕入先の企業名とその国、ボタンなどの素材についても仕入先の情報が示されています。生産プロセスでは、製造に要した時間が明記され、その分の賃金が公正に支払われたということを記載するという徹底ぶりです。
サプライヤー一覧もあり、そこではどのような特徴の企業なのかが紹介されています。どこの国のどの企業がどの作業を担当して完成した製品なのかが一目で分かるというトレーサビリティーは特筆すべきでしょう。
Jyoti-Fair Works
Jyoti-Fair Worksは、2014年に創設されたブランドで、アクセサリーなども作っています。フェアワークスという名の通り、ドイツとインドの両国でひとつのチームとして活動していることが特徴です。
ドイツではデザインやパターンが作られ、インドではオーガニックコットンの栽培から伝統的な方法での製糸や紡績、縫製、梱包までを担当、製品をドイツに輸送して販売するという循環が確立されています。
製品ライフサイクルを意識した、長く着ても飽きのこないタイムレスなデザインと、廃棄物を極力出さない生産プロセスで持続可能な生産や消費を実現しているといえるでしょう。生産過程で発生した端切れも無駄にせず、できる限りアクセサリーや衣料品のアップサイクルに使用します。
同社のサプライチェーンの役割を担うすべての人が生活に足るだけの賃金を得られるようにと考え、2カ国の組織が形成されました。
誰が何を担当しているのか分かるよう、作り手の名前や顔写真が公開されているため、サプライチェーンの透明性が確保されているといえます。
まとめ
近年、ファッション業界ではエシカルファッションという言葉が浸透しつつあり、持続可能な生産と消費に注目が集まっています。
エシカル消費の先進国といわれるドイツのファッションブランドを3つご紹介しましたが、この3社はいずれもサプライヤーやパートナー企業などのサプライチェーンをきちんと把握し、原材料調達から生産プロセスの透明性が確保できるようにしています。しっかりとサプライチェーンマネジメントができている製品は、地球環境への負荷が考慮され、生産プロセスにおいても不当な労働がなされていないことを保証するものです。
これからのエシカルなファッションブランドは、サプライチェーンマネジメントをするのが当たり前という時代になりました。