観光業のCO2排出量が14%削減|世界サミットの報告
10月8日から10日にかけて、オーストラリアのパースで「WTTCの第24回世界サミット」が開催されました。本サミットにおいて、観光業のCO2排出量が減少し、環境への影響を減らしていることが報告されています。
今回の記事では、観光業がどのようにCO2排出を削減しているのか、またその背景と今後の課題についてご紹介いたします。
観光業におけるCO2排出の現状
観光業は、航空機や宿泊施設などの活動によって大量のCO2を排出します。そのため、地球温暖化や気候変動に悪影響を及ぼしていることが問題視されてきました。
観光業が経済成長を続けるためには、環境への影響を最小限に抑え、地域資源を持続的に利用する必要があります。環境保護が不十分であると、観光地自体が劣化し、長期的には観光客を呼び込むことが困難になるからです。
世界的に環境意識が高まる中、企業や観光地にとって「持続可能な観光推進の取り組み」は必要不可欠となりました。CO2削減の取り組みは、企業の社会的責任(CSR)の一環であると、世間からも認識されています。
また、旅行者の意識も大きく変化しています。観光先を選ぶ際、環境に配慮しているかどうかを基準とする旅行者が増加傾向に。競争力を維持するためにも、SDGsに関する取り組みは欠かせません。
上記の理由より、観光業界はCO2削減や脱炭素化を目指して、積極的にサステナブルツーリズムに取り組んでいます。
再生可能エネルギーの拡大
2024年10月にパースで開催された世界サミットで、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)は「観光業が持続可能な発展に向けて努力している」ことを示す最新のデータを発表しました。
2023年のデータによると、観光業が排出する二酸化炭素の量は、全体の6.7%です。この数字は、過去最高の排出量を記録した2019年の7.8%と比べて、減少しています。
2019年 | 2023年 | |
全体におけるCO2排出量 | 7.8% | 6.7% |
化石燃料への依存度 | 90% | 88.2% |
低炭素エネルギーの割合 | 5.1% | 5.9% |
観光業のCO2排出が削減した結果には、再生可能エネルギーの利用増加が大きく関わっていると考えられます。
旅行・観光事業はこれまで、主なエネルギーとして化石燃料に頼ってきました。しかし、環境意識が高まるなか、原子力および再生可能エネルギーの重要性が世界的に説かれています。CO2排出量を減らすべく、脱炭素に向けた取り組みを実施する企業・自治体が増加傾向にあります。
観光業では、低炭素エネルギー(原子力および再生可能エネルギー)に切り替えたことで、化石燃料依存を88.2%まで減少することに成功。同時に低炭素エネルギーの使用割合も、徐々に拡大しています。
さらに注目すべきは、GPD貢献額の9.9兆ドルです。(※2024年10月10日現在)観光業は日本円でおよそ1,475兆円もの経済活動があり、コロナ禍で受けた莫大な損失に対して、順調な回復を見せています。
一方で、観光業における脱炭素に向けた取り組みはまだ不十分であると、WTTCは指摘しています。再生可能エネルギーの使用拡大をさらに目指し、化石燃料への依存割合を減らすことが今後の課題です。
これから観光業に対しては、環境保護と経済成長の両立、持続可能な未来に向けた取り組みがますます求められるでしょう。
観光業が取り組む環境対策
観光業界は、CO2削減と脱炭素化を目的とした取り組みを進めています。
オランダでは「サイクルツーリズム」が広がり、自転車を利用する観光によって、CO2排出が抑制されています。整備された自転車道や観光ルートにより、観光客は車を使わず、環境に優しい移動手段を選択できる点が大きな特徴です。
国内の事例として奄美大島では、エコツーリズムが推進されており、徒歩や自転車を利用した自然観光が主流です。また、再生可能エネルギーの利用や、宿泊施設でのエコ活動が積極的に行われているのも、持続可能な観光においては重要なポイントです。過剰な観光開発を抑制するため、観光人数も制限されており、環境負荷の少ない観光業態を実現させています。
このように、観光業におけるCO2削減と脱炭素化の取り組みは、地域ごとの特色を活かしながら進んでいます。観光業にとって、持続可能な形で経済成長を維持しながら、自然保護に貢献できる点は大きなメリットです。今後、さらに多くの地域での導入が期待されます。
最後に
観光業におけるCO2削減と脱炭素化の取り組みは、確実に成果を上げており、今後も拡大が期待されています。
今回のサミットでは、観光業のCO2排出量の削減が注目されました。世界中で各地域が脱炭素に向けて取り組み、自然保護と経済成長の両立に貢献しています。
今後も多くの企業や地域が、再生可能エネルギーの利用拡大に注力することが重要です。観光客自身もエコフレンドリーな選択を行うことで、持続可能な未来に貢献できるでしょう。