ISCC PLUS認証とは?マスバランス方式・メリットを解説
世界中でSDGsへ向けた取り組みが進んでいますが、ISCC PLUS認証制度はご存知でしょうか?
ISCC PLUS認証とは、再生可能な材料で作られた製品を認証するための国際的な認証制度です。バイオマス、再生可能資源、リサイクル材料、廃棄物を含む幅広い原材料に対して、サプライチェーン全体での持続可能性、環境保護、社会的責任を確保することを目的としています。
本記事ではISCC認証制度についてやマスバランス方式、ISCC認証制度のメリット、取得企業の例をご紹介します。
ISCC認証とは
ISCCは International Sustainability & Carbon Certification の頭文字を取ったもので、日本語では「国際持続可能性カーボン認証」と訳されます。再生可能な材料で作られた製品を認証するための制度です。
ISCCは取得できる対象地域が分けられており、主に2種類あります。
ISCC EU | ISCC PLUS | |
---|---|---|
対象地域 | EU域内のみ | EU域外を含む全世界 |
対象製品 | ・バイオ原料 ・バイオマス製品 | ・バイオ原料 ・バイオマス製品 ・リサイクル原料、製品 |
日本でISCC認証を取得する場合は、ISCC PLUSが該当します。
温室効果ガスの排出に関して
ISCC認証では、温室効果ガスである二酸化炭素の排出量を把握する必要性があります。
そもそもISCC認証制度は、原材料が持続可能であるかどうかを認証するプログラムのため温室効果ガスに関する数値とは一見、関係ないように思われるかもしれません。
しかし、ISCC認証制度では、持続可能なバイオ燃料やバイオマスの生産・使用を通じて、温室効果ガスの削減を目標として掲げています。
バイオ燃料やバイオマス製品はエネルギー源が再生可能であり、化石燃料と比べて温室効果ガスの排出が少ないことが特徴です。
化石燃料を燃やすと、地中に閉じ込められていた二酸化炭素が、空気中へと一気に放出されます。一方、バイオ燃料やバイオマス製品の場合は、カーボンニュートラルが期待されます。
バイオマスであっても、燃やす際には二酸化炭素の排出は避けられません。しかし、この時に排出される二酸化炭素は、バイオ原料になる前の植物が「もともと吸収していたもの」だと捉えられています。
したがって、排出と吸収のバランスが取れており、カーボンニュートラルの状態だと考えられます。
ただし、温室効果ガス排出量の把握は、ISCC EUと ISCC PLUSで異なるため、注意が必要です。
ISCC EU | ISCC PLUS | |
---|---|---|
排出量の把握 | サプライチェーン全体での トレーサビリティが必要 | 用途や産業によって異なる |
ISCC EUの場合は、サプライチェーンの全てのセクターにおいて、それぞれの排出量を把握する必要があります。
一方、ISCC PLUSでは、報告の義務はありません。自主的な適用が求められており、顧客や市場から要求された場合は、任意で対応を決めることができます。
認証を取得するメリット
日本の企業の場合、ISCC PLUSの認証を取得することでサプライチェーンの透明性が確保され、原材料が持続可能であることを証明することができます。
また、任意ではありますが、温室効果ガスの削減に取り組むことで、投資家や株主はもちろん、私たち消費者を含めたステークホルダー全体に対して発信していくことが可能です。
ISCC PLUS認証の取得方法
認証を取得するにはSGSなどの第三者機関の認証を得る必要があります。SGSとは、スイスジュネーブに本拠を置く世界最大の認証機関であり、ISCC認証の認証審査も行なっています。
取得の手順は次のとおりです。
- 認証スキームの選択
- 認証機関の選択
- ISCCクライアントセクションでの登録
- 内部監査の実施
- 認証監査の実施
- 認証取得
認証スキームの選択
まず、どの市場や用途に対してISCC認証を取得したいかを決めます。ISCC PLUSは、食品、飼料、化学品、プラスチック、包装、繊維など、バイオエコノミーやサーキュラーエコノミーの分野に適用される認証スキームです。
認証機関の選択
SCCが承認する第三者の認証機関(SGS等)を選び、その機関と契約を結びます。この認証機関が監査を行い、企業がISCC PLUSの基準に適合しているか確認します。
ISCCクライアントセクションでの登録
ISCCの「ISCC HUB」と呼ばれるオンラインプラットフォームを使用して、企業情報や認証の登録を行います。この登録は、選んだ認証機関に送信され、承認されるとISCCから登録確認が送信されます
内部監査の実施
認証を取得するために、企業内での内部監査を準備します。これは、必要な書類や証拠を整え、ISCCの基準に適合していることを確認するための重要なプロセスです。
認証監査の実施
選定した認証機関が、企業の監査を実施します。この際、必要な書類、データ、証拠を提供し、もし改善が必要な点が指摘された場合、40日以内に是正措置を講じる必要があります。
認証取得
監査が完了し、すべての基準に適合していると認定されると、ISCC PLUSの認証が発行されます。これにより、企業は持続可能な材料の使用を公式に証明することができ、ISCCロゴを使用する権利を得ます
マスバランス方式とは?
ISCC PLUS認証で使われる方法の一つで、持続可能な原材料を、効率的に管理するための仕組みです。
バイオマスのような持続可能な素材と、化石燃料などの通常の素材を混ぜ合わせて使ったとします。その混ぜた量に応じて、どれくらい持続可能な素材が使われたか、製品ごとに割り当てる方法です。
例えば、アイスクリーム屋で「普通の牛乳」と「オーガニック牛乳」を使ってアイスを作っているとしましょう。
アイスクリーム全体の牛乳のうち50%がオーガニックだとした場合、どのアイスクリームがそのオーガニック牛乳を使って作られたかは特定できません。
しかし、店全体で使われた牛乳の半分がオーガニックならば、「この店のアイスクリームの50%はオーガニックです」と言っていい、というのが「マスバランス方式」の考え方です。
マスバランス方式のメリットは、工場や製造ラインをそのまま維持しながら、徐々に持続可能な原材料の使用を増やせる点です。
すべてを一度に、持続可能な素材へと変えるのは困難です。しかし、マスバランス方式なら、少しずつでも環境に優しい製品を作ることができ、その成果をきちんと証明できます。
企業は持続可能な資源を使用しながらも、既存の製造工程を大きく変えずに、徐々に環境に配慮した製品を増やしていくことが可能です。
ISCC PLUS認証取得の事例
2024年10月現在、世界中でISCC PLUS認証を取得している企業は9,000件を超えました。日本でISCC PLUS認証を取得している企業の数も、170件を超え、化学業界や素材メーカーなど、多くの企業が含まれています。
今回は、マスバランス方式でISCC PLUS認証を取得した企業を3社ご紹介します。
三菱商事プラスチック株式会社
2022年、本社においてISCC PLUS認証を、マスバランス方式で取得しました。
日本ゼオン株式会社
国内生産拠点のうち 高岡工場、川崎工場、徳山工場、水島工場の4つの事業所でISCC PLUS認証を取得しました。マスバランス方式を採用しています。
参照:日本ゼオン株式会社↗
アスカカンパニー株式会社
プラスチック製品を製造しており、製品設計から製造まで、ワンストップで提供しています。ISCC PLUS認証を取得したことにより、マスバランス方式の運用が可能になりました。
最後に
マスバランス方式を採用することで、持続可能な資源を使用しながらも、既存の製造工程を大きく変えずに、徐々に環境に配慮した製品を増やしていくことが可能です。
ISCC PLUS認証を取得することは、サプライチェーンの透明性の確保や、持続可能な資源を用いている証明になります。これからますます環境問題への意識が高まっていく中、企業にとっては大きなメリットになるでしょう。