ドイツ発のサステナブルファッションブランド「MOOT」の挑戦
ドイツでは、洗濯する衣服が溜まってから洗濯機を回します。また、友人に渡した紙袋が巡り巡って自分の手元に戻ってくることがよくあるそうです。ドイツ人の質素倹約な生活習慣や物を大切に長く愛用する姿勢は、ドイツのファッションブランドの価値観にも現れています。
本記事は、日本でも関心が高まっているサステナブルファッションとその現状、アップサイクルによって衣類を製造しているベルリン生まれのファッションブランドMOOTを紹介します。
サステナブルファッションとは?
私たちが毎日身にまとっている衣類は、地球環境に大きな負荷をかけています。環境負荷が大きい理由としては、糸を紡ぎ、布を織るための機械を動かしたり、工場を稼働するために電力を消費するなど、製造過程で多くのエネルギーを必要とすることが挙げられます。また、Tシャツを一枚製造するだけでも、約2,700リットルの水が必要など、大量の水資源も必要です。さらに、流行に合わせた大量生産・大量消費・大量廃棄というビジネスモデルによって、衣類のライフスパンが短いことも問題として指摘されています。
環境省は、サステナブルファッションを以下のように定義しています。
衣類の生産から着用、廃棄に至るプロセスにおいて、将来にわたり持続可能であることを目指し、生態系を含む地球環境や関わる人・社会に配慮した取り組みのこと。
環境省 – SUSTAINABLE FASHION
サステナブルファッションといっても、ヘンプやオーガニックコットンといった環境に配慮した「素材」を選ぶこと。衣類を購入するのではなくレンタルすること。着なくなった衣類をリサイクルすること。これら全てがファッション産業の持続可能性に繋がります。
日本国内での現状
環境省によると、日本国内で販売されている衣類の約98%が海外から輸入されています。それにも関わらず、日本では年間約48万トン、1日に換算すると大型トラック約130台分を毎日焼却・埋め立てられています。
インフルエンサーが環境や人権に配慮された「エシカルファッション」「サステナブルファッション」を紹介するなど、日本国内でも関心が高まっています。環境省が2020年12月〜2021年3月に実施した調査によると、購入やリペアを行うといった具体的なアクションを起こしている人はまだ少数ではあるものの、サステナブルファッションに対して関心がある人の割合は半数以上を占めています。
環境に配慮した素材を使用したり、本来は廃棄される生地をアップサイクルして作られた日本のファッションブランドも誕生しています。他にも、衣類回収ボックスを目にする機会が増えたように感じます。
サステナブルファッションについてより詳しくは、こちらをご覧ください▼
ベルリン発のサステナブルファッションブランドMOOT
MOOTは、環境先進国ドイツ発のファッションブランドです。MOOTというブランドの名前は「Made out of Trash=ゴミから作る」の頭文字をとっており、実際に扱っている商品は、繊維くずや切れ端をアップサイクルした生地を使用しています。
同ブランドは、ゴミと思われていた素材からでも高品質な衣類を作れることを証明しています。また、これまで「流行に合わせて使い捨てする」と認識されていた衣類を、今後は「長く大切に使用するアイテム」という衣類に対する価値や意識を高めることを目指しています。そして、サステナブルファッションは、トレンドではなくスタンダードになるべきだというメッセージも掲げています。
MOOTの店舗は、ベルリンのOstbahnhof駅構内にあります。私が訪れたのは2月だったため、アップサイクルされたカラフルなコートが並んでいました。
アップサイクルされた商品は、限られた生地から作られているため世界にたった1点しかありません。価格は4万円前後です。
他にも、ベッドカバーやクッションカバー、カーテンをアップサイクルして作られた鞄も販売されています。一点一点大きさや手触り、生地の厚さが異なります。
MOOT店内の壁には、生地を焼却するのではなく、アップサイクルすることで服に変身させることができることが示されています。
また、ファッション産業が原材料の調達から製造、輸送の過程で多くのエネルギーや水を消費・汚染し、またコットンを栽培するために森林を伐採することで、世界で2番目に環境負荷をかけている産業であることが紹介されています。他にも、ファストファッションがどのような原材料を使用しているのか、原材料の調達から衣類が完成するまで平均どのくらいの距離を移動しているのか、といった内容が示されており、店舗を訪れた人々は普段あまり気にすることのないファッション産業の事実を知ることができます。
最後に
メルカリなどのアプリやセカンドハンドショップで古着を購入することが、以前よりも身近になったように感じます。また、ブランドを問わず、衣類回収してくれるブランドも増えています。
ドイツの冬は長く、夏は気温が上がらないため、土地が痩せています。また、四方を海に囲まれた日本と違い、水資源も乏しいです。ドイツが物を大切に扱う背景には、国の資源が乏しいことが背景にあると考えられます。しかし、日本もドイツ同様、国の資源が乏しい点で共通しています。日本は衣類だけでなく、食料やエネルギーなどの資源も海外に依存していますが、たくさんの商品が溢れているため、ついその事実を忘れてしまいます。
ファッション産業が抱えている課題を解決するためには、ファッション産業に関連する企業はもちろん、私たち消費者も意識や行動を変える必要があります。私たち消費者にできることは、サステナブルファッションに取り組んでいる日本や他国のブランドを応援し、ドイツ人の物を大切にする姿勢を見習う必要があるように感じます。
私もついファストファッションを購入してしまいますが、まずは身につけるアイテムを一つサステナブルなものに変えていくところから取り組んでいきたいと思います。
参照:Story – MOOT