UAEのエネルギー戦略2050|再生可能エネルギー倍増計画と投資目標
ドバイを訪れるビジネス訪問者や観光客にとって、ドバイはどのようなイメージでしょうか? 華やかなイルミネーションや美しいデザインの建物、多様な食を提供するレストランなど、ドバイの魅力は多種多様です。この魅力を支えているのが、産業の基礎となるエネルギーです。UAE最大の首長国・アブダビでは、巨大な石油産業が構築されており、国の産業に対して安価なエネルギーを提供しています。しかし今、エネルギー大国・UAEのエネルギー戦略は大きな転換点を迎えています。短期的な目標の合言葉は、「2030年までに自然エネルギー3倍」です。
UAEが掲げる2050年エネルギー戦略
既存のエネルギー及びインフラを革新する際、大きな投資が必要にとなります。UAEが掲げるエネルギー戦略2050は、急速な経済成長に伴う同国のエネルギー需要の増加にも対応するため、再生可能エネルギーによる発電容量を3倍にし、2030年までに1500億ディルハム(約6兆円)から2000億ディルハム(約8兆円)を投資することを目指します。このダイナミックな変化によって、UAE国内電力の需要と供給のバランスと、環境への義務を両立させます。UAE・エネルギー戦略2050では、2030年と2050年の数値目標が設定されています。
2017年初版より更新された最新の戦略では、更なる再生可能エネルギーの導入と、原子力エネルギーの導入を促進し、エネルギー効率を高め、エネルギー技術の研究開発と革新を推進します。
最新のUAE・エネルギー戦略2050の要点は、以下の通りです。
- 水とエネルギー部門からのGHG排出量を削減し、2050年までにGHG排出量実質ゼロを確実に達成する。
- エネルギーミックスに対するクリーン石炭の寄与を排除する。国のリーダーシップを確保し、2050年までに気候中立性の目標を達成する。
- 2019年と比較し、個人および組織のエネルギー消費効率を42〜45%改善する。
- 2030年までに再生可能エネルギーの割合を3倍にするため、クリーンエネルギーの発電容量を14.2GWから19.8GWに増加させる。
- エネルギーミックス全体に占めるクリーンエネルギーの発電容量の割合を2030年までに30%に急増させる。
- 2030年までに5万人の新たなグリーン雇用を創出する。
- エネルギー需要を確実に満たし、UAEの経済成長を維持するために、2030年までに1,000億ディルハム(約4兆円)の財政節約を達成する。そして、1,500億ディルハム(約6兆円)から2,000億ディルハム(約8兆円)の投資を行う。
また、UAEのエネルギーは化石燃料由来が大半を占めるものの、世界平均と比較して系統排出係数が低い国だと主張しています。さらに系統排出係数を小さくする努力を継続し、2030年までに系統排出係数0.27kg CO2/kWhを達成することを目指しています。
日本はどうでしょうか。環境省が発行する電気事業者別排出係数(令和5年7月18日発行)によると、東京電力パワーグリッド株式会社、中部電力パワーグリッド株式会社などの一般送電事業者の基礎排出係数は、0.434kg CO2/kWhです。系統排出係数は、これからの時代、国や地域にとって新たな産業誘致を行う際、重要な指標となります。2030年、UAEの系統排出係数の目標が達成され、日本の一般送電事業者の系統排出係数が今と変わらなかった場合、UAEの系統排出係数は日本と比べて約4割小さくなります。大きな電力を消費する産業セクターは何を考えるでしょうか。
化石燃料消費量削減の取り組み 電動自転車と電動スクーター
ドバイでは電動スクーターに乗っている市民を多く見かけます。手軽に移動できる手段として人気です。ドバイは舗装されている道路が多く、電動スクーターの運転はしやすいです。また、所々に電動スクーターと電気自転車専用レーンも設置されています。
ドバイは特に通勤時と帰宅時の車の渋滞がひどいため、渋滞解消を目的とした取り組みの一環として、20年10月から電動スクーターの試験運転が開始されました。現在、ドバイには2,000台以上のレンタル電動スクーターが用意されています。この電動スクーターを含む、電気を使った移動手段の利用拡大は、UAEが掲げる2050年までのエネルギー戦略の中の重要な施策の一つです。GHGScope1の排出量削減は、省エネと電化が基本ですが、自動車やタクシー利用の一部を電動スクーター等で代替することに挑戦しています。
ドバイでテスラのEV車は時々見かけるものの、道路を走っている車はガソリン車がほとんどです。EV車用充電スタンドも所々ありますが、大々的にインフラ整備を行っている感じはまだありません。しかし、再エネ創出のポテンシャルが高いUAEは、2050年エネルギー戦略を確実に実行することで、電力のグリーン化が段階的に進む可能性はあります。
最後に
最後に、2041年に完成を予定しているDubai Creek Towerを紹介します。Dubai Creek Towerは、Creek Beachに建設が予定されている全高1,345メートルの建物です。2023年時点で世界で一番高いタワーは、ドバイのBurj Khalifaですが、Burj Khalifaの全高は829.8メートルです。Dubai Creek Towerは、Burj Khalifaと比べ約1.6倍の全高になる予定です。Dubai Creek Towerは、太陽光エネルギーを最大限に活用するエネルギー設計をしています。Dubai Creek Towerの建設が実現した際は、グリーン電化国・UAEの象徴として、Dubai Creek Towerは認識されるかもしれません。