注目が高まる生物多様性とは?ドバイ万博が掲げた視点から解説
気候変動、人権問題、生物多様性の喪失のテーマを考える際、テーマが壮大であり複雑性に富んでいるため、身構えてしまうことがあります。しかし、ドバイ万博では子どもから大人まで楽しめるように、多様かつクリエイティブな視点で情報発信がされていました。
注目高まる生物多様性とは?
生物多様性という言葉を耳にする機会は増えました。実は3つの多様性「遺伝子の多様性」「種の多様性」「生態系の多様性」に分類することができます。1つ目の「遺伝子の多様性」とは、私たち人間の顔が一人一人違うように、同じ種でも遺伝子が異なることを表しています。次に「種の多様性」とは、地球上には私たち哺乳類を含めた動植物から微生物までさまざまな生物が暮らしていることを指します。最後に「生態系の多様性」とは、種それぞれの生態系の多さを表しています。そしてこれらはとても複雑に絡み合いながら、私たちの住んでいる地球環境を創り上げています。つまり、生物多様性とは地球環境そのものを表しているとも言えます。
生物多様性が喪失するとどうなるのか
こちらの図は、SDGsウェディングケーキモデルといいます。詳しくはこちらの記事でご紹介していますが、私たちが暮らしていくためには地球環境がきちんと機能している必要があります。このモデルでは、「経済」「社会」「環境」の関連性を表しています。
SDGsウェディングケーキモデルについて▼
一般性相対性理論を提唱したアインシュタインは、次のような言葉を残しています。
「もし地球上からハチが消えたなら、人間は4年しか生きることができない」
ハチがいなくなることで、スーパーマーケットに並んでいる商品の70%近くは消えてしまうと言われています。現在、多くのハチは、環境の変化やストレス、外来種の侵入や農薬の使用などによってその個体数が減少しています。
どれだけ依存しているのか
私たちの生活は生態系に大きく依存しています。生態系サービスという言葉を聞いたことがありますか?例えば、私たちが住んでいる家を構成する木材、人間のエネルギー源となる食料や綺麗な空気が吸えるのは生態系がきちんと機能しているからです。また、珊瑚礁は自然の防波堤と呼ばれ、災害を緩和してくれる役割があります。これらを生態系サービスと呼びます。経済的な価値に置き換えると年間33兆ドルを上ります。因みに米国のGDPは年間14兆ドルであり、経済的な価値の大きさが分かります。
ドバイ万博での取り組み
私たちの生活と密接に関わっている生物多様性ですが、ドバイ万博の会場内には生物多様性に関する数多くの展示がありました。
こちらは、珊瑚礁に関するコーナーです。珊瑚礁は防波堤としての役割だけでなく、光合成を行う過程で二酸化炭素を吸収し、また多くの生き物の住処です。しかし、現在は多くの珊瑚礁が気候変動による海水温の上昇で危機に面しており、1.5度上昇すると70-90%、2度上昇すると99%の珊瑚礁が死滅してしまうという事実も伝えられていました。それと同時に、解決するために気温上昇に耐えることのできる珊瑚礁を開発中との情報もありました。
気温上昇に耐えることのできる珊瑚礁の模型に添えられた珊瑚礁目線のメッセージが印象的でした。「私は他の珊瑚礁と比べたら気温上昇に耐えることができるけど、世界中にいる仲間たちは危機に面してるの!お願いだから助けてほしい!」と書かれていました。
ドイツパビリオンでの展示事例
ドイツパビリオンにも生物多様性に関するセクションがありました。ドイツパビリオンは教育とエンタメを融合させた「エデュテーション」がテーマです。子どもから大人まで視覚的に楽しめる工夫が多くあります。例えば、文字のみではなくタッチパネルを使用し好きな動物を選びます。例えばクマノミをタッチすると彼らの住処はイソギンチャクであることが紹介され、海洋の酸性化や海水温の上昇によってイソギンチャクが住めなくなると、クマノミも連動するように姿を消してしまうことが分かります。
より詳しく知りたい方はこちらをご覧ください▼
最後に
「気候変動」か「生物多様性」という区別ではなく、気候変動と生物多様性の強い関連性が認識され始めています。
ドバイ万博では、直面している課題について伝えるだけでなく、その解決方法や取り組みをきちんと可視化して子どもでも共感したり、理解しやすいように展示してあると感じました。年齢関係なく多くの人に理解してもらう上で重要なポイントです。この取り組みを参考にしながら、生物多様性の重要性がより多くの人に認識されることを願っています。