オーガニック・有機野菜・無農薬の違いを解説|安全性と環境への影響は?
近年、健康意識の高まりによって、オーガニック・有機・無農薬という言葉を耳にする機会が増えているように感じます。これらの言葉は、どれも「なんとなく身体に良さそう」というイメージがありますが、皆さんは説明することができますか?
本記事では、それぞれの定義や違いを紹介するとともに、SDGsや持続可能な農業が推進されている現代において、オーガニックや無農薬食品を選ぶことの意義やメリットについても解説します。
「オーガニック」とは
オーガニックは化学的に合成された農薬や化学肥料に頼らず栽培された農産物や栽培方法のことで、日本語に訳すと「有機」となります。つまり、「オーガニック」と「有機」は同じ意味です。
環境に負荷をかけず、土壌の自然な生産力を引き出す栽培方法で、農薬や化学肥料を使わないため、安全で価値の高い作物を育てることができます。
「オーガニック」は食品だけでなくオーガニックコスメやオーガニックコットンなど、メイク用品や衣類にも使用されることがあります。
オーガニックや有機という表示をするには、農林水産省による「JAS規格」の基準を満たし、「有機JAS」の認証を得る必要があります。しかし、これらの対象にコスメなどは入っていないため、日本オーガニックコスメ協会「JOCA」などが承認しています。
「有機」とは
「有機」は「オーガニック」と同じ意味です。化学合成された農薬や肥料を使用しない栽培方法を「有機栽培」と呼び、有機栽培で育てられた野菜を「有機野菜」や「有機農産物」と言います。
「有機」と名乗るためには農林水産省による「JAS規格」を満たす必要があり、その対象は、農産物、畜産物、加工食品の3つに分かれており、それぞれに異なる基準が設けられています。
有機農産物
農業の自然循環機能の維持増進を図るため、以下の方法で生産された農産物
- たい肥等で土作りを行い種まき又は植え付けの前2年以上、 禁止された農薬や化学肥料を使用しない
- 土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させる
- 農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減
- 遺伝子組換え技術を使用しない
有機畜産
農業の自然循環機能の維持増進を図るため、以下の方法で生産された畜産物
- 環境への負荷をできる限り低減して生産された飼料を与える
- 動物用医薬品の使用を避ける
- 動物の生理学的、行動学的要求に配慮して育てた家畜、家きんから生産する
有機加工食品
原材料の有機の特性を製造又は加工の過程で保持するため、以下の方法で生産された加工食品
- 物理的又は生物の機能を利用した加工方法を用いる
- 化学的に合成された食品添加物及び薬剤の使用を避ける
- 原材料は、水と食塩を除いて95%以上が有機農産物・有機畜産物・有機加工食品
(※抜粋 農林水産省「有機食品っていいね!」)
オーガニックと有機野菜は無農薬ではない
結論として、オーガニック野菜や有機野菜は無農薬ではありません。有機農産物の項目に「禁止された農薬や化学肥料を使用しない」とありますが、禁止されていない農薬に関しては使用されている可能性があるからです。
では、化学肥料とはなんでしょうか?
「化学肥料」とは
肥料は使用している素材により「有機肥料」と「化学肥料」に分けられます。
有機肥料とは油粕や魚粉、鶏糞など、植物性または動物性の有機物を原料にした肥料のことです。やむを得ない場合は、有機JAS認定の殺虫剤や雑菌剤など約30種類が使用されることがあります。これらの製品はAmazonなどでも購入できますが、使用する際には常に最新の情報を確認する必要があります。
化学肥料とは、鉱物などの無機物を原料とした肥料のことで、無機養分一つのみを保証する肥料を「単肥(たんぴ)」、窒素、リン酸、カリウムのうち二つ以上の成分を保証する肥料を「複合肥料」と呼びます。
「無農薬」とは
無農薬とは、文字通り農薬を一切使用していないことを指します。
以前は「無農薬野菜」と表記されていましたが、生産者によって定義が異なるなど誤解を招く可能性があったため、農林水産省の「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」によって、「無農薬」「減農薬」「無化学肥料」「減化学肥料」といった表示が禁止されました。
現在は「特別栽培農産物」として表示されています。この特別栽培農産物とは、「その地域の通常の方法に比べて、節減対象農薬(JAS規格で使用可能な農薬を除いた従来の化学合成農薬)の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分の使用量が50%以下のもの」と定義されています。そのため、減農薬だけでなく、化学肥料の使用も控えることが推奨されています。
「無農薬」や「無化学肥料」という表現は禁止されていますが、無農薬栽培を実施し、特別栽培農産物の基準を満たしたものについては、次のような表示が可能です。
- 農薬を使用していない場合:「栽培期間中不使用」
- 節減対象農薬を使用していない場合:「栽培期間中不使用」
- 化学肥料(窒素成分)を使用していない場合:「栽培期間中不使用」
有機野菜や無農薬野菜のメリット・デメリット
メリット
メリットとしては、まず安全性です。アメリカでは、普通の野菜を食べた子どもより有機野菜を食べた子どもの体内に蓄積した化学成分の量が少なかったという研究報告もあり、比較的安全であるというのが一般的です。
また、有機農業は持続可能で環境に優しいという点が挙げられます。有機野菜は、従来のものと比較して可能な限り農薬を使用しないので、土地の水質汚染や土壌汚染を軽減することに繋がり、生態系の保全にも繋がります。
そして、自然な味や香りが楽しめるのもメリットです。オーガニック栽培では厳しい自然環境の中で育てられるため、限られた栄養源を効率よく吸収しようとします。これにより、栄養を豊富に蓄えた野菜が育ちやすくなり、本来の味や香りを存分に楽しむことができるのです。
デメリット
一方デメリットとしては、農薬を使用しないことで害虫や雑草を抜くなどの手間がかかり、その分値段が高くなってしまうという点が挙げられます。
また、大きさがまちまちになり、流通できずに廃棄されてしまう規格外野菜が増えるという課題もあります。
有機野菜を選ぶ意義
オーストラリアに留学した友人から聞いた話ですが、苺農園では農薬を撒いた後2週間ほど人の立ち入りが禁止になるそうです。この話を聞いて、「人間が入れないほど害のある農薬を撒いている苺ってどうなんだろう?」という疑問を抱きました。
今のシステムのままだと生産する人間にとっても、消費する人間にとっても優しくありません。また、農薬を使用することで起こる土壌汚染や水質汚染の問題も深刻です。
有機農業を国際的な規模で推進しているIFOAM(International Federation of Organic Agriculture Movements/国際有機農業運動連盟)では、オーガニックや有機の原則として「生態系」「健康」「公正」「配慮」の4つの目標を掲げています。
「生態系」は可能な限り農薬を使用しないことで、その土地の水質や土壌の汚染を防ぎ、環境の保全に努めること。「健康」は着色料や保存料などの添加物を可能な限りなくすことで、人々の健康に貢献すること。「公平」「配慮」は、有機畜産を行うことで動物福祉の面で配慮することが可能になります。また、動物だけでなくサプライチェーン上の人権侵害の禁止や、適地適作・地産地消を行うことで地域の食文化を大切にすることなどが含まれています。
私の地元のスーパーではまだまだ有機野菜コーナーは少なく、よく割引シールが貼られていますが、IFOAMの目指す世界にとても強く共感したので自分のできる範囲で有機の野菜を購入しています。
2050年までに有機野菜の面積25%
農林水産省は2050年までに目指す姿として「緑の食糧システム戦略」を発表しています。
その中には「化学肥料の使用量を30%低減」「耕地面積に占める有機農業の取組面積を25%、100万haに拡大」などの目標が含まれているので、今後有機栽培や無農薬の野菜の流通量は増加すると予想されます。
最後に
いかがでしたでしょうか?
少しお値段が張る、というイメージがあるかもしれませんが、この記事を通じて有機野菜に関心を持ってくださる方が一人でも増えたら嬉しく思います。
参照:
農林水産省ホームページ
生き物にやさしい日本を残したい有機食品Food Organic! っていいね|農林水産省
化成肥料とは? 覚えておきたいメリットとデメリット|マイナビ農業