ドイツパビリオンの生物多様性教育|ドバイ万博で学ぶサステナビリティ
ドイツパビリオンは、エネルギー、フューチャーシティ(未来都市)、生態系のそれぞれ3つのラボ(ゾーン)に分かれています。そして「Campus Germany」という名前になっており、教育(Education)とエンターテイメント(Entertainment)を組み合わせた「Edutainment」の要素を大切にしています。そしてそれぞれのラボで学んだあとは、Graduation Hall という場所で卒業式を行います。
今回の記事では生物多様性ラボと最後の卒業式についてご紹介していきます。
生物多様性ラボの入り口には、生物多様性が私たちの生活の基盤であること、そして生態系システムをきちんと機能させるには全ての人がこれらについてより良く理解する必要があると紹介されていました。
生物多様性の重要性とサービスについて
まず中に進んでいくと、天井からぶら下がっている画面の中でさまざまな動物や植物の写真が流れていました。改めてさまざまな動物がいること、そしてとても色鮮やかであるという印象を持ちました。そして次のセクションでは、この生物多様性が私たちに多くのものを与えてくれていること、しかしそれはとても複雑に絡み合っていて人間の力で置き換えられるようなものではないということが紹介されます。
現在多くの国が、自然やこれらの生態系を保護するための投資を行っています。現在世界では合計450億が投資されましたが、そのリターンは生態系サービスという形で5,200億になると言われています。
生態系サービスには、エネルギーの補給、綺麗な空気、綺麗な水、遺伝的多様性、豊かな土壌、気候変動の抑制、受粉、微生物による分解、そしてこの他にもさまざまなものがあります。そしてIntegrative Biodiversity(iDiv)ドイツセンターによると、このサービスを享受するためには、生物多様性を保護することがテクノロジーなどの技術的な解決方法よりも1番安価であることが紹介されていました。
そしてこの生物多様性ラボでも子どもが楽しめる工夫がされており、そのそばには世界地図が映し出された巨大な画面と虫眼鏡が置かれていました。その虫眼鏡を画面にかざすと、それぞれの地域に住んでいる動物や植物、例えばサンゴ焦やマングローブについて紹介されており、どのような影響を与えているのかが示されていました。
生物多様性の研究について
次にタッチパネルの画面が置かれており、さまざまな生物や植物について知ることができるようになっていました。クマノミを選ぶと、彼らはサンゴ礁を住処にしているので、海の酸性化や海水温の上昇でサンゴ礁がなくなってしまうことと連動してクマノミも生息地が脅かされてしまっていることが紹介されました。
さらに次のセクションでは、壁にそれぞれの生物に関する研究が紹介されていました。より詳しく知りたい場合は取手を引くと中に映像が流れており、言語を選択して研究者による説明を聞くことができるようになっていました。
そしてこの生物多様性ラボを出る時も、「私たちは生物多様性を保護していく必要がありますか?」という質問にYESまたはNOで答えて進んで行きます。
さまざまな研究の紹介
次のゾーンではさまざまな研究や企業の取り組みが紹介されていました。はじめに紹介されていたのは根っこに関する研究でした。医療技術を応用して、作物を堀り起こさなくても根っこの情報が見れるようになっており、今後気候変動に適応していくためにも、表面だけでなく土の中の情報を知ることも重要であると紹介されていました。
実際に、このパネルは移動させることができ、後ろに植えられている植物の根っこが映し出されるようになっていました。
また、毎年世界中で3万トンの農薬が使用されており、生物多様性が喪失しています。そこで、除草剤などの代わりになる光学雑草検出のシステムに取り組んでいる事例や、より多くの畑を開拓するのではなく、既にある畑の土壌が回復するような植物を植えることやより多く収穫するための技術の研究など、持続可能な農業についても紹介されており、どちらもタッチパネルでゲームのように取り組めるようになっていました。
プラネタリーバウンダリーについて
また、このコーナーには地球の限界点を表すプラネタリーバウンダリーについても紹介されていました。9つの項目から構成されていること、そしてそのうちの2つは既に限界を越えてしまっていることも紹介されていました。
それぞれの項目の詳細については、回転させると見ることができるようになっており、小さい子どもでも興味が持てるよう工夫されていました。
卒業式について
そして最後はいよいよ卒業式です!
Graduation Hall(卒業の間)へ入ると円を作るようにブランコが並んでおり、一人一人座ります。ちなみに子連れのことも考えられて二人乗りのブランコも設置されていました。
しばらくすると360度の方向から映像が流れ始めます。そして、「世界を1人で変えることはとても難しいけれど、全員が同じ方向を向けば、同じ動きができるようになる」というメッセージと共に全員でブランコを漕ぎます。
周りの画面には海や森、山、空などの映像が映し出され、そして最後には、「未来は私たちが作るものです。だからこれからも多くの人と繋がりながら、動き続けましょう」というメッセージで締めくくられました。
最後に
ドイツ館については、これまで3回に渡ってご紹介してきました。どのテーマでも必ず私たちに一瞬考えるように問いかけてくる工夫がされていたり、また難しいテーマをゲームや映像を通じて視覚的に分かりやすいように、そして子どもでも楽しめるよう配慮されているのを感じました。
難しいテーマやデータを分かりやすく伝える重要性も一緒に学ぶことのできたパビリオンでした。