三菱地所グループの人権デューデリジェンス取り組み|詳細を解説
コーポレートガバナンス・コードの改定や、ESG(環境、社会、ガバナンス)という概念の認知度が高まる中、多くの企業が気候変動対策や人権保護の取り組みを強化しています。
今回は三菱地所グループ(以下、三菱地所)の人権への取り組みについてご紹介していきます。
人権に関する方針
社会の一員として人権尊重の重要性を改めて認識し、グループ企業だけでなくあらゆるステークホルダーの基本的人権を尊重する責任を果たすことを目的として、2018年4月1日に「三菱地所グループ 人権方針」を策定。経営会議および取締役会を経て執行役社長の署名のもとに策定・公開し、グループ内外に広く周知しています。
三菱地所グループ 人権方針
人権尊重に関連した規範や法令の遵守
世界のすべての人々が享受すべき基本的人権について規定した「国際人権章典」、労働における基本的権利を規定した国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」等の人権に関する国際規範を支持、尊重します。また、本方針は国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいて策定しています。
事業活動全体を通じた人権尊重の責任
他者の人権を侵害しないこと、事業活動を通じて起こり得る人権への負の影響を最小化すること、事業活動を通じて積極的に人権尊重の実践を広げていくことに取組んでいきます。
人権デューデリジェンスの実施
人権への負の影響を最小化するため、人権デューデリジェンスの仕組みを構築し、その効果を高めるため、問題点があれば、これを継続的に改善していきます。
是正・救済
人権に対する負の影響を引き起こした、または負の影響を助長したことが明らかになった場合、適切な手段を通じて救済に取組みます。また直接人権への負の影響を助長していない場合でも、三菱地所のビジネスパートナー、またはそのほかの関係者が人権への負の影響と直接つながっている場合は改善に努めていきます。
ステークホルダーとの対話・協議
「行動憲章」や「行動指針」及び各分野の方針やガイドラインで規定した取組みを通じて、人権尊重の取組みを推進していきます。
役職員に対する教育
本方針が事業活動全体に定着するよう、必要な手続きの中に反映するとともに、本方針が理解され効果的に実施されるよう、役職員に対して適切な教育・研修を行っていきます。
情報の開示
本方針に基づく人権尊重の取組みについて、ウェブサイト等レポート類にて報告 していきます。
人権に関する重点課題
三菱地所グループは、社会の変化や事業の動向などにより取組むべき具体的な課題が変わるため、ステ ークホルダーや社外の専門家との対話と協議を行い、適宜重点課題の見直しを図っていきます。
人権デューデリジェンスへの取り組み
専門のコンサルタントや弁護士に依頼し、優先的に取り組む人権課題として、下記の7つを特定しました。
- 強制労働・児童労働
- 従業員の労働条件・労働環境
- 利用者の安全
- 利用者に対する差別
- 先住民族および地域コミュニティへの影響
- 個人情報の流出
- サプライヤーの労働者の労働条件・労働環境
グループ共通の課題のほか、事業については不動産開発事業、海外事業、ホテル事業の3つのパートに分けて取り組んでいます。
不動産開発事業における取り組み
外国人技能実習生に対する人権尊重
外国人技能実習生にヒアリングを行い、報酬や日常生活に関することなど、技能実習生が活動する上で盲点となりやすいことについて、実際に技能実習生が働いているケースが多いと想定される協力会社に周知・指導するよう発注先に対し申し入れを行っています。具体的には、2020年4月以降に配布する見積要項書の中に本内容を盛り込むことで、建設会社宛に周知を行っています。
型枠コンクリートパネルに持続可能性に配慮した木材を使用
オフィスや住宅などの建設時に使用する型枠コンクリートパネルは、マレーシアやインドネシアなどが原産地となっており、先住民の土地の収奪や環境破壊等を含む違法伐採材が含まれることがNGO等から指摘されています。
三菱地所では、人権および環境保護の観点から、認証などを取得した持続可能な木材を使用し、2030年度までに使用率100%を目指します。
海外事業における取り組み
一般的に人権侵害の事例の多いアジアで事業を検討する際、当該開発地で強制的な立ち退きがなかったかなど、チェックリストを用いて確認する人権デュー・デリジェンスを行い、事業参画の際の判断材料としています。
具体的には、「事前の自由なインフォームド・コンセント(Free, Prior and Informed Consent : FPIC)」の考えに基づき、「自由で安全な場所で話し合いの場が持たれているか」「対話が一方的でないか」「脅迫等に該当する言動や強制的・暴力的な排除が無いか」「適正な生活水準を確保する代替地への移転を保証したか」などのチェックを行っています。
また、女性、子ども、高齢者、先住民、移民、民族的または種族的少数者、その他の社会的立場の弱い個人やグループについては、人権侵害の影響が出やすいため特に注意を払い確認しています。
ホテル事業における取り組み
国内で13カ所のホテル運営を統括する(株)ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツでは、SDGs(持続可能な開発目標)の取り組み推進を目的に、2019年度より「認証ワイン」「国際フェアトレード認証コーヒー」を導入しています。
(フェアトレードとは、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」です。)
また、ホテルにテナントとして入居する飲食店に対しても、フェアトレード商品についての情報提供を行っています。
新築分譲マンションにおけるトレーサビリティ確保の取り組み
新築分譲マンションには、持続可能性に配慮した木材の調達基準にある型枠コンクリートパネルを採用し、トレーサビリティの確保を進めています。
具体的には、適切な管理がなされている森林を認証する「FM認証」と、FM認証を受けた森林から生産された木材が以降の流通段階においても適切に管理・加工していることを認証する「CoC認証」を取得した木材利用を通じてトレーサビリティの確保を進めていました。しかし認証を取得していない会社も多く存在し、認証が繋がっていない(=トレーサビリティが完全に確保されない)ことが課題となっていました。
そこで、各国で個別に策定された森林認証制度を審査し、相互認証を行う「PEFC認証材」を採用するなど、サプライチェーン全体でトレーサビリティの確保を図る取り組みを開始しました。2030年度には、全ての物件で型枠コンクリートパネルの木材のトレーサビリティ確保を実現します。また、取り組みの強化に向けて、今後は第三者証明によるスキームに加えて国際認証の取得も目指していく予定です。
人権に関する相談・通報窓口の設置
グループ社員、派遣社員、パート社員、アルバイトも利用できます。受け付けた相談については内容に応じて調査、事実確認等を行ったうえで対応し、職場環境の改善等を図っています。
外部委託先を経由して三菱地所(株)法務・コンプライアンス部が受付窓口となっており、相談・通報者のプライバシー保護、情報の機密性の保持、相談・通報者が本制度を利用したことにより不利益を被ることの防止に努め、通報内容に関連するグループ会社のコンプライアンス担当部署と連携して対応しています。
また、三菱地所グループと取引のある社外の方に対しては、別途専用のヘルプラインを設けています。
社内浸透活動
新入社員研修では人権研修を継続的に実施しており、人権尊重についての考えや取り組み、また人権方針について学び、人権への理解を深めています。
職場の人権問題であるハラスメントの防止および対処方法などを含む管理職向けの研修を実施しています。また、毎年社長をはじめ役員・部長など幹部社員とグループ会社社長を対象とした人権講演会も開催しています。
この他にも、ハラスメント防止規程説明研修や部落問題などをテーマにした研修などを実施し、受講者の差別への気づきを通じて人権意識の醸成に努めています。
最後に
三菱地所グループの人権への取り組みについてより詳しく知りたい方は以下の資料をご覧ください。
三菱地所グループ人権ページ▼
三菱地所グループ 人権方針▼
労働安全衛生に関する方針▼
ダイバーシティの推進について▼
雇用・労使関係について▼
参照:
三菱地所 サステナビリティ
人権 | サステナビリティ活動(ESG) | 三菱地所 サステナビリティ
三菱地所グループ 人権方針
三菱地所|人を、想う力。街を、想う力。